高校数学で押さえたい!重み付き相加相乗平均の不等式とその応用

高校数学で押さえたい!重み付き相加相乗平均の不等式とその応用

目次

重み付き相加相乗平均の不等式とは

相加相乗平均の不等式(AM-GM不等式)は、高校数学の中でも重要な不等式の一つです。特に、重み付きバージョンは、応用範囲が広く、数IIIや大学入試にも頻出です。

一般に、正の実数 \( a_1, a_2, \dots, a_n \) と、正の重み \( w_1, w_2, \dots, w_n \) に対して、重みの合計が1(つまり \( w_1 + w_2 + \cdots + w_n = 1 \))のとき、次の不等式が成り立ちます:

\[ w_1 a_1 + w_2 a_2 + \cdots + w_n a_n \geq a_1^{w_1} a_2^{w_2} \cdots a_n^{w_n} \]

等号成立条件は、すべての \( a_i \) が等しいとき、つまり \( a_1 = a_2 = \cdots = a_n \) のときです。

不等式の証明

重み付き相加相乗平均の不等式の証明は、いくつかのアプローチがありますが、ここでは代表的な2通りを紹介します。

1. 対数関数の凹性を利用する方法

対数関数 \( \log x \) は凸関数であるため、Jensenの不等式を使って証明できます。

Jensenの不等式によると、凸関数 \( f \) に対して:

\[ f(w_1 a_1 + w_2 a_2 + \cdots + w_n a_n) \leq w_1 f(a_1) + w_2 f(a_2) + \cdots + w_n f(a_n) \]

凹関数の場合には不等号の向きが逆転するため、\( \log \) は凹関数であり次のように適用できます:

\[ \log(w_1 a_1 + \cdots + w_n a_n) \geq w_1 \log a_1 + \cdots + w_n \log a_n \]

両辺を指数関数で包めば:

\[ w_1 a_1 + \cdots + w_n a_n \geq a_1^{w_1} \cdots a_n^{w_n} \]

2. \(n=2\) の場合からの帰納法による証明

\( n = 2 \) の場合:

\[ wa + (1-w)b \geq a^w b^{1-w} \quad (0 < w < 1) \]

この不等式を前提として、数学的帰納法で一般の \( n \) に拡張していくことができます。ただし、この方法は少し複雑になるので、試験ではあまり使われません。

例題で理解を深めよう

例題1:

正の実数 \( a = 2, b = 8 \)、重み \( w_1 = \frac{1}{4}, w_2 = \frac{3}{4} \) に対して、不等式を確認してみましょう。

左辺(相加平均): \[ \frac{1}{4} \cdot 2 + \frac{3}{4} \cdot 8 = 0.5 + 6 = 6.5 \]

右辺(相乗平均): \[ 2^{1/4} \cdot 8^{3/4} = 2^{1/4} \cdot (2^3)^{3/4} = 2^{1/4 + 9/4} = 2^{10/4} = 2^{2.5} \approx 5.66 \]

よって、 \[ 6.5 \geq 5.66 \] となり、不等式が確認できました。

例題2(等号成立の確認):

\( a = b = c = 5 \)、\( w_1 = w_2 = w_3 = \frac{1}{3} \) のとき:

\[ \frac{1}{3} \cdot 5 + \frac{1}{3} \cdot 5 + \frac{1}{3} \cdot 5 = 5 \]

\[ 5^{1/3} \cdot 5^{1/3} \cdot 5^{1/3} = 5^{1} \]

左辺 = 右辺 = 5 となり、等号が成立することも確認できます。

実戦で使える応用問題

応用問題1:最小値を求める

条件:\( x > 0 \)、\( y > 0 \)、\( x + y = 10 \) のとき、\( x^2 + y^2 \) の最小値を求めよ。

解法:まず、\( x + y = 10 \) なので、\( y = 10 – x \)。
よって、 \[ f(x) = x^2 + (10 – x)^2 = x^2 + 100 – 20x + x^2 = 2x^2 – 20x + 100 \]

微分して最小値を求めると: \[ f'(x) = 4x – 20 = 0 \Rightarrow x = 5 \]

よって、\( x = y = 5 \) のとき最小値: \[ x^2 + y^2 = 25 + 25 = 50 \]

このように、最小値・最大値の問題でも相加相乗平均の不等式を活用できます。

応用問題2:整数条件の最適化

\( a, b \) は正の整数で、\( ab = 36 \) を満たすとき、\( a + b \) の最小値を求めよ。

相加相乗平均を使うと: \[ \frac{a + b}{2} \geq \sqrt{ab} = \sqrt{36} = 6 \Rightarrow a + b \geq 12 \]

等号成立は \( a = b \) のとき。36の平方根は6なので、\( a = b = 6 \) のときは \( ab = 36 \) は成り立たない。
そこで、積が36になる整数対を列挙:

(1,36), (2,18), (3,12), (4,9), (6,6)

この中で \( a + b \) が最小になるのは \( (6,6) \) で \( a + b = 12 \)。よって最小値は12。

まとめ

重み付き相加相乗平均の不等式は、証明も応用も非常に多く、入試問題や数学オリンピックでも頻出です。
不等式を道具として使いこなすためには、式変形の柔軟さと、等号成立条件を意識した問題設定がカギとなります。

この記事で紹介したように、定義・証明・例題・応用を一通り学ぶことで、数学力の大幅な向上が期待できます。

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