【高校数学】分数の和を下からおさえる不等式の証明テクニック徹底解説

【高校数学】分数の和を下からおさえる不等式の証明テクニック徹底解説

この記事では、分数の和を下から評価(下からおさえる)する際に有効な数学的テクニックについて、高校生向けにわかりやすく解説します。不等式の証明が苦手な人や、数学オリンピックや難関大学入試を目指す人にとっても有用な内容です。

目次

分数の和を下からおさえるとは?

「分数の和を下からおさえる」とは、次のような形の不等式で、左辺の和がある下限以上であることを示すことです:

\[ \frac{1}{a} + \frac{1}{b} \geq \text{一定の値} \]

たとえば、\( a, b \) が正の実数で、\( a + b = \text{一定} \) のときなどに、このような不等式を使います。

このような問題を解くには、代表的な不等式やテクニックを活用するのが有効です。

基本となるテクニックと考え方

① 相加相乗平均の不等式(AM ≥ GM)

2つの正の数 \( a, b \) に対して:

\[ \frac{a + b}{2} \geq \sqrt{ab} \]

等号が成り立つのは \( a = b \) のときのみです。この不等式は逆に使うと、「積を一定にしたとき和を最大化する」といった発想にも使えます。

② コーシー・シュワルツの不等式

高校数学では、次の形で登場することが多いです:

\[ \left( \sum_{i=1}^{n} a_i^2 \right) \left( \sum_{i=1}^{n} b_i^2 \right) \geq \left( \sum_{i=1}^{n} a_i b_i \right)^2 \]

特に2項のときは、分数の和を評価する際に使いやすい形に変形することが可能です。

③ 単調性の利用

関数 \( f(x) = \frac{1}{x} \) は、\( x > 0 \) において単調減少であるため、大小関係を保ったまま逆数を取ると不等式が反転します。

この性質を使って、最小値や最大値を考えることで、下限を導くことができます。

例題1:基本的な不等式の証明

問題: 正の実数 \( a, b \) に対して、\( a + b = 1 \) のとき、次の不等式を証明せよ:

\[ \frac{1}{a} + \frac{1}{b} \geq 4 \]

解説:

まず、与えられた条件 \( a + b = 1 \) を使って、相加相乗平均の不等式を使います。

\[ \frac{a + b}{2} \geq \sqrt{ab} \Rightarrow \frac{1}{2} \geq \sqrt{ab} \Rightarrow ab \leq \frac{1}{4} \]

また、

\[ \frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{a + b}{ab} = \frac{1}{ab} \geq 4 \]

よって、証明完了です。

例題2:応用的な不等式への展開

問題: 正の実数 \( a, b, c \) に対して、\( a + b + c = 1 \) のとき、次の不等式を証明せよ:

\[ \frac{1}{a} + \frac{1}{b} + \frac{1}{c} \geq 9 \]

解説:

まず、相加相乗平均をそれぞれに使います:

\[ \frac{a + b + c}{3} \geq \sqrt[3]{abc} \Rightarrow \frac{1}{3} \geq \sqrt[3]{abc} \Rightarrow abc \leq \frac{1}{27} \]

そして、次の恒等式に注目:

\[ \frac{1}{a} + \frac{1}{b} + \frac{1}{c} \geq \frac{9}{a + b + c} = \frac{9}{1} = 9 \]

この不等式は、調和平均と相加平均の不等式(HM ≤ AM)によっても説明できます。

\[ \frac{3}{\frac{1}{a} + \frac{1}{b} + \frac{1}{c}} \leq \frac{a + b + c}{3} = \frac{1}{3} \Rightarrow \frac{1}{a} + \frac{1}{b} + \frac{1}{c} \geq 9 \]

よって、証明完了です。

まとめと学習アドバイス

  • 分数の和を下から評価するには、平均に関する不等式(AM-GM, HM ≤ AMなど)を使うのが定石です。
  • 与えられた制約(和や積)を使って、他の項を変形・評価する発想が重要です。
  • 等号成立条件を意識することで、最適条件の推測や別解も導けるようになります。

これらのテクニックをしっかり身につければ、大学入試レベルの問題はもちろん、数学オリンピックレベルにも応用できます。日々の演習で実際に手を動かして、身につけていきましょう。

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