数学で重要!「上界・下界」をゼロから徹底解説
目次
上界・下界とは何か?
「上界」「下界」という言葉は、主に数学において集合や数列などの大きさ・順序関係を論じるときに登場します。 ざっくり言えば、上界とは「その集合のすべての要素以上であるような数」、下界とは「すべての要素以下であるような数」のことです。
たとえば、集合 \( A = \{1, 2, 3\} \) に対しては、4 や 5 は上界ですし、0 や −1 は下界です。
形式的な定義
集合 \( A \subseteq \mathbb{R} \) (実数の部分集合)について、以下のように定義されます。
上界(Upper Bound)
実数 \( u \) が集合 \( A \) の上界であるとは、 \[ \forall a \in A,\, a \leq u \] が成り立つことを言います。
下界(Lower Bound)
実数 \( l \) が集合 \( A \) の下界であるとは、 \[ \forall a \in A,\, l \leq a \] が成り立つことを言います。
具体例で学ぶ上界・下界
例1:有限集合の場合
集合 \( A = \{2, 4, 6\} \) の場合:
- 上界の例:6, 7, 100
- 下界の例:2, 1, -5
例2:無限集合の場合
集合 \( B = \{x \in \mathbb{R} \mid 0 < x < 1\} \) の場合:
- 上界の例:1, 2, 100
- 下界の例:0, -1, -100
例3:数列の場合
数列 \( a_n = \frac{1}{n} \)(\( n = 1, 2, 3, \ldots \))に注目すると:
- 上界:1(最大値)
- 下界:0(限りなく近づくが到達しない)
最小上界・最大下界(上限・下限)
最小上界(Least Upper Bound, Supremum)
集合 \( A \) の上界の中で最小のものを最小上界上限(supremum))と呼びます。 記号では、\( \sup A \) と表されます。
最大下界(Greatest Lower Bound, Infimum)
集合 \( A \) の下界の中で最大のものを最大下界下限(infimum))と呼びます。 記号では、\( \inf A \) と表されます。
存在に関する注意
すべての集合が最小上界・最大下界を持つとは限りません。ただし、実数全体 \( \mathbb{R} \) は完備順序体なので、上に有界な集合には必ず最小上界が存在します(同様に下に有界なら最大下界も存在)。
どこで使われるのか?
上界・下界の概念は、多くの数学分野に現れます:
- 解析学:収束、極限、連続性の定義に使用
- 集合論:順序集合の理論で必須
- 実数論:実数の完備性の議論に不可欠
- 最適化理論:制約条件の表現に頻出
- 高校数学:数列や関数の最大・最小の議論
まとめ
本記事では、数学における「上界」「下界」の定義や具体例、さらに「最小上界(上限)」「最大下界(下限)」について詳しく解説しました。 これらの概念は、数の大小関係を扱ううえで基礎中の基礎であり、より深い数学の理解には欠かせません。
特に大学初級〜中級レベルの数学を学ぶ人にとって、集合の性質や数列・関数の解析的理解には不可欠です。しっかり理解しておきましょう。