【高校数学】ヤングの不等式とは?意味・導出・応用例題まで徹底解説!
ヤングの不等式は、大学入試や数学オリンピックレベルの問題でも登場する美しい不等式の一つです。このページでは、ヤングの不等式の基本的な形から応用例題まで、高校生向けにわかりやすく丁寧に解説します。
目次
ヤングの不等式とは?
ヤングの不等式は、次のように表されます:
$$ ab \leq \frac{a^p}{p} + \frac{b^q}{q} $$
ただし、\( a \geq 0 \), \( b \geq 0 \) で、\( p > 1 \), \( q > 1 \) を満たし、
$$ \frac{1}{p} + \frac{1}{q} = 1 $$
の関係があります。この条件を満たす \( p \), \( q \) を「共役指数」と呼びます。
ヤングの不等式の証明
ヤングの不等式の証明には凸関数の性質を用いるのが一般的です。特に、関数 \( f(x) = \frac{x^p}{p} \) が凸関数であることを利用します。
凸関数と接線の不等式
凸関数 \( f \) に対して、任意の点 \( x_0 \) における接線よりも関数値は常に上にあります:
$$ f(x) \geq f(x_0) + f'(x_0)(x – x_0) $$
この性質を使い、\( f(x) = \frac{x^p}{p} \), \( f'(x) = x^{p-1} \) を代入し、不等式の形に整理することでヤングの不等式を導くことができます。
基本例題
例題1:数値代入での確認
\( a = 2 \), \( b = 3 \), \( p = 3 \), \( q = \frac{3}{2} \) のとき、ヤングの不等式を確認しましょう。
まず、共役条件を確認:
$$ \frac{1}{3} + \frac{2}{3} = 1 $$
不等式の右辺を計算:
$$ \frac{2^3}{3} + \frac{3^{3/2}}{3/2} = \frac{8}{3} + \frac{3\sqrt{3}}{1.5} $$
数値を代入して概算:
左辺:\( ab = 6 \)
右辺:およそ \( 2.67 + 3.46 = 6.13 \)
よって、確かに \( ab \leq \frac{a^p}{p} + \frac{b^q}{q} \) が成り立っています。
応用例題
例題2:Cauchy-Schwarzの導出に利用
ヤングの不等式を使うと、有名なコーシー・シュワルツの不等式の証明にも使えます。
例えば、2つの非負数列 \( a_1, a_2 \) と \( b_1, b_2 \) に対して:
$$ (a_1b_1 + a_2b_2)^2 \leq (a_1^2 + a_2^2)(b_1^2 + b_2^2) $$
これは、ヤングの不等式で各項 \( a_ib_i \leq \frac{a_i^2}{2} + \frac{b_i^2}{2} \) を導入することで簡潔に証明できます。
例題3:指数・対数を含む関数の評価
次のような関数の上界を評価する問題でも登場します。
\( f(x) = x^\alpha e^{-x} \) の最大値を求めよ。ただし \( \alpha > 0 \)。
ヤングの不等式の変形を使って、 $$ x^\alpha e^{-x} \leq \frac{x^{p\alpha}}{p} + \frac{e^{-qx}}{q} $$ のように分解し、上界を評価する手法に利用できます。
例題4:積分への応用
ヤングの不等式は積分形でも用いられます。
$$ \int_0^\infty f(x)g(x)\,dx \leq \left( \int_0^\infty |f(x)|^p\,dx \right)^{1/p} \left( \int_0^\infty |g(x)|^q\,dx \right)^{1/q} $$
この形はホルダーの不等式ですが、ヤングの不等式の積分版と見なすこともでき、確率論や関数解析でも頻繁に用いられます。
学習のポイント
- ヤングの不等式は定義の形を正確に覚えることが第一歩。
- 「共役指数」という言葉と意味をしっかり押さえておくこと。
- 「具体例で確かめる」「凸関数の性質を利用する」ことで理解が深まる。
- ホルダーやコーシー・シュワルツ不等式などとの関連も理解すると応用力が高まる。
このように、ヤングの不等式は一見シンプルながら、大学数学や入試問題でも威力を発揮する強力なツールです。しっかりマスターしておきましょう。