高校数学で不等式証明を攻略!三角形の辺の長さとRavi変換の徹底解説
高校数学で不等式証明を攻略!三角形の辺の長さとRavi変換の徹底解説
目次
三角形の不等式証明とは?
高校数学では、三角形の辺の長さ \( a, b, c \) に関する不等式の証明問題がよく出題されます。典型的な問題としては、次のようなものがあります。
問題: 三角形の3辺の長さを \( a, b, c \) とするとき、次の不等式を証明せよ: \[ a^2 + b^2 + c^2 \geq ab + bc + ca \]
このような問題を直接解こうとすると、代数計算が複雑になりがちです。そこで「Ravi変換」という便利な置き換えを使うことで、よりシンプルな形に直してから証明する方法が知られています。
Ravi変換とは
Ravi変換とは、三角形の辺の長さに次のような置き換えをする方法です:
三角形の辺 \( a, b, c \) を \[ a = x + y, \quad b = y + z, \quad c = z + x \] と置きます。ただし、\( x, y, z > 0 \)(正の実数)とします。
この変換をすると、三角形の成立条件(任意の2辺の和が他の1辺より大きい)が自然に満たされるため、不等式の証明に非常に便利です。
なぜRavi変換を使うのか
三角形の3辺 \( a, b, c \) に対して、Ravi変換 \[ a = x + y, \quad b = y + z, \quad c = z + x \] を用いると、次のような利点があります:
- 3辺が正の実数であるという制約を保ちつつ、より対称的で扱いやすい形に変換できる。
- 計算式の対称性を活かせるため、代数的にシンプルに証明できる。
- 不等式の形が自然と展開・整理しやすい形になる。
例題と解説
例題: 三角形の3辺 \( a, b, c \) に対して、次の不等式を証明せよ: \[ a^2 + b^2 + c^2 \geq ab + bc + ca \]
このままだと計算が大変そうですが、Ravi変換を使って次のように変形してみましょう。
Ravi変換により、 \[ a = x + y, \quad b = y + z, \quad c = z + x \] と置きます。これを元の不等式に代入します:
左辺: \[ a^2 + b^2 + c^2 = (x+y)^2 + (y+z)^2 + (z+x)^2 \\ = x^2 + y^2 + 2xy + y^2 + z^2 + 2yz + z^2 + x^2 + 2zx \\ = 2(x^2 + y^2 + z^2) + 2(xy + yz + zx) \]
右辺: \[ ab + bc + ca = (x+y)(y+z) + (y+z)(z+x) + (z+x)(x+y) \] 展開すると、 \[ = xy + y^2 + xz + yz + yz + z^2 + zx + x^2 + zx + x^2 + xy + yx \\ = x^2 + y^2 + z^2 + 3(xy + yz + zx) \]
したがって、不等式は \[ 2(x^2 + y^2 + z^2) + 2(xy + yz + zx) \geq x^2 + y^2 + z^2 + 3(xy + yz + zx) \] 両辺から \( x^2 + y^2 + z^2 \) を引くと: \[ x^2 + y^2 + z^2 \geq xy + yz + zx \] これはよく知られた不等式(対称式の基本不等式)であり、明らかに成り立ちます。
ゆえに、元の不等式は常に成り立つ。
他の応用例
以下のような他の不等式にもRavi変換は有効です:
- \( a^3 + b^3 + c^3 \geq abc \)
- \( \frac{1}{b + c – a} + \frac{1}{c + a – b} + \frac{1}{a + b – c} \geq \frac{3}{a} \) (対称的変形が有効)
特に三角形の辺の形のままだと証明が困難な場合は、積極的にRavi変換を試みましょう。
まとめ
- 三角形の辺に関する不等式問題は、Ravi変換を使うことで対称性のある形に変換でき、証明がしやすくなる。
- Ravi変換とは、\( a = x + y, b = y + z, c = z + x \) のように辺を正の実数の和で表す置き換え。
- 不等式の証明がシンプルな代数計算になるため、積極的に活用しよう。
Ravi変換は、入試問題や数学オリンピックでもしばしば登場する重要なテクニックです。問題に対して「このままでは難しい」と感じたとき、変換を試みる柔軟な発想を持つことが、数学力アップへの第一歩です。