【徹底解説】supとinfとは何か?数学的直観と厳密な定義から理解しよう
目次
はじめに
数学、とくに解析学や実数論において「上限(supremum)」および「下限(infimum)」という概念は非常に基本的で重要です。これらは、集合が持ちうる最大の上界や最小の下界を指します。極限や連続性、積分などの議論においても不可欠です。
supとinfの定義
上限(supremum, sup)の定義
実数集合 \( A \subset \mathbb{R} \) に対して、\( A \) の上限(supremum)とは、次の2つの条件を満たす実数 \( s \) のことです:
- すべての \( a \in A \) に対して \( a \leq s \)(\( s \) は上界)
- 任意の \( \varepsilon > 0 \) に対して、ある \( a \in A \) が存在して \( s – \varepsilon < a \)(\( s \) より小さい上界は存在しない)
このような数 \( s \) を sup \( A \) または \( \sup A \) と表記します。
下限(infimum, inf)の定義
同様に、\( A \subset \mathbb{R} \) の下限(infimum)は、次の2つの条件を満たす実数 \( t \) のことです:
- すべての \( a \in A \) に対して \( a \geq t \)(\( t \) は下界)
- 任意の \( \varepsilon > 0 \) に対して、ある \( a \in A \) が存在して \( a < t + \varepsilon \)(\( t \) より大きい下界は存在しない)
このような数 \( t \) を inf \( A \) または \( \inf A \) と表記します。
性質と定理
順序性と一意性
- \( \sup A \) や \( \inf A \) は存在すれば一意です。
- 有界上(bounded above)であれば、上限が存在し、有界下(bounded below)であれば、下限が存在します(実数の完備性)。
最大値・最小値との関係
もし \( A \) が最大値(最小値)を持つ場合、その値は上限(下限)と一致します:
- もし \( \max A \) が存在すれば \( \sup A = \max A \)
- もし \( \min A \) が存在すれば \( \inf A = \min A \)
上限・下限と数列の極限
数列 \( (a_n) \) に対して、以下のように定義されることがあります:
- \( \limsup_{n \to \infty} a_n = \inf_{n \in \mathbb{N}} \sup_{k \geq n} a_k \)
- \( \liminf_{n \to \infty} a_n = \sup_{n \in \mathbb{N}} \inf_{k \geq n} a_k \)
これにより、数列の収束・発散の性質を評価できます。
具体例で理解しよう
例1:閉区間
集合 \( A = [1, 3] \) に対して:
- \( \sup A = 3 \)
- \( \inf A = 1 \)
例2:開区間
集合 \( B = (1, 3) \) に対して:
- \( \sup B = 3 \)、ただし 3 は集合に含まれない
- \( \inf B = 1 \)、ただし 1 も含まれない
例3:有界な数列
数列 \( a_n = (-1)^n + \frac{1}{n} \) を考えます:
この数列は 1.5 付近と -1 付近を交互に振動します。すると:
- \( \limsup a_n = 1 \)
- \( \liminf a_n = -1 \)
例4:無限集合
集合 \( C = \left\{ \frac{1}{n} \mid n \in \mathbb{N} \right\} \) に対して:
- \( \sup C = 1 \)
- \( \inf C = 0 \)
ただし \( 0 \) は集合に含まれません。
応用と重要性
解析学での応用
上限・下限の概念は、次のような分野で用いられます:
- 極限の定義(特に上極限・下極限)
- 連続性の判定
- 積分の定義(リーマン積分の下積分・上積分)
最適化理論
最大化・最小化問題において、対象となる関数が最大値・最小値を持たない場合でも、上限・下限が解の候補となります。
証明における役割
極限操作や集合の包含関係に関する証明では、上限や下限の性質がしばしば本質的な道具として使われます。
まとめ
sup(上限)とinf(下限)は、集合がどれだけ「大きいか」「小さいか」を測る基本的な道具です。最大値や最小値と似ていますが、集合に属する必要がないという点で一般的です。実数の完備性に基づいており、解析学を学ぶうえで避けては通れない重要な概念です。
ぜひ、具体例や応用を通して、sup・inf の理解をより深めてください。