意外と使える!基本対称式で解く漸化式の徹底解説
このページでは、「基本対称式」を使って「漸化式」を解く方法について、丁寧に解説します。対称式という言葉に少し身構える人もいるかもしれませんが、手順を理解すれば非常に強力な道具になります。
目次
1. 基本対称式とは?
対称式とは、変数の入れ替えによって値が変わらない式のことをいいます。たとえば、
\[ x + y, \quad xy, \quad x^2 + y^2 \]
などは、\(x\) と \(y\) を入れ替えても変わらないので対称式です。
基本対称式とは、対称式の中でも特に基本的な以下の3つを指します(3変数の場合):
- \(e_1 = x + y + z\)
- \(e_2 = xy + yz + zx\)
- \(e_3 = xyz\)
これらを「基本」と呼ぶのは、他のすべての対称式をこの3つで表すことができるからです。
2. 対称式の基本:2次・3次の例
例えば、2次方程式 \[ x^2 – (a + b)x + ab = 0 \] の解は \(x = a, b\) です。この式の係数には、\(a + b\) や \(ab\) といった基本対称式が現れています。
同様に、3次方程式
\[ x^3 – (a + b + c)x^2 + (ab + bc + ca)x – abc = 0 \]の係数にも、3変数の基本対称式 \(e_1, e_2, e_3\) が現れています。
このように、方程式の根に関する情報を基本対称式として扱うことで、漸化式に応用できます。
3. 漸化式に現れる対称式
次のような漸化式を考えます: \[ a_{n+3} = a_{n+2}a_{n+1} – a_n \] このような式は非線形で、一見すると解法が思いつきにくいです。しかし、ある程度の項を計算していくと、ある規則性が現れることがあります。たとえば、3つの項の組に注目し、以下のような「対称式」的な量を定義します。
\[ e_1 = a_n + a_{n+1} + a_{n+2}, \quad e_2 = a_na_{n+1} + a_{n+1}a_{n+2} + a_{n+2}a_n, \quad e_3 = a_na_{n+1}a_{n+2} \]
このように、漸化式に対称式が含まれている場合、基本対称式の組み合わせを用いることで解法が見えてくることがあります。
4. 実例:基本対称式を使った漸化式の解法
例題: \[ a_{n+2} = a_{n+1} + a_n, \quad a_0 = x, \quad a_1 = y \] この漸化式はフィボナッチ数列の一般化です。ここでは数列の項がどのように基本対称式で表せるかを確認してみましょう。
まず、いくつかの項を計算してみます。
- \(a_2 = y + x\)
- \(a_3 = a_2 + a_1 = x + 2y\)
- \(a_4 = a_3 + a_2 = 2x + 3y\)
このように、項が1次式であるため、代数的対称式を使う意味は薄いかもしれませんが、項が積や高次の関数を含む場合に基本対称式の威力が発揮されます。
次のような漸化式を考えます。 \[ a_{n+2} = a_{n+1}a_n \] 初期値を \(a_0 = x, a_1 = y\) とおくと、以下のようになります。
- \(a_2 = xy\)
- \(a_3 = y \cdot xy = xy^2\)
- \(a_4 = xy^2 \cdot xy = x^2y^3\)
このように、一般項は \[ a_n = x^{F_{n-1}} y^{F_n} \] と表せることが分かります。ここで \(F_n\) はフィボナッチ数列です。このような帰納的構造が見えたとき、基本対称式で整理する視点がヒントになることがあります。
5. 応用問題とその解説
応用問題:次の漸化式を満たす数列 \(\{a_n\}\) の一般項を求めよ。 \[ a_{n+3} = a_{n+2}a_{n+1} – a_n \] 初期値として \(a_0 = 1, a_1 = 1, a_2 = 2\) とする。
実際に数値を出してみましょう。
- \(a_3 = 2 \cdot 1 – 1 = 1\)
- \(a_4 = 1 \cdot 2 – 1 = 1\)
- \(a_5 = 1 \cdot 1 – 2 = -1\)
- \(a_6 = 1 \cdot 1 – 1 = 0\)
- \(a_7 = 1 \cdot (-1) – 1 = -2\)
このように、振動するような数列になることがわかります。明確な規則性を見出すのは困難ですが、組み合わせとして基本対称式を定義し、そこに保存される量があるかを調べる方法が考えられます。
たとえば、3項ずつ取り出して \[ e_1^{(n)} = a_n + a_{n+1} + a_{n+2}, \quad e_2^{(n)} = a_n a_{n+1} + a_{n+1} a_{n+2} + a_{n+2} a_n \] などを定義し、変化を調べていく方法があります。
6. まとめと学習のポイント
- 基本対称式は、変数の入れ替えに関して不変な式の中でも特に重要なもの。
- 対称式を理解することで、方程式や漸化式の構造が明確になる。
- 漸化式の中に現れる数式が、実は基本対称式で表されることがあり、解法の鍵になる。
- 計算を繰り返すことで、帰納的構造や保存される式を見つける視点が大切。
高校数学の中でも、発展的な内容ではありますが、大学入試でも役立つテクニックです。しっかり理解しておくと武器になります!