広義積分による収束判定

広義積分による収束判定

目次

広義積分とは?

通常の定積分では、積分区間が有限であり、被積分関数も連続であることが前提です。しかし、積分区間が無限であったり、関数が特異点を持つ場合には「広義積分(improper integral)」という拡張概念を用いる必要があります。

広義積分が必要となる背景

以下のような場合、通常の定積分では積分値を定義できません:

  • 積分区間が無限に広がっている:例えば \( \int_1^\infty \frac{1}{x^2} \, dx \)
  • 積分区間の内部または端点で関数が発散する:例えば \( \int_0^1 \frac{1}{\sqrt{x}} \, dx \)

このような場合でも、極限を用いて積分の値を定義することで、数学的に扱えるようになります。

広義積分の定義

積分区間が無限の場合の定義は次の通りです:

\( \int_a^{\infty} f(x) \, dx = \lim_{t \to \infty} \int_a^t f(x) \, dx \)

関数がある点で発散する場合の定義は次の通りです:

\( \int_a^b f(x) \, dx = \lim_{\epsilon \to 0+} \int_{a+\epsilon}^b f(x) \, dx \)(aで特異点)

収束判定法の種類

広義積分が収束するかどうかを判断するための方法はいくつか存在します。主なものは以下の通りです:

比較判定法

他の関数との大小関係を利用して、積分の収束・発散を判定する方法です。

基本的な形:
正の関数 \( f(x), g(x) \) に対して、ある \( a \leq x \) において \( 0 \leq f(x) \leq g(x) \) が成り立つとします。

  • \( \int_a^\infty g(x) \, dx \) が収束すれば、\( \int_a^\infty f(x) \, dx \) も収束
  • \( \int_a^\infty f(x) \, dx \) が発散すれば、\( \int_a^\infty g(x) \, dx \) も発散

例:
\( \int_1^\infty \frac{1}{x^2 + 1} \, dx \) は \( \frac{1}{x^2 + 1} \leq \frac{1}{x^2} \) より、比較判定法で収束がわかります。

極限比較判定法

比較する二つの関数の比の極限を利用します。正の関数 \( f(x), g(x) \) に対して、次が成り立つとします:

\( \lim_{x \to \infty} \frac{f(x)}{g(x)} = c \), ここで \( 0 < c < \infty \)

このとき、\( \int_a^\infty f(x) \, dx \) が収束 ⇔ \( \int_a^\infty g(x) \, dx \) が収束です。

例:
\( f(x) = \frac{1}{x^2 + x} \), \( g(x) = \frac{1}{x^2} \) のとき、

\( \lim_{x \to \infty} \frac{f(x)}{g(x)} = \lim_{x \to \infty} \frac{x^2}{x^2 + x} = 1 \)

よって \( \int_1^\infty \frac{1}{x^2 + x} \, dx \) は収束。

積分判定法(級数との関係)

広義積分と無限級数の収束性は密接に関係しています。関数 \( f(x) \) が単調減少で \( f(x) > 0 \) のとき、次が成立します:

\( \sum_{n=1}^\infty f(n) \) が収束 ⇔ \( \int_1^\infty f(x) \, dx \) が収束

例:
\( f(x) = \frac{1}{x^p} \)(\( p > 0 \))のとき、級数 \( \sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n^p} \) の収束は積分 \( \int_1^\infty \frac{1}{x^p} dx \) の収束と一致します。

  • \( p > 1 \) のとき収束
  • \( p \leq 1 \) のとき発散

実践的な例題

例1:指数関数

\( \int_0^\infty e^{-x} \, dx = \left[ -e^{-x} \right]_0^\infty = 1 \)
よって収束。

例2:発散する例

\( \int_1^\infty \frac{1}{x} \, dx = \lim_{t \to \infty} \ln t = \infty \)
よって発散。

例3:端点で発散するが収束する例

\( \int_0^1 \frac{1}{\sqrt{x}} \, dx = \left[ 2\sqrt{x} \right]_0^1 = 2 \)
よって収束。

例4:比較判定の活用

\( \int_1^\infty \frac{1}{x^2 + 5x + 6} \, dx \)
被積分関数は \( \frac{1}{x^2} \) と同じような振る舞いなので比較判定で収束。

まとめ

  • 広義積分は、通常の定積分では扱えない無限や発散のケースに対応する拡張
  • 極限を利用して積分値を定義する
  • 収束判定には比較判定法、極限比較判定法、積分判定法が有効
  • 多くの応用分野で不可欠なツール

これらの概念をしっかり理解しておくことで、解析学や応用数学、物理学、経済学などさまざまな分野で役立ちます。

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