高校生でもわかる!リカードの比較優位を応用例題で徹底解説
目次
比較優位とは何か?
比較優位(Comparative Advantage)とは、「他の財と比べて相対的により安く生産できる財に特化すべき」という考え方です。 この理論は19世紀の経済学者デヴィッド・リカードによって提唱され、国際貿易の基本理論として現在でも重視されています。
重要なのは「絶対優位(Absolute Advantage)」との違いです。絶対優位とは、単純に「より効率よく生産できる」ことですが、 比較優位は「他の財に比べてどれだけ効率的か」に着目します。
なぜ比較優位が重要なのか?
たとえある国がすべての財を他国より効率よく生産できたとしても、貿易によって利益を得られる可能性があります。 その根拠こそが「比較優位」です。
リカードの理論は、以下のような仮定に基づいています:
- 各国は労働力のみを用いて生産を行う
- 労働は国内で自由に移動可能だが、国際間では移動しない
- 完全競争が成立している
- 交易費用(輸送費など)は存在しない
基本例題:2国2財モデル
2国(A国とB国)と2財(パンと布)を考えます。 各国の生産技術は以下のとおりとします(1単位生産に必要な労働時間):
| パン | 布 | |
|---|---|---|
| A国 | 2時間 | 4時間 |
| B国 | 6時間 | 12時間 |
この表から、両国ともパンと布を生産できますが、A国はどちらの財でもB国より生産効率が高い、つまり絶対優位を持っています。 では比較優位はどうでしょうか?
A国における機会費用: \[ \text{布 1単位を作るためにはパンを 2 単位諦める(4 ÷ 2 = 2)} \] B国における機会費用: \[ \text{布 1単位を作るためにはパンを 2 単位諦める(12 ÷ 6 = 2)} \] この場合、両国の機会費用が同じであり、比較優位は成立しません。 では次のケースを見てみましょう:
労働時間を以下のように変更:
| パン | 布 | |
|---|---|---|
| A国 | 2時間 | 6時間 |
| B国 | 4時間 | 8時間 |
A国の布の機会費用は \[ 6 ÷ 2 = 3(布1単位生産に必要なパンの単位数) \] B国の布の機会費用は \[ 8 ÷ 4 = 2 \] したがって、A国はパン、B国は布に比較優位があります。各国が得意な財に特化して交換すれば、両国とも利益を得ることができます。
応用例題:時間制約と生産選択
応用問題として、以下のような設定を考えてみましょう:
A国とB国の1日の労働時間は各8時間とし、それぞれの生産時間は以下のとおりです。
| パソコン | トマト | |
|---|---|---|
| A国 | 4時間 | 2時間 |
| B国 | 2時間 | 1時間 |
このとき、各国の機会費用を計算すると:
A国: \[ \text{パソコン 1台を作るにはトマトを2単位諦める(4 ÷ 2 = 2)} \] B国: \[ \text{パソコン 1台を作るにはトマトを2単位諦める(2 ÷ 1 = 2)} \] 比較優位は発生していないように見えますが、次のように技術を変更してみましょう。
B国のトマト生産技術を1時間から3時間に変更します。
新しいB国の機会費用: \[ \text{パソコン 1台を作るにはトマトを0.67単位諦める(2 ÷ 3 ≈ 0.67)} \] つまり、B国はパソコン、A国はトマトに比較優位を持ちます。
このように、技術の小さな変更でも比較優位の構造が変わり、貿易パターンに影響を及ぼします。
まとめと発展的な考察
リカードの比較優位理論は、単なる理論にとどまらず、実際の経済政策や貿易戦略にも影響を与えています。 この理論を理解することで、どのようにして国家間で分業が成立し、互いに利益を得られるかがわかります。
現実世界では、輸送費、貿易障壁、技術進歩など多くの要因が存在しますが、 比較優位の考え方はそれらの複雑な現象を分析するための出発点となります。
さらに、機会費用の考え方や生産選択の最適化は、将来の経済学の学習や大学受験にも非常に役立ちます。