高校生でもわかる!心理学と経済学で学ぶ「囚人のジレンマ」完全ガイド

高校生でもわかる!心理学と経済学で学ぶ「囚人のジレンマ」完全ガイド

目次

囚人のジレンマとは?

「囚人のジレンマ」とは、ゲーム理論における有名な思考実験の一つで、個人の合理的な選択が全体としては非合理的な結果を招くことを示します。

想定される状況は以下の通りです。

  • 二人の容疑者がそれぞれ別々に尋問を受けている。
  • 協力(黙秘)すれば二人とも軽い刑で済む。
  • 片方が裏切れば、裏切った者は無罪、黙秘した者は重罪。
  • 両方が裏切れば、双方とも中程度の刑になる。

このジレンマは「信頼」「協力」「裏切り」といったテーマが交錯する興味深いモデルです。

心理学での視点と実験例

心理学では、人間の「利他性」や「信頼」、「社会的規範」への従属といった心理的傾向が、囚人のジレンマにどう影響するかを調べます。

実験例1:繰り返しゲームと信頼の構築

参加者を2人一組にし、複数回の囚人のジレンマをプレイさせると、次第に互いに協力し合う傾向が高まることが確認されます。これは「信頼」が構築されるためとされます。

実験例2:匿名性と裏切り率

相手の素性が分からない匿名条件下では、裏切りの割合が増加する傾向にあります。これは「社会的監視」が人の行動に影響することを示しています。

実験例3:文化的背景の違い

ある研究では、個人主義的な文化よりも、集団主義的な文化の参加者の方が協力する傾向が強いという結果もあります。

実際の例と例題

例1:友達との宿題

あなたと友達が一緒に宿題を出す約束をしています。友達がサボってもあなたが提出すれば点がもらえる。でも、もしあなたもサボったら二人とも0点です。どうする?

例2:テストでのカンニング

二人の生徒がテストでカンニングするかどうかを選びます。見つからなければ高得点だが、両方がすると教師に怪しまれ、全員失格になる可能性が高まる。

例題:点数で表す囚人のジレンマ

相手が黙秘相手が裏切り
自分が黙秘-1, -1-10, 0
自分が裏切り0, -10-5, -5

このような数値設定の下で、自分にとって最適な選択はどちらか?という問題を考えることで、ゲーム理論的思考を育てることができます。

経済学における応用

経済学では、囚人のジレンマを用いて企業の競争、国家間の交渉、環境政策などをモデル化します。

例1:企業間の価格競争

企業Aと企業Bが価格を下げるかどうかを選ぶ。価格を下げれば顧客が増えるが、利益は減る。両者が下げると利益競争に陥る。

例2:環境問題と国際交渉

国ごとに温室効果ガス削減をするかどうか。協力すれば地球環境が改善するが、コストがかかる。裏切れば短期的利益が得られるが、長期的損失を招く。

例3:公共財供給

国民全員が税金を払えば公共サービスは充実するが、「タダ乗り」を選ぶ人が増えるとサービスが成り立たなくなる。

数式で理解する囚人のジレンマ

ゲーム理論の基本構造は次のように表せます。

プレイヤー \( A \) と \( B \) が「協力(C)」または「裏切り(D)」のいずれかを選択します。

利得行列を次のように設定します:

\[ \begin{bmatrix} (C, C) & (C, D) \\ (D, C) & (D, D) \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} (-1, -1) & (-10, 0) \\ (0, -10) & (-5, -5) \end{bmatrix} \]

このとき、プレイヤーが利己的に行動すれば、均衡は \((D, D)\) になり、全体として損をする結果になります(ナッシュ均衡)。

まとめと学びのポイント

  • 囚人のジレンマは「協力」と「自己利益」のバランスを考える問題。
  • 心理学では信頼関係や文化、匿名性が行動に影響する。
  • 経済学では企業戦略や国際関係のモデルとして応用される。
  • 数式や利得行列で整理することで、論理的に考える力がつく。

高校生にとっては、日常の行動にも応用できるテーマです。人間関係や社会のしくみを考えるヒントにもなるので、ぜひ身近な問題に当てはめて考えてみましょう。

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