極座標変換をわかりやすく徹底解説
目次
極座標変換とは
極座標変換とは、通常のデカルト座標(直交座標)\((x, y)\)を、原点からの距離 \(r\) と角度 \(\theta\) を使った極座標 \((r, \theta)\) に変換する操作です。 多変数積分や物理学において、円や扇形などの対称性を持つ問題で計算を簡単にするために使われます。
極座標では、原点を中心にして位置を「距離」と「角度」で表現します。このため、円や円弧などの領域を扱う際には、直交座標よりも表現が自然で、積分も簡単になることがあります。
基本的な変換式
デカルト座標 \((x, y)\) から極座標 \((r, \theta)\) への変換式は次の通りです:
- \( x = r \cos \theta \)
- \( y = r \sin \theta \)
逆に、極座標からデカルト座標への変換は以下の通りです:
- \( r = \sqrt{x^2 + y^2} \)
- \( \theta = \tan^{-1}(y/x) \)(ただし、第2象限・第3象限では補正が必要)
ヤコビアンと面積要素
変数変換において重要なのは、積分時の「面積要素」の変換です。極座標では、微小面積要素が以下のように変換されます:
\[ dx\,dy = \left| \frac{\partial(x, y)}{\partial(r, \theta)} \right| dr\,d\theta = r\,dr\,d\theta \]
この \(r\) はヤコビアン(変換の拡大率)から導かれたものであり、極座標で積分を行う際には必ずこの係数を掛ける必要があります。
計算例:二重積分での極座標変換
以下の積分を考えます:
\[ \iint_D (x^2 + y^2)\, dx\,dy \]
ここで、領域 \(D\) は原点中心の半径1の円(単位円)とします。極座標変換を用いてこの積分を計算します。
1. 座標の変換
まず、\(x^2 + y^2 = r^2\) なので、被積分関数は \(r^2\) に変換されます。
2. 面積要素の変換
前述の通り、\(dx\,dy = r\,dr\,d\theta\) なので、積分は以下のようになります:
\[ \int_0^{2\pi} \int_0^1 r^2 \cdot r \,dr\,d\theta = \int_0^{2\pi} \int_0^1 r^3 \,dr\,d\theta \]
3. 積分の計算
まず \(r\) に関する積分:
\[ \int_0^1 r^3 \,dr = \left[ \frac{r^4}{4} \right]_0^1 = \frac{1}{4} \]
次に \(\theta\) に関する積分:
\[ \int_0^{2\pi} d\theta = 2\pi \]
よって、全体の積分結果は:
\[ \frac{1}{4} \cdot 2\pi = \frac{\pi}{2} \]
応用例:非円形領域への対応
円形以外の領域でも極座標変換は有効です。例えば、扇形領域(半径 \(r \in [0, 2]\), 角度 \(\theta \in [0, \pi/4]\))での積分を考えてみましょう。
\[ \iint_D e^{-(x^2 + y^2)} \,dx\,dy \]
極座標に変換すると、\(x^2 + y^2 = r^2\) なので:
\[ \int_0^{\pi/4} \int_0^2 e^{-r^2} \cdot r \,dr\,d\theta \]
このように、被積分関数が \(x\) や \(y\) の関数であっても、極座標への変換によって積分が簡単になるケースが多く存在します。
まとめ
- 極座標変換は、円形・放射対称な問題において計算を簡略化する強力なツール。
- 変換式:\(x = r\cos\theta,\; y = r\sin\theta\)
- 面積要素は \(dx\,dy = r\,dr\,d\theta\)
- ヤコビアンを忘れずに!積分には必ず \(r\) を掛ける。
- 非円形領域にも適用可能で、応用範囲は広い。
極座標変換は数学・物理・工学などあらゆる分野で頻出する概念です。しっかり理解しておくことで、複雑な問題も見通しよく扱えるようになります。