「安全保障のジレンマ」と「囚人のジレンマ」を徹底解説!経済学への応用例までわかりやすく紹介

「安全保障のジレンマ」と「囚人のジレンマ」を徹底解説!経済学への応用例までわかりやすく紹介

目次

1. 囚人のジレンマとは?

囚人のジレンマは、ゲーム理論の基本的な問題です。二人の容疑者が取り調べを受けている状況を想像してください。二人はそれぞれ「黙秘」するか「自白」するかを選びます。ただし、相談はできません。

それぞれの選択と結果は以下のようになります:

  • 両方が黙秘:軽い罪で2年の刑。
  • 一方が自白、他方が黙秘:自白した側は無罪、黙秘した側は10年の刑。
  • 両方が自白:共に5年の刑。

合理的に考えると、どちらも自白を選ぶのが「ナッシュ均衡」となりますが、それは社会的に最適(合計刑期が最小)ではありません。ここにジレンマがあります。

2. 安全保障のジレンマとは?

安全保障のジレンマは、国際関係論における重要な概念です。一国が自国の安全を高めるために軍備を増強すると、他国はそれを「脅威」と感じ、自国の軍備も増強します。これがエスカレートすると、戦争のリスクが高まってしまいます。

たとえば、A国が軍事費を増やすと、B国も「攻撃されるかもしれない」と思って軍備を増やします。するとA国も「B国の軍備増強は危険」と考えてさらに軍事拡大…。この悪循環が安全保障のジレンマです。

3. 囚人のジレンマと安全保障のジレンマの関係

両者はとても似た構造を持っています。つまり、「互いに協力した方がよい結果になる」けれど、「相手が裏切るかもしれないという不信感」があるために、結果的に非協力的な行動をとってしまうという点です。

国家同士の軍備競争も、囚人のジレンマの構造で説明できます。もし両国が軍備を控えれば平和が保たれますが、どちらかが裏切れば相手が大きな損害を受けるため、結局は軍拡に向かってしまいます。

4. 経済学への応用:企業の価格競争

囚人のジレンマは経済学でも頻繁に登場します。たとえば、競合企業が「値下げ」するかどうかの判断。

  • 両者が値下げしない:利益は維持される(最適)。
  • 一方だけ値下げ:その企業が市場を奪って利益を上げる。
  • 両方が値下げ:価格競争が起き、利益が減る。

このように、合理的に考えるとお互い値下げしてしまい、結局損をするというのが囚人のジレンマ的な状況です。これが経済学の「クールノー競争」や「ベルトラン競争」にもつながります。

5. 囚人のジレンマの数式モデル

囚人のジレンマを数式で表すには、利得行列(ペイオフマトリクス)を使います。プレイヤーAとBが「協力(C)」か「裏切り(D)」を選び、利得が以下のように与えられるとします:

\[ \begin{array}{c|c|c} & \text{B: C} & \text{B: D} \\ \hline \text{A: C} & (3, 3) & (0, 5) \\ \text{A: D} & (5, 0) & (1, 1) \\ \end{array} \]

この場合、D(裏切り)が支配戦略となり、ナッシュ均衡は (D, D) ですが、(C, C) のほうが双方にとって望ましい結果です。

6. 応用例題と解説

例題1:企業の値下げ競争

A社とB社は、それぞれ「値下げする」か「価格を維持する」を選べます。以下の利得行列を見て、ナッシュ均衡と社会的に望ましい結果を求めなさい。

\[ \begin{array}{c|c|c} & \text{B社:維持} & \text{B社:値下げ} \\ \hline \text{A社:維持} & (10, 10) & (2, 15) \\ \text{A社:値下げ} & (15, 2) & (5, 5) \\ \end{array} \]

解説:この表でも、両社が値下げを選ぶ(5,5)がナッシュ均衡ですが、(10,10)の方が両社にとって望ましい。これが典型的な囚人のジレンマの応用です。

例題2:国際関係における軍備競争

A国とB国は「軍備を増強する」か「現状維持する」かを選びます。以下の利得行列で分析しなさい:

\[ \begin{array}{c|c|c} & \text{B国:維持} & \text{B国:増強} \\ \hline \text{A国:維持} & (4, 4) & (1, 5) \\ \text{A国:増強} & (5, 1) & (2, 2) \\ \end{array} \]

解説:この場合も、どちらも軍備を増強して(2,2)になるのがナッシュ均衡。しかし、(4,4)の方が平和的で良い結果。信頼関係があれば協力が可能になります。

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