比較判定法を使った級数の収束判定

比較判定法を使った級数の収束判定

目次

比較判定法とは

比較判定法とは、与えられた無限級数の収束性を、既に収束性が分かっている別の級数と比較することで判断する方法です。特に、項が正の実数で構成される正項級数においてよく用いられます。

無限級数 \( \sum a_n \) の収束性を直接調べるのが難しいときに、ある基準となる級数 \( \sum b_n \) を用いて、「比較」することで収束や発散を示すのがこの手法の肝です。

基本的な考え方

比較判定法には大きく2種類あります。

  1. 不等式による比較判定法(直接比較判定法)
  2. 極限比較判定法

この2つの手法は、対象となる項 \( a_n \) と比較対象 \( b_n \) の大小関係やその極限に基づいて、収束性を間接的に導きます。

不等式による比較判定法

以下のような定理が知られています。

定理(不等式による比較判定)

すべての \( n \) について \( 0 \leq a_n \leq b_n \) が成り立つとする。

  • もし \( \sum b_n \) が収束するならば、\( \sum a_n \) も収束する。
  • もし \( \sum a_n \) が発散するならば、\( \sum b_n \) も発散する。

例1:調和級数との比較

次の級数の収束性を調べましょう。

\[ \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{n + n^2} \]

分母に注目すると、\( n + n^2 = n(1 + n) > n^2 \) より、 \[ \frac{1}{n + n^2} < \frac{1}{n^2} \] です。

ここで、\( \sum \frac{1}{n^2} \) は収束することで知られているため、比較判定法により \[ \sum \frac{1}{n + n^2} \] も収束すると結論づけられます。

極限比較判定法

次のような定理が成り立ちます。

定理(極限比較判定)

正項級数 \( \sum a_n \)、\( \sum b_n \) に対し、 \[ \lim_{n \to \infty} \frac{a_n}{b_n} = c \] が存在し、\( 0 < c < \infty \) のとき、両方の級数は収束・発散について同じ振る舞いをします。

例2:極限比較で調べる

次の級数の収束性を判定します。

\[ \sum_{n=1}^{\infty} \frac{n^2 + 3}{n^3 + n} \]

比較対象として \( b_n = \frac{1}{n} \) をとると、 \[ \frac{a_n}{b_n} = \frac{n^2 + 3}{n^3 + n} \cdot n = \frac{n^3 + 3n}{n^3 + n} \to 1 \quad (n \to \infty) \]

よって \( \sum a_n \) は \( \sum \frac{1}{n} \) と同様に発散します。

具体例で学ぶ比較判定法

例3:指数関数との比較

\[ \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{2^n + n} \]

比較対象として \( b_n = \frac{1}{2^n} \) をとると、 \[ \frac{1}{2^n + n} < \frac{1}{2^n} \] です。また、\( \sum \frac{1}{2^n} \) は幾何級数で収束するので、元の級数も収束します。

例4:対数関数との比較

\[ \sum_{n=2}^{\infty} \frac{1}{n \log n} \]

これは重要な級数で、発散することが知られています。したがって、これと比較して収束・発散を議論できます。

例えば、 \[ \sum \frac{1}{n (\log n)^2} \] は、元の級数よりも項が小さいため、比較により収束することがわかります。

よくある間違いと注意点

  • 比較対象の級数の収束性を確実に把握しておくこと。
  • 不等式の向きに注意すること。
  • 極限比較では、極限が 0 または ∞ の場合は適用できない。
  • 項が負になる場合は、比較判定法をそのまま使えないことがある。

まとめ

比較判定法は、難しい無限級数の収束性を、既知の級数と比較することで判断できる非常に強力な手法です。直接比較と極限比較の使い分けをしっかり理解し、多様な級数に対応できるようにしておきましょう。

この判定法は解析学や応用数学、理工学系の分野でも頻繁に活用されるため、例題を通じて実践的に身につけることが重要です。

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