高校生のためのCAPM完全理解:株主資本コストとその応用を徹底解説!

高校生のためのCAPM完全理解:株主資本コストとその応用を徹底解説!

目次

1. 株主資本コストとは?

企業が株主から資金を調達する際、株主は将来的にどのくらいのリターンを期待するのでしょうか?その期待されるリターンのことを「株主資本コスト(Cost of Equity)」といいます。

株主資本コストは、企業の投資判断や企業価値の評価において非常に重要な指標です。企業は、プロジェクトの収益率がこのコストを上回るときにのみ、そのプロジェクトに投資するべきだと考えられます。

2. CAPM(資本資産評価モデル)の基本

株主資本コストを求めるためのモデルの一つが「CAPM(Capital Asset Pricing Model)」です。これは、株式などのリスク資産がどれだけのリターンを持つべきかを説明するモデルで、以下のような考え方に基づいています。

  • 投資家はリスクを嫌う。
  • リスクのある投資は、リスクが高いほど高い期待リターンを要求される。
  • そのリスクは、市場全体の動きとどれくらい連動しているか(=ベータ値)で表される。

3. 数式で理解するCAPM

CAPMの基本式は以下の通りです。

\[ E(R_i) = R_f + \beta_i (E(R_m) – R_f) \]

ここで、

  • \(E(R_i)\):資産 \(i\) の期待収益率(=株主資本コスト)
  • \(R_f\):無リスク利子率(国債など)
  • \(\beta_i\):資産 \(i\) のベータ(市場との連動性)
  • \(E(R_m)\):市場全体の期待収益率

ベータが大きいほど、市場全体の動きに強く反応する=リスクが高い、と考えられます。

4. 株主資本コストの求め方:基本例題

では実際に計算してみましょう。以下のような条件の企業があるとします。

  • 無リスク利子率 \(R_f = 2\%\)
  • 市場ポートフォリオの期待収益率 \(E(R_m) = 8\%\)
  • 企業のベータ値 \(\beta = 1.2\)

この企業の株主資本コストは、CAPMにより次のように計算されます。

\[ E(R_i) = 0.02 + 1.2 \times (0.08 – 0.02) = 0.02 + 1.2 \times 0.06 = 0.02 + 0.072 = 0.092 \]

つまり、株主資本コストは9.2%となります。この利回りを上回る投資でなければ、株主の期待に応えられないことになります。

5. 応用例題:異なるリスク資産を比較する

以下の3つの企業を比較してみましょう。

企業ベータ値株主資本コスト
A社0.8
B社1.0
C社1.5

共通の条件:\(R_f = 1.5\%\), \(E(R_m) = 7\%\)

それぞれの企業の株主資本コストを計算してみましょう。

A社:

\[ E(R_A) = 0.015 + 0.8 \times (0.07 – 0.015) = 0.015 + 0.8 \times 0.055 = 0.015 + 0.044 = 0.059 \] → 5.9%

B社:

\[ E(R_B) = 0.015 + 1.0 \times 0.055 = 0.015 + 0.055 = 0.07 \] → 7.0%

C社:

\[ E(R_C) = 0.015 + 1.5 \times 0.055 = 0.015 + 0.0825 = 0.0975 \] → 9.75%

このように、ベータ値が高い企業ほど、株主が要求するリターン=資本コストは高くなります。

6. CAPMの限界と実社会での使い方

CAPMは理論的に非常に洗練されたモデルですが、実際の経済ではいくつかの課題があります。

  • 市場ポートフォリオを正確に定義するのが難しい
  • ベータ値は過去のデータに基づいて計算されるため、未来のリスクを必ずしも正確に反映しない
  • 投資家の行動が理論通りとは限らない

それでもなお、CAPMは多くの企業や投資家にとって標準的な判断材料として使われています。プロジェクト評価や企業価値評価(DCF法など)でのディスカウント率として活用されています。

7. まとめ

株主資本コストは、企業が株主の期待リターンを満たすための重要な指標です。CAPMを使えば、市場リスクとの関係を数式で捉えることができ、実際の投資判断にも応用可能です。

本記事では、高校生でも理解できるように、数式・例題・応用問題を使って丁寧に説明しました。経済学やファイナンスの初学者にとって、資本コストの理解は将来にわたって役立つ知識となるでしょう。

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