【完全解説】部分列とは?数学的定義から具体例まで徹底解説
目次
部分列の定義
数列 \( \{a_n\}_{n=1}^{\infty} \) に対して、自然数列 \( \{n_k\}_{k=1}^{\infty} \) が 単調増加である(すなわち \( n_1 < n_2 < n_3 < \cdots \))とき、 \( \{a_{n_k}\}_{k=1}^{\infty} \) を元の数列 \( \{a_n\} \) の部分列(subsequence)と呼びます。
より形式的には、部分列とは次のように定義されます。
自然数列 \( \{n_k\} \subset \mathbb{N} \) が単調増加(\( n_1 < n_2 < n_3 < \cdots \))であるとき、
数列 \( \{a_n\} \) の部分列 \( \{a_{n_k}\} \) は以下の形で表されます:
\[ a_{n_1}, a_{n_2}, a_{n_3}, \ldots \]
直感的な理解
部分列は、「元の数列からいくつかの項を順番を保ったまま選び出してできた数列」と考えるとわかりやすいです。 ただし、選び方には条件があり、飛ばして選ぶことはできても、順番を逆にしたり、同じインデックスを繰り返すことはできません。
例えば、次のような例で考えてみましょう。
元の数列が \( \{a_n\} = \{1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, \ldots\} \) のとき、
部分列として以下が考えられます:
- 偶数番目の項: \( \{a_2, a_4, a_6, \ldots\} = \{2, 4, 6, \ldots\} \)
- 素数番目の項: \( \{a_2, a_3, a_5, a_7, \ldots\} = \{2, 3, 5, 7, \ldots\} \)
- 3の倍数番目の項: \( \{a_3, a_6, a_9, \ldots\} = \{3, 6, 9, \ldots\} \)
部分列の具体例
例1:等差数列からの部分列
元の数列: \( a_n = n \)
部分列:\( a_{2k} = 2k \)(偶数のみ取り出す)
\[
\{2, 4, 6, 8, \ldots\}
\]
例2:交互に符号が変わる数列
元の数列: \( a_n = (-1)^n \)
部分列:\( a_{2n} = 1 \), \( a_{2n-1} = -1 \)
\[
\text{偶数番目のみ:} \{1, 1, 1, \ldots\} \\
\text{奇数番目のみ:} \{-1, -1, -1, \ldots\}
\]
例3:収束しない数列の部分列
元の数列: \( a_n = (-1)^n \)
この数列自体は収束しませんが、部分列を見ると:
- 偶数番目: \( a_{2n} = 1 \Rightarrow \text{定数列に収束} \)
- 奇数番目: \( a_{2n-1} = -1 \Rightarrow \text{別の定数列に収束} \)
部分列と極限
部分列は数列の極限を考える際にとても重要な役割を果たします。
定理:部分列と収束
数列 \( \{a_n\} \) が極限 \( L \) に収束するならば、すべての部分列も \( L \) に収束します。
\[ \lim_{n \to \infty} a_n = L \Rightarrow \lim_{k \to \infty} a_{n_k} = L \]
逆は成立するか?
逆は成立しません。つまり、いくつかの部分列が同じ値に収束していても、元の数列がその値に収束するとは限りません。
例えば \( a_n = (-1)^n \) の場合、部分列 \( \{a_{2n}\} \) は 1 に、\( \{a_{2n-1}\} \) は -1 に収束します。 しかし元の数列は収束しません。
よくある誤解
- 部分列を順番を変えて作ってしまう: 部分列は順番を変えてはいけません。
- 同じ項を複数回使う: インデックスは単調増加でなければならず、同じ項を繰り返すことはできません。
- 数列そのものと混同する: 部分列は数列全体の「代表」ではないことが多く、収束性などの性質が異なることがあります。
部分列の応用
部分列は解析学や実解析の分野で非常に重要なツールです。特に以下のような場面で応用されます:
- 収束の判定: 全体の数列の収束性を調べるために、部分列の収束性を検討する。
- ボルツァーノ・ワイヤシュトラスの定理: 有界な実数列には必ず収束する部分列が存在する。
- リミットポイント(集積点)の理解: 数列の部分列を用いて、リミットポイントを見つける。
まとめ
部分列とは、「元の数列から順番を保って一部の項を取り出した数列」です。
数学的には、単調増加な自然数列をインデックスに用いて作られます。
部分列を使えば、元の数列が収束するかどうか、複数の極限点があるかなど、多くの性質を調べることができます。
実解析や応用数学でも非常に重要な概念なので、しっかりと理解しておきましょう。