高校数学で押さえるべき基本対称式の性質まとめ

高校数学で押さえるべき基本対称式の性質まとめ

本記事では、「基本対称式(elementary symmetric functions)」について、定義から具体的な性質・例まで、高校生にもわかるように丁寧に解説します。入試や数学IIIで頻出のテーマでもあるので、しっかり押さえておきましょう。

目次

基本対称式とは

まず「対称式」とは、変数の入れ替えに対して値が変わらない式を指します。例えば、

\( x + y \), \( xy \), \( x^2 + y^2 \) などは、\( x \) と \( y \) を入れ替えても式の値が変わりません。

特に、次のような形の対称式を基本対称式と呼びます:

  • 2変数の場合:
    • \( \sigma_1 = x + y \)
    • \( \sigma_2 = xy \)
  • 3変数の場合:
    • \( \sigma_1 = x + y + z \)
    • \( \sigma_2 = xy + yz + zx \)
    • \( \sigma_3 = xyz \)

これらは変数を用いた基本的な対称式であり、任意の対称式はこれらの基本対称式を使って表すことができます。

基本対称式の代表的な性質

基本対称式にはいくつか重要な性質があります。以下に代表的なものをまとめます。

① 任意の対称式は基本対称式の多項式で表せる

これを対称式の基本定理と呼びます。例えば、3変数の対称式 \( x^2y + y^2z + z^2x \) も、基本対称式 \( \sigma_1, \sigma_2, \sigma_3 \) を用いて表現可能です。

② 係数と基本対称式の関係(Vièteの公式)

多項式の係数と基本対称式の間には直接的な関係があります。例えば、次の2次方程式を考えます:

\( x^2 – (x_1 + x_2)x + x_1 x_2 = 0 \)

このとき、解 \( x_1, x_2 \) に対して、係数は以下のように表されます:

  • \( x_1 + x_2 = \sigma_1 \)
  • \( x_1 x_2 = \sigma_2 \)

このように、解と係数をつなぐ公式をViète(ヴィエト)の公式と呼びます。

③ 対称性と置換に対する不変性

基本対称式は、変数の置換に対して不変です。たとえば、3変数の基本対称式において:

\( \sigma_2 = xy + yz + zx \)

としたとき、任意の変数の入れ替え(たとえば \( x \leftrightarrow z \))をしても値は変わりません。

基本対称式の具体例

いくつか具体的な対称式とその基本対称式による表現を見ていきましょう。

例1: \( x^2 + y^2 \) を基本対称式で表す

\[ x^2 + y^2 = (x + y)^2 – 2xy = \sigma_1^2 – 2\sigma_2 \]

例2: \( x^2y + xy^2 \) を基本対称式で表す

\[ x^2y + xy^2 = xy(x + y) = \sigma_1 \sigma_2 \]

例3:3変数の対称式 \( x^2 + y^2 + z^2 \)

\[ x^2 + y^2 + z^2 = \sigma_1^2 – 2\sigma_2 \]

一般の対称式との関係

任意の対称式は、基本対称式を用いて表すことができるという事実から、複雑な対称式の計算でも基本対称式によって整理・簡単化できます。

たとえば、次のような対称式:

\( x^3 + y^3 + z^3 \)

これは次のように基本対称式を使って表すことができます:

\[ x^3 + y^3 + z^3 = \sigma_1^3 – 3\sigma_1\sigma_2 + 3\sigma_3 \]

この変形は、数学オリンピックのような場面や、大学入試でも役立ちます。

練習問題とその解説

問題1:

\( x + y = 5 \), \( xy = 6 \) のとき、\( x^2 + y^2 \) の値を求めよ。

解答:

\[ x^2 + y^2 = (x + y)^2 – 2xy = 5^2 – 2 \times 6 = 25 – 12 = 13 \]

問題2:

\( x + y + z = 6 \), \( xy + yz + zx = 11 \), \( xyz = 6 \) のとき、\( x^2 + y^2 + z^2 \) の値を求めよ。

解答:

\[ x^2 + y^2 + z^2 = \sigma_1^2 – 2\sigma_2 = 6^2 – 2 \times 11 = 36 – 22 = 14 \]

問題3:

\( x + y + z = 3 \), \( xy + yz + zx = 4 \), \( xyz = 5 \) のとき、\( x^3 + y^3 + z^3 \) の値を求めよ。

解答:

\[ x^3 + y^3 + z^3 = \sigma_1^3 – 3\sigma_1\sigma_2 + 3\sigma_3 = 3^3 – 3 \cdot 3 \cdot 4 + 3 \cdot 5 = 27 – 36 + 15 = 6 \]


以上、基本対称式の定義と性質、具体例と応用について詳しく解説しました。対称式の理解を深めることで、多項式の操作や方程式の根の性質をより体系的に捉えることができるようになります。

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