【高校生向け】ゼロからわかる総供給曲線の求め方|経済学の基礎を徹底解説!
この記事では、経済学の中でも特に重要な「総供給曲線(AS曲線)」の求め方について、高校生にもわかりやすく丁寧に解説していきます。ショートラン(短期)とロングラン(長期)の違いや、なぜ曲線の形が異なるのかも具体例を使って説明します。
目次
総供給曲線とは何か?
総供給曲線(Aggregate Supply curve、略してAS曲線)とは、「物価水準(P)」と「産出量(Y)」の関係を示すグラフです。マクロ経済学では、財やサービスの総供給量が物価によってどう変わるかを分析します。
横軸は「実質GDP(産出量 Y)」、縦軸は「物価水準(P)」を取ります。
なぜ短期のAS曲線は右上がり?
短期では、名目賃金や資源価格が固定されていることが多く、企業は物価が上がれば利益が増えるため、生産を増やすインセンティブがあります。これがAS曲線が右上がりになる理由です。
たとえば、物価が10%上がっても、労働者の賃金がすぐには上がらなければ、企業の利益が増えるので、もっと生産しようとします。
これは「価格の粘着性」や「労働市場の硬直性」といった現象に基づいています。
総供給曲線の求め方:基本的アプローチ
総供給曲線を求めるには、次の3ステップが基本です。
- 企業の利潤最大化行動を数式で表現する。
- 労働市場や生産関数から産出量を導く。
- 名目価格と実質変数の関係を整理して、\( Y = f(P) \)の形にする。
以下は基本的なモデルの構造です。
生産関数:
\[ Y = A \cdot N \]
ここで、\( Y \)は産出量、\( A \)は労働生産性(技術レベル)、\( N \)は労働投入量です。
企業の価格設定:
\[ P = (1 + \mu) \cdot W \]
\( P \):物価、\( W \):名目賃金、\( \mu \):マークアップ率(利潤の上乗せ)
実質賃金に基づく労働供給と一致条件を使うことで、\( P \)と\( Y \)の関係を表せます。
長期の総供給曲線(LRAS)の特徴
長期では、名目賃金や資源価格も調整されるため、物価の変化が実質産出量に影響しません。
したがって、長期のAS曲線(LRAS)は垂直になります。これは次のように表せます。
\[ Y = Y^* \]
ここで、\( Y^* \)は自然産出量(潜在GDP)です。完全雇用が実現されている水準です。
具体例:数式からAS曲線を導く
次のようなシンプルなモデルを考えてみましょう:
- 生産関数: \( Y = N \)
- 価格設定: \( P = (1 + \mu) \cdot W \)
- 労働供給: \( N^s = 1 – \frac{W}{P} \)
ここで、実質賃金 \( \frac{W}{P} \) によって労働供給が決まります。実質賃金が高ければ労働者はあまり働きたくないので、労働供給が減ります。
均衡条件として、労働供給と労働需要が一致するとき:
\[ N = 1 – \frac{W}{P} \]
これを変形すると:
\[ \frac{W}{P} = 1 – N = 1 – Y \Rightarrow W = P(1 – Y) \]
これを価格設定式に代入:
\[ P = (1 + \mu) \cdot P(1 – Y) \Rightarrow 1 = (1 + \mu)(1 – Y) \]
解くと:
\[ 1 – Y = \frac{1}{1 + \mu} \Rightarrow Y = 1 – \frac{1}{1 + \mu} \]
このように、物価が変わらない場合、産出量は一定です(LRASの例)。逆に、名目賃金が固定されているとき、\( P \)と\( Y \)の関係が明示され、右上がりの短期AS曲線になります。
まとめ
- 総供給曲線は、物価と実質産出量の関係を示す。
- 短期では右上がりになる理由は、賃金などが固定されているから。
- 長期では、価格や賃金が調整されるため、AS曲線は垂直。
- 数式モデルからもAS曲線を導ける。
総供給曲線は、総需要曲線(AD曲線)と組み合わせることで、経済全体の均衡を考える土台になります。これが理解できれば、インフレや景気変動の理解も深まります。