数学オリンピック不等式問題を徹底解説!高校生向け応用例題と攻略法

数学オリンピック不等式問題を徹底解説!高校生向け応用例題と攻略法

数学オリンピックでは、数列・整数・幾何などと並び、不等式が頻出分野のひとつです。特に応用問題では、単なる代入では解けない、工夫と発想が求められます。本記事では高校生向けに、基礎から応用まで不等式の代表例と解法を丁寧に解説します。

目次

不等式の基本と証明手法

まずは不等式の基本的な考え方と証明方法を紹介します。

代表的な証明方法

  • 直接計算:展開・整理によって左右の差を調べる。
  • 相加相乗平均の不等式(AM-GM): \\[ \frac{a + b}{2} \geq \sqrt{ab} \quad (a, b > 0) \\]
  • 平方完成・差の平方: \\[ a^2 + b^2 \geq 2ab \quad \text{(実数全体で成り立つ)} \\]
  • 帰納法:自然数に関する不等式で有効。

数学オリンピック頻出の基本不等式

数学オリンピックでは以下の不等式が頻出です。理解し、使いこなせるようにしましょう。

コーシー・シュワルツの不等式(Cauchy-Schwarz)

実数列 \\(a_1, a_2, \dots, a_n\\), \\(b_1, b_2, \dots, b_n\\) に対して:

\\[ (a_1^2 + a_2^2 + \cdots + a_n^2)(b_1^2 + b_2^2 + \cdots + b_n^2) \geq (a_1b_1 + a_2b_2 + \cdots + a_nb_n)^2 \\]

ホルダーの不等式(Hölder)

一般的で強力な不等式:

\\[ \left( \sum_{i=1}^n a_i^p \right)^{1/p} \left( \sum_{i=1}^n b_i^q \right)^{1/q} \geq \sum_{i=1}^n a_ib_i \quad (1/p + 1/q = 1) \\]

ミンコフスキーの不等式

\\[ \left( \sum_{i=1}^n (a_i + b_i)^p \right)^{1/p} \leq \left( \sum_{i=1}^n a_i^p \right)^{1/p} + \left( \sum_{i=1}^n b_i^p \right)^{1/p} \\]

応用力を試す!例題で学ぶ不等式

例題1:相加相乗平均の応用

正の実数 \\(a, b, c\\) に対して以下を示せ:

\\[ \frac{a}{b + c} + \frac{b}{c + a} + \frac{c}{a + b} \geq \frac{3}{2} \\]

解法のヒント:対称性に注目し、Titu’s Lemma(Engel不等式)を使う。

例題2:シンプルな不等式の変形

実数 \\(x, y > 0\\) に対して次の不等式を証明せよ:

\\[ x^2 + y^2 \geq 2xy \\]

解法:差の平方を考えると:

\\[ (x – y)^2 \geq 0 \Rightarrow x^2 – 2xy + y^2 \geq 0 \Rightarrow x^2 + y^2 \geq 2xy \\]

例題3:不等式の最大化・最小化

条件 \\(a + b + c = 1, a, b, c > 0\\) のもとで次を最大化:

\\[ a^2 + b^2 + c^2 \\]

解法:シュワルツの不等式やLagrangeの未定乗数法の利用が有効です。

テクニック集:対称性・置換・同次化

対称性

変数の入れ替えに対して式が不変であることを利用。特に3変数対称な式には、WLOG(without loss of generality)を使って \\(a \leq b \leq c\\) と仮定できる場合も。

置換

たとえば \\(x = a + b\\) などと置くことで式を単純化。

同次化

式が同次(すべての項の次数が等しい)であれば、\\(a + b + c = 1\\) のように仮定してよい。

演習問題とその解説

問題1

正の実数 \\(a, b, c\\) に対して:

\\[ \frac{a^2}{b} + \frac{b^2}{c} + \frac{c^2}{a} \geq a + b + c \\]

解説:AM-GMの変形とチェビシェフの不等式を使うことが有効。

問題2

実数 \\(x, y > 0\\) に対し:

\\[ \frac{x}{y} + \frac{y}{x} \geq 2 \\]

解説:相加相乗平均の不等式の直接応用です。

問題3

実数 \\(x, y, z > 0\\) に対して:

\\[ \frac{x}{y + z} + \frac{y}{z + x} + \frac{z}{x + y} \geq \frac{3}{2} \\]

解説:Titu’s Lemmaの直接応用例。

まとめと学習アドバイス

不等式の分野は、数学オリンピックや大学入試においても非常に重要です。以下の点を意識しましょう。

  • 基本不等式(AM-GM, Cauchy-Schwarz など)を自在に使いこなせるようにする。
  • 問題の対称性や同次性に気づく視点を養う。
  • 例題を数多くこなして、「定石」を体に染み込ませる。

最初はうまくいかなくても、じっくりと粘り強く考える習慣が大切です。不等式の美しさと奥深さを味わいながら、レベルアップを目指しましょう。

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