2変数・多変数におけるテイラー展開の徹底解説
2変数・多変数におけるテイラー展開の徹底解説
テイラー展開は、関数をある点での値とその周りでの微分係数を使って近似する強力な手法です。この手法は1変数だけでなく、2変数や多変数にも適用可能であり、微分可能な関数をより簡単に扱うための重要なツールとなります。本記事では、2変数および多変数におけるテイラー展開の基本から応用まで詳しく解説します。
目次
テイラー展開の定義
テイラー展開とは、関数をその周りの点で多項式として近似する方法です。1変数の場合、テイラー展開は次のように表されます。
1変数のテイラー展開は、ある点 \( a \) での関数 \( f(x) \) の展開を次の式で表します:
$$ f(x) = f(a) + f'(a)(x – a) + \frac{f”(a)}{2!}(x – a)^2 + \frac{f^{(3)}(a)}{3!}(x – a)^3 + \cdots $$ここで、\( f'(a), f”(a), \dots \) は関数 \( f(x) \) の \( a \) における1階、2階、…の導関数です。テイラー展開は、このように関数を点 \( a \) の周りで近似するために使われます。
2変数におけるテイラー展開の例
2変数の場合、関数 \( f(x, y) \) のテイラー展開は次のように表されます。関数 \( f(x, y) \) を点 \( (a, b) \) で展開する場合、次の式が成り立ちます:
$$ f(x, y) = f(a, b) + \frac{\partial f}{\partial x}(a, b)(x – a) + \frac{\partial f}{\partial y}(a, b)(y – b) + \frac{1}{2}\left( \frac{\partial^2 f}{\partial x^2}(a, b)(x – a)^2 + 2\frac{\partial^2 f}{\partial x \partial y}(a, b)(x – a)(y – b) + \frac{\partial^2 f}{\partial y^2}(a, b)(y – b)^2 \right) + \cdots $$ここでは、1階および2階の偏導関数が登場します。テイラー展開により、関数を多項式として近似することができ、数値計算の際に非常に有用です。
例:2変数関数のテイラー展開
関数 \( f(x, y) = e^{x + y} \) のテイラー展開を点 \( (0, 0) \) で行ってみましょう。
まず、\( f(x, y) \) の値および偏導関数を求めます:
$$ f(0, 0) = e^{0 + 0} = 1 $$ $$ \frac{\partial f}{\partial x}(x, y) = e^{x + y}, \quad \frac{\partial f}{\partial y}(x, y) = e^{x + y} $$ $$ \frac{\partial^2 f}{\partial x^2}(x, y) = e^{x + y}, \quad \frac{\partial^2 f}{\partial x \partial y}(x, y) = e^{x + y}, \quad \frac{\partial^2 f}{\partial y^2}(x, y) = e^{x + y} $$したがって、点 \( (0, 0) \) でのテイラー展開は次のようになります:
$$ f(x, y) = 1 + (x + y) + \frac{1}{2}(x^2 + 2xy + y^2) + \cdots $$多変数におけるテイラー展開の例
多変数の場合、関数 \( f(x_1, x_2, \dots, x_n) \) のテイラー展開は次のように拡張されます。
一般的な \( n \) 変数のテイラー展開は次の形で表されます:
$$ f(x_1, x_2, \dots, x_n) = f(a_1, a_2, \dots, a_n) + \sum_{i=1}^{n} \frac{\partial f}{\partial x_i}(a_1, a_2, \dots, a_n)(x_i – a_i) + \frac{1}{2}\sum_{i=1}^{n} \sum_{j=1}^{n} \frac{\partial^2 f}{\partial x_i \partial x_j}(a_1, a_2, \dots, a_n)(x_i – a_i)(x_j – a_j) + \cdots $$これにより、\( n \) 次元空間内での関数の近似を得ることができます。
テイラー展開の応用
テイラー展開は、数値解析や最適化問題、物理学のモデルなど多くの分野で応用されています。例えば、ニュートン法を使った最適化では、目的関数をテイラー展開して近似し、次のステップを決定します。また、数値積分においてもテイラー展開を用いて高精度な近似が可能です。
まとめ
テイラー展開は、関数をある点での微分情報を用いて近似する手法であり、2変数および多変数の場合でも非常に有用です。展開の過程で導かれる多項式は、特に数値計算において役立ちます。様々な応用があり、数学の多くの分野で利用されています。