ナッシュ社会的厚生関数をわかりやすく徹底解説!高校生でもスッと理解できる応用例つき
目次
- ナッシュ社会的厚生関数とは?
- なぜナッシュ型の厚生関数を使うのか?
- ナッシュ社会的厚生関数の数式と意味
- 具体例で考える:2人の効用から最適な配分を導く
- 他の厚生関数との違い
- 応用:資源配分や政策評価にどう使える?
- まとめ
ナッシュ社会的厚生関数とは?
ナッシュ社会的厚生関数とは、個人の効用(満足度)を掛け合わせて社会全体の厚生を評価する方法です。アメリカの数学者ジョン・ナッシュ(ゲーム理論の父とも呼ばれる)が提案しました。
一般的な厚生関数は、複数人の効用を足し合わせたり、最小の効用を重視したりするものがありますが、ナッシュ型は「掛け算」によって評価します。
なぜナッシュ型の厚生関数を使うのか?
ナッシュ型を使う理由はいくつかありますが、特に重要なのは「バランスの取れた配分を促す」ことです。例えば、ある人の効用が極端に小さいと、掛け算の結果も小さくなるため、全体としてその人の効用を上げようとするインセンティブが働きます。
つまり、誰か1人でも「非常に不幸」な状態は、全体の厚生に強く悪影響を与えるのです。これにより、ある程度の平等が自動的に実現されます。
ナッシュ社会的厚生関数の数式と意味
ナッシュ型の社会的厚生関数は、次のように表されます:
\[ W = \prod_{i=1}^{n} U_i \]ここで、
- \( W \):社会的厚生
- \( U_i \):個人 \( i \) の効用
- \( n \):社会にいる人数
例えば、2人社会(AさんとBさん)で、それぞれの効用が \( U_A = 5 \), \( U_B = 3 \) なら、ナッシュ型の社会的厚生は:
\[ W = 5 \times 3 = 15 \]具体例で考える:2人の効用から最適な配分を導く
ある商品をAさんとBさんに分配したいとしましょう。合計で10単位の商品があり、それをどう分ければナッシュ型の社会的厚生が最大になるでしょうか?
効用関数を次のようにします:
- Aさん:\( U_A = \sqrt{x} \)(x単位受け取るとき)
- Bさん:\( U_B = \sqrt{10 – x} \)
ナッシュ型の厚生関数は:
\[ W(x) = \sqrt{x} \cdot \sqrt{10 – x} \]これを最大化するには、次のように微分を使います:
\[ W(x) = \sqrt{x(10 – x)} = \sqrt{10x – x^2} \]最大化のために導関数を取り、ゼロとなる点を求めます:
つまり、Aさんに5単位、Bさんにも5単位与えるのがナッシュ厚生関数を最大にします。
他の厚生関数との違い
以下にナッシュ型と他の社会的厚生関数の比較を示します:
- 功利主義的厚生関数(加法型): \[W = U_1 + U_2 + \dots + U_n\] 個人の効用の合計を最大化。
- ロールズ型(最小効用最大化): \[W = \min\{U_1, U_2, \dots, U_n\}\] 最も不幸な人の効用を重視。
- ナッシュ型: \[W = \prod_{i=1}^{n} U_i\] 全体のバランスを取りつつ、最低効用にも配慮。
応用:資源配分や政策評価にどう使える?
ナッシュ社会的厚生関数は、以下のような現実の場面で応用できます:
- 資源配分の決定: 限られた予算や土地を複数の人・地域に配るときに、公平性を保ちながら効率的な配分を探す手段。
- 福祉政策の評価: 政策が「社会的に望ましいかどうか」を判断する際、ナッシュ型を使うと貧困層の改善も反映されやすい。
- 交渉や取引: 各プレイヤーの効用をかけ合わせて交渉結果を最適化するナッシュ交渉解の基礎。
まとめ
ナッシュ社会的厚生関数は、個人の効用の積を使って社会全体の厚生を評価する方法です。加法型と違って、誰か一人が非常に不幸な場合、それが全体の厚生に強く影響するため、平等性への配慮も自動的に組み込まれます。
高校生でも理解できるように工夫すれば、経済学の面白さや論理の美しさに触れられるはずです。大学の入試や論述問題でも、応用できる重要な考え方なので、ぜひしっかりと理解しておきましょう。