一度は理解したい!積分の平均値の定理を徹底解説

一度は理解したい!積分の平均値の定理を徹底解説

目次

積分の平均値の定理とは

積分の平均値の定理(Mean Value Theorem for Integrals)は、連続関数の定積分に関する重要な定理であり、「ある点における関数値が、区間全体の平均値に等しくなる」という性質を述べています。

定理の直感的な意味

「関数の平均値」とは何でしょうか?これは、関数 \( f(x) \) のグラフと \( x \)-軸で囲まれる領域の面積を区間の長さで割ったもの、すなわち平均的な関数の高さを意味します。 この平均値と等しい関数値を取る \( x \) が必ず区間内に存在する、というのが積分の平均値の定理の核心です。

定理の形式的な主張

関数 \( f \) が閉区間 \( [a, b] \) 上で連続であるとき、次のような実数 \( c \in [a, b] \) が存在する:

\[ \int_a^b f(x) \, dx = f(c)(b – a) \]

両辺を \( b – a \) で割れば、関数 \( f \) の平均値は

\[ \frac{1}{b – a} \int_a^b f(x) \, dx \]

となり、ある \( c \in [a, b] \) に対して \[ f(c) = \frac{1}{b – a} \int_a^b f(x) \, dx \] が成り立つことになります。

証明

関数 \( f \) が \( [a, b] \) 上で連続であると仮定します。
このとき、積分関数 \[ F(x) = \int_a^x f(t) \, dt \] は連続かつ微分可能であり、微分可能性のある関数 \( F \) についてロルの定理や微分の平均値の定理を用いることができます。

関数 \[ g(x) = F(x) – f(x)(x – a) \] を考え、微分して解析すれば、ある点 \( c \in (a, b) \) で主張される等式が成り立つことを示すことができます。
あるいは、最小値定理・最大値定理により \( f \) が \( [a, b] \) 上で最大値・最小値を持つことを使って次のように挟み撃ちの原理を使った証明も可能です:

\[ m(b – a) \leq \int_a^b f(x) \, dx \leq M(b – a) \] よって中間値の定理より、ある \( c \in [a, b] \) に対して \[ \int_a^b f(x) \, dx = f(c)(b – a) \] を満たす。

具体例

例1:定数関数

\( f(x) = 3 \) を \( [1, 5] \) 上で考えると、 \[ \int_1^5 3 \, dx = 3 \times (5 – 1) = 12 \] となり、任意の \( c \in [1, 5] \) で \[ f(c)(5 – 1) = 3 \times 4 = 12 \] が成り立つ。

例2:一次関数

\( f(x) = 2x \) を \( [0, 2] \) 上で考えると、 \[ \int_0^2 2x \, dx = \left[ x^2 \right]_0^2 = 4 \] 平均値は \[ \frac{1}{2 – 0} \cdot 4 = 2 \] これを満たす \( c \in [0, 2] \) は \[ 2c = 2 \Rightarrow c = 1 \] よって、\( c = 1 \) が条件を満たす点である。

例3:三角関数

\( f(x) = \sin x \) を \( [0, \pi] \) 上で考えると、 \[ \int_0^\pi \sin x \, dx = \left[ -\cos x \right]_0^\pi = -\cos \pi + \cos 0 = 2 \] 平均値は \[ \frac{2}{\pi} \] これを満たす \( c \in [0, \pi] \) に対して \[ \sin c = \frac{2}{\pi} \Rightarrow c = \arcsin\left( \frac{2}{\pi} \right) \] が存在する。

応用と重要性

この定理は以下のような場面で重要な役割を果たします:

  • 平均値の概念の定式化
  • 物理における平均速度や平均加速度の解析
  • 確率密度関数と期待値の関係の導出
  • 数値積分における誤差評価

微分の平均値の定理との関係

微分における平均値の定理(ラグランジュの定理)は関数の変化率に着目するのに対し、積分の平均値の定理は面積(積分値)に着目しています。 両者は一見異なるものに見えますが、どちらも「関数のある点における値が、全体の平均的な変化と一致する点が存在する」という共通の考えに基づいています。

まとめ

積分の平均値の定理は、関数の振る舞いを区間全体の平均という観点から把握するための非常に強力な道具です。 応用範囲も広く、解析学の基本概念を理解するうえで不可欠です。 この定理を通じて、「面積」や「平均」の概念に対する理解をさらに深めていきましょう。

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