ベクトルの一次独立と一次従属
目次
一次独立・一次従属とは
ベクトルの集合 \( \{ \vec{v}_1, \vec{v}_2, \ldots, \vec{v}_n \} \) が 一次独立であるとは、以下の条件を満たすときです:
\[ c_1 \vec{v}_1 + c_2 \vec{v}_2 + \cdots + c_n \vec{v}_n = \vec{0} \] を満たすスカラー \( c_1, c_2, \ldots, c_n \) がすべて 0 であるとき。
逆に、すべてが 0 でない係数 \( c_i \) を持つ組み合わせで上記の等式が成り立つなら、 ベクトルたちは一次従属です。
一次独立・従属が意味すること
一次独立であるということは、どのベクトルも他のベクトルの線形結合で表すことができないという意味です。 一方で、一次従属である場合は、あるベクトルが他のベクトルの線形結合になっているということです。
一次独立性はベクトル空間の次元や、基底の選択に大きく関わってきます。
2次元での具体例
例1:一次独立なベクトル
\[ \vec{v}_1 = \begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix},\quad \vec{v}_2 = \begin{pmatrix} 0 \\ 1 \end{pmatrix} \] この2つのベクトルは互いに直交しており、どちらももう一方のスカラー倍ではないため一次独立です。
例2:一次従属なベクトル
\[ \vec{v}_1 = \begin{pmatrix} 2 \\ 4 \end{pmatrix},\quad \vec{v}_2 = \begin{pmatrix} 1 \\ 2 \end{pmatrix} \] これは \( \vec{v}_1 = 2 \vec{v}_2 \) なので、一次従属です。
3次元での具体例
例3:一次独立な3つのベクトル
\[ \vec{v}_1 = \begin{pmatrix} 1 \\ 0 \\ 0 \end{pmatrix},\quad \vec{v}_2 = \begin{pmatrix} 0 \\ 1 \\ 0 \end{pmatrix},\quad \vec{v}_3 = \begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ 1 \end{pmatrix} \] これは3次元空間の標準基底であり、互いに一次独立です。
例4:一次従属な3つのベクトル
\[ \vec{v}_1 = \begin{pmatrix} 1 \\ 2 \\ 3 \end{pmatrix},\quad \vec{v}_2 = \begin{pmatrix} 2 \\ 4 \\ 6 \end{pmatrix},\quad \vec{v}_3 = \begin{pmatrix} 3 \\ 6 \\ 9 \end{pmatrix} \] すべて \( \vec{v}_1 \) のスカラー倍であるため、完全に一次従属です。
代数的な確認方法
ベクトルが一次独立かどうかを調べるには、以下のように連立方程式を解く方法があります:
与えられたベクトルを列ベクトルとした行列 \( A \) を作り、方程式 \( A \vec{c} = \vec{0} \) を解きます。
解がゼロベクトルのみであれば一次独立。そうでなければ一次従属です。
また、列ベクトルの個数が行の数より多い場合は、必ず一次従属になります(基本定理)。
幾何的なイメージ
2次元では、2つのベクトルが平行でないなら一次独立、平行なら一次従属です。
3次元では、3つのベクトルがすべて同一平面上に存在するなら一次従属です。 それぞれが異なる方向を持って空間を張っている場合にのみ一次独立になります。
まとめ
- 一次独立:他のベクトルの線形結合で表せない
- 一次従属:他のベクトルの線形結合で表せる
- 一次独立性は空間の次元や基底の概念と深く関わる
- 代数的には連立方程式や行列の階数で確認可能
- 幾何的には「方向の重なり」の有無で判断可能