高校数学で理解する!攪乱順列(完全順列)の応用例題 徹底解説
目次
攪乱順列(完全順列)とは?
攪乱順列(または完全順列)とは、「すべての要素がもとの位置にいないような順列」のことです。 たとえば、1〜3の番号が付いたカードがあり、それを並べ替えたとき、どの番号のカードももとの位置に戻らないような並べ方の数を考えます。
これは「固定点を持たない順列」とも言い換えられます。
基本的な例題
例:3人の生徒A, B, Cに、それぞれ1つずつプレゼントを配るとき、自分のプレゼントを受け取らない配り方は何通りあるか?
AがAのプレゼントを受け取らず、BもBのプレゼントを受け取らず、CもCのプレゼントを受け取らないような配り方を考えます。
このような配り方の総数は、攪乱順列の問題になります。
3つの要素の攪乱順列の数 \( D_3 \) は、次のようにして求めます:
\[ D_3 = 3! \left(1 – \frac{1}{1!} + \frac{1}{2!} – \frac{1}{3!}\right) = 6 \left(1 – 1 + \frac{1}{2} – \frac{1}{6}\right) = 6 \left(\frac{1}{3}\right) = 2 \]よって、条件を満たす配り方は 2通り です。
攪乱順列の一般式
攪乱順列の数 \( D_n \) は、次の漸化式または公式で求められます:
- 漸化式: \[ D_n = (n-1)(D_{n-1} + D_{n-2}) \quad \text{ただし } D_1 = 0, D_2 = 1 \]
- 一般公式: \[ D_n = n! \left(1 – \frac{1}{1!} + \frac{1}{2!} – \frac{1}{3!} + \cdots + (-1)^n \frac{1}{n!}\right) \]
この式は「交代級数」になっており、nが大きくなると、\(\frac{D_n}{n!}\) は自然対数の逆数 \( \frac{1}{e} \approx 0.3679 \) に近づいていきます。
応用例題とその解説
例題1:5人の参加者にそれぞれ異なる名前札を渡すとき、自分の名前札を受け取らないような配り方は何通りあるか?
これは攪乱順列 \( D_5 \) を求める問題です。
\[ D_5 = 5! \left(1 – \frac{1}{1!} + \frac{1}{2!} – \frac{1}{3!} + \frac{1}{4!} – \frac{1}{5!} \right) = 120 \left(1 – 1 + 0.5 – 0.1667 + 0.0417 – 0.0083\right) = 120 \times 0.3667 \approx 44 \]答え:44通り
例題2:6人の秘書にそれぞれ異なる手紙をランダムに配布するとき、誰も自分宛の手紙を受け取らない確率は?
この問題では、攪乱順列の数 \( D_6 \) を全体の順列数 \( 6! = 720 \) で割って確率を出します。
\[ D_6 = \left\lfloor \frac{720}{e} + 0.5 \right\rfloor = 265 \] \[ P = \frac{D_6}{6!} = \frac{265}{720} \approx 0.368 \]よって、約36.8%の確率で誰も自分の手紙を受け取らないことになります。
練習問題
- 4人の人にプレゼントを配るとき、誰も自分のプレゼントを受け取らないような配り方は何通りあるか?
- 8人にランダムにカードを配るとき、自分のカードを誰も受け取らない確率を求めよ(小数第4位まで)。
- 7つの荷物を間違って配達したい。すべて誤配される配達の方法は何通りあるか?
まとめ
- 攪乱順列(完全順列)は「固定点を持たない順列」。
- 一般公式では交代級数を使い、\(\frac{D_n}{n!} \approx \frac{1}{e}\)。
- 応用問題として、確率の問題や暗号、誤配のモデルにも登場する。
攪乱順列は「ただの順列」ではなく、条件付き順列の代表例であり、数学オリンピックや大学入試でも扱われることのある重要なトピックです。ぜひマスターしておきましょう!