高校生にもわかる!労働供給曲線を徹底解説【経済学の基本】

高校生にもわかる!労働供給曲線を徹底解説【経済学の基本】

目次

1. 労働供給曲線とは?

労働供給曲線(ろうどうきょうきゅうきょくせん)とは、「賃金が変化したときに、どれだけ働くか」という労働者の行動を表したグラフのことです。縦軸に賃金(時給など)、横軸に労働時間(または労働量)をとります。

例えば、ある人が時給1000円で1日5時間働いていたとしましょう。時給が1500円に上がれば「もっと働こう」と思うかもしれません。逆に、「もう十分稼げるから、少し休もう」と思う人もいます。こうした行動の変化を図で表したものが労働供給曲線です。

2. 労働と余暇の選択:基本的な考え方

労働者は限られた時間(たとえば1日24時間)の中で、「労働(働いてお金を稼ぐ)」か「余暇(自由時間を楽しむ)」かを選ばなければなりません。このとき、労働者は次のような目的で行動しています:

  • お金を稼いで消費を楽しみたい(労働)
  • 自由な時間も大切にしたい(余暇)

この選択は経済学で「消費と余暇の選択問題」と呼ばれ、次のような予算制約の下で行われます。

1日を \( T \) 時間としたとき、労働時間を \( h \)、余暇を \( l = T – h \)、時給を \( w \)、非労働所得を \( V \) とすると、消費可能な金額 \( C \) は次のように表せます:

\[ C = w \cdot h + V = w \cdot (T – l) + V \]

この式の意味は、「働いた時間 × 時給」+「働かなくてももらえるお金(非労働所得)」=「使えるお金」ということです。

3. 所得効果と代替効果とは

賃金が上がると、労働時間は増えるでしょうか?減るでしょうか?答えは「人による」のですが、経済学ではこのとき働き方に与える2つの影響を区別して考えます。

① 代替効果(働くインセンティブが強まる)

賃金が上がると、「余暇を楽しむ」ことの機会費用が高くなります。つまり、1時間サボれば前より多くのお金を損するわけです。だから、より多く働こうとする傾向が出ます。これが代替効果です。

② 所得効果(生活が豊かになるので働かなくなる)

一方で、賃金が上がれば同じ生活水準を維持するのに必要な労働時間が減ります。つまり、「もう十分稼いだ」と感じて、労働時間を減らす人もいます。これが所得効果です。

二つの効果の対立

このように、賃金が上がったときには

  • 代替効果 → 労働時間は増える
  • 所得効果 → 労働時間は減る

という2つの逆方向の効果が働きます。どちらが強いかで、労働時間が増えるか減るかが決まるのです。

4. 後方屈折的な労働供給曲線

多くの場合、賃金がある程度までは上がるほど人々はたくさん働きます(代替効果が優勢)。しかし、ある点を超えると、「もうこれ以上働かなくても生活できる」と感じる人が増えて、労働時間を減らすようになります(所得効果が優勢)。

このように、労働供給曲線は最初は右上がりですが、ある点を境に折れ曲がり、右下がりになることがあります。これを後方屈折的な労働供給曲線(こうほうくっせつてき)といいます。

このような形の労働供給曲線は、次のようなグラフになります:

– 賃金が低いとき → もっと稼ぎたいので働く
– 賃金が高くなると → 働きすぎをやめて余暇を増やす

5. 労働供給曲線の実生活での例

この理論は、実際の社会でも見ることができます。いくつかの例を見てみましょう。

主婦・主夫のパート労働

時給が高いと短時間で必要な収入を得られるので、あえて長時間働かず余暇を重視する人もいます。所得効果が大きい例です。

学生のアルバイト

学費や生活費のためにバイトをしている学生は、時給が上がれば「もっと働こう」と思うかもしれません。代替効果が大きい例です。

高齢者の再雇用

退職後に働く高齢者は、健康や余暇を重視する傾向があります。時給が上がっても「もう十分」と感じれば働かないことを選ぶかもしれません。

6. おわりに:なぜ学ぶのか?

労働供給曲線は、「なぜ人は働くのか」「どのくらい働くのか」といった人間の行動を数式と図で理解する手がかりを与えてくれます。これは経済学の中でもとても実用的なテーマであり、労働政策や最低賃金の議論にも関わってきます。

高校生のうちにこの考え方を理解しておくと、社会に出てからの「働き方」や「時間の使い方」を考えるうえで役立ちます。

経済学は現実の生活に密接に関わっている学問です。労働供給曲線の理解を通じて、より深く社会の仕組みを学んでいきましょう。

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