高校数学で差をつける!Schurの不等式の完全マスターと応用例

高校数学で差をつける!Schurの不等式の完全マスターと応用例

数学オリンピックや難関大学の入試などで頻出の「Schurの不等式」は、基本的な不等式の理解を超えた力を試される場面で大きな威力を発揮します。本記事では、Schurの不等式の定義から基本的な使い方、さらに発展的な応用例まで、高校生にもわかりやすく丁寧に解説します。

目次

Schurの不等式とは?

Schurの不等式は、対称式や不等式の証明において強力な道具です。特に、非負実数に対して成り立つ次の形が基本です。

Schurの不等式(次数3の形)

実数 \(a, b, c \geq 0\) に対して、任意の実数 \(r \geq 0\) に対し

\[ a^r(a – b)(a – c) + b^r(b – c)(b – a) + c^r(c – a)(c – b) \geq 0 \]

特に \(r = 1\) のとき、よく使われる形になります:

\[ a(a – b)(a – c) + b(b – c)(b – a) + c(c – a)(c – b) \geq 0 \]

この形は、3変数の対称不等式の証明に役立ち、等号成立条件も特徴的です。等号が成立するのは、3つの変数のうち2つが等しく、残りの1つが0であるときです(例:\(a = b \geq 0, c = 0\)など)。

基本的な例題

Schurの不等式の理解を深めるために、基本的な問題から始めましょう。

例題1

非負実数 \(a, b, c\) に対して、次の不等式を証明せよ:

\[ a^3 + b^3 + c^3 + 3abc \geq ab(a + b) + bc(b + c) + ca(c + a) \]

解法: 左辺と右辺の差を考えます。これはまさに Schur の不等式の形に一致します。

Schurの不等式(次数3)を次の形で書くと:

\[ a^3 + b^3 + c^3 + 3abc \geq a^2b + a^2c + b^2a + b^2c + c^2a + c^2b \]

右辺を整理すると上の不等式と一致するため、Schurの不等式から直ちに結論が得られます。

Schurの不等式の一般形

Schurの不等式は次数を変えて一般化することもできます。例えば次数 \(r\) に対する形は以下のようになります:

\[ a^r(a – b)(a – c) + b^r(b – c)(b – a) + c^r(c – a)(c – b) \geq 0 \]

これは、\(a, b, c \geq 0\) であれば任意の \(r \geq 0\) に対して成立します。特に \(r = 0\) の場合は:

\[ (a – b)(a – c) + (b – c)(b – a) + (c – a)(c – b) \geq 0 \]

この形も不等式の証明で時折使われますが、一般には \(r = 1, 2, 3\) など具体的な値で用いられることが多いです。

応用問題と解法

ここでは、入試やコンテストで出題されるような、やや難易度の高い応用問題を紹介します。

例題2

非負実数 \(a, b, c\) に対して、次を証明せよ:

\[ a^3 + b^3 + c^3 \geq 3abc \]

解法: これは基本的な不等式の一つですが、Schurの不等式を使って示すことも可能です。

\[ a^3 + b^3 + c^3 + 3abc \geq ab(a + b) + bc(b + c) + ca(c + a) \]

の形に帰着させ、右辺を評価すればOKです。

例題3

次の不等式を証明せよ:

\[ a^4 + b^4 + c^4 + abc(a + b + c) \geq ab(a^2 + b^2) + bc(b^2 + c^2) + ca(c^2 + a^2) \]

解法: この形もSchurの不等式(次数4)を利用して証明できます。次数を上げた形で考えると:

\[ a^r(a – b)(a – c) + \cdots \geq 0 \]

において、\(r = 2\)や\(r = 3\)の形を展開して、変形することで証明が可能です。

他の不等式との比較

Schurの不等式は、他の有名な不等式(AM-GM不等式、Cauchy-Schwarz不等式、Muirheadの不等式など)と組み合わせて使われることも多くあります。特に次のような関係があります:

  • AM-GMでは対応できない対称でない式にも対応できる
  • Muirheadの不等式より柔軟な場合もある(変数が非負であることを活かせる)

複数の不等式を駆使する中で、Schurは「最後の一押し」として使われることもあります。

まとめ

  • Schurの不等式は非負実数に対する強力な不等式。
  • 次数を変えることで様々な不等式に応用できる。
  • 基本例題から発展例題まで、試験や数学コンテストで幅広く使われている。
  • 他の不等式との併用も多く、深い理解が求められる。

Schurの不等式をしっかり使いこなせるようになると、数学の証明力が一段とレベルアップします。ぜひ何度も例題を解いて、自分の武器にしてください。

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