【高校数学】条件式 abc = 1 を用いた不等式の応用徹底解説

【高校数学】条件式 abc = 1 を用いた不等式の応用徹底解説

本記事では、高校数学の中でも応用力が試される「条件付き不等式」の中から、特に条件式 \( abc = 1 \) を利用したタイプの問題について詳しく解説します。単なる知識だけでなく、どのように考えるか、どのようにアプローチするかまで丁寧に紹介していきます。

目次

条件式 \( abc = 1 \) の意味とは?

不等式問題において「\( abc = 1 \)」という条件が与えられているとき、これは変数 \( a, b, c \) が正の実数であり、その積が1であることを意味します。この条件をうまく使うことで、変数の関係を変形したり、不等式を単純化することができます。

たとえば、次のような変形が可能になります:

  • 変数の一部を他の変数で表す(例:\( c = \frac{1}{ab} \))
  • 対称性や置換(シンメトリー)を利用する
  • 相加相乗平均(AM-GM不等式)を適用する際の前提を満たしているか確認する

不等式解法の基本テクニック

不等式の解法では、以下のテクニックが頻出です:

  1. 相加相乗平均(AM-GM): \[ \frac{a + b}{2} \geq \sqrt{ab} \quad (\text{等号成立は } a = b) \]
  2. 対称性を用いた変数の置き換え: 対称性がある場合、最小値や最大値を見つけやすい
  3. ホルダーの不等式やコーシー・シュワルツ不等式: 応用度の高い不等式
  4. 変数の変換(例えば \( a = \frac{x}{y}, b = \frac{y}{z}, c = \frac{z}{x} \))

例題1:基本的な不等式

例題:正の実数 \( a, b, c \) に対して \( abc = 1 \) のとき、次の不等式を証明せよ:

\[ a + b + c \geq ab + bc + ca \]

解説:
このような不等式では、まず左右の項の違いに注目します。左辺は1次、右辺は2次の項です。そこで、\( abc = 1 \) を活用して、たとえば \( a = \frac{x}{y}, b = \frac{y}{z}, c = \frac{z}{x} \) と置換する方法があります。この置換により、全ての変数の積が1となります。

あるいは、以下の不等式を利用して評価できます:

\[ a + b + c \geq 3\sqrt[3]{abc} = 3 \]

一方で、\( ab + bc + ca \leq a^2 + b^2 + c^2 \) や他の不等式と組み合わせることで、結論を導けることもあります。

例題2:対称性を使った応用

例題:正の実数 \( a, b, c \) に対して \( abc = 1 \) のとき、次を証明せよ:

\[ \frac{1}{a^3(b + c)} + \frac{1}{b^3(c + a)} + \frac{1}{c^3(a + b)} \geq \frac{3}{2} \]

解説:
一見すると複雑ですが、変数の対称性と条件 \( abc = 1 \) を利用して、次のような置換が効果的です:

\[ a = \frac{x}{y},\quad b = \frac{y}{z},\quad c = \frac{z}{x} \]

または、AM-GMを次のように適用することもできます:

\[ \frac{1}{a^3(b + c)} \geq \frac{2}{a^3(b + c + c + b)} = \frac{1}{a^3(b + c)} \]

このような問題では対称性を崩さずに計算を整理する力が試されます。

例題3:逆数の形を含む応用

例題:正の実数 \( a, b, c \) に対して \( abc = 1 \) のとき、次の不等式を証明せよ:

\[ \frac{1}{a} + \frac{1}{b} + \frac{1}{c} \geq a + b + c \]

解説:
この問題もまた、AM-GM不等式がカギになります。たとえば、

\[ \frac{1}{a} + a \geq 2 \]

といった式を使ってそれぞれ評価し、全体を合計すれば:

\[ \left( \frac{1}{a} + a \right) + \left( \frac{1}{b} + b \right) + \left( \frac{1}{c} + c \right) \geq 6 \Rightarrow \frac{1}{a} + \frac{1}{b} + \frac{1}{c} \geq 6 – (a + b + c) \]

ここから \( \frac{1}{a} + \frac{1}{b} + \frac{1}{c} \geq a + b + c \) を導くにはさらなる工夫が必要ですが、全体のバランスと不等式の対称性を見極めるのがポイントです。

まとめと学習アドバイス

条件付き不等式は一見難しく感じられますが、基本的な不等式(AM-GM、Cauchy-Schwarz)を土台にして、それをどのように組み合わせていくかが重要です。特に条件式 \( abc = 1 \) のような形は、数学オリンピックや難関大入試で頻出なので、以下を意識して演習していきましょう:

  • 不等式の定番手法に慣れる
  • 変数の変換や置換を柔軟に使う
  • 対称性の活用を意識する

最後に、不等式は「なぜ成り立つか」を意識して、単なる計算問題にしないことが重要です。

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