【高校数学・数論】平方剰余の仕組みと応用を例題で徹底マスター!
平方剰余は、合同式やモジュロ計算の知識を活用して数の性質を見抜く重要な考え方です。本記事では平方剰余の基本から応用までを、高校生にもわかりやすく丁寧に解説します。
目次
平方剰余とは?
平方剰余とは、ある数 \( a \) がある法 \( p \) において、何らかの整数 \( x \) を二乗して得られる剰余、つまり
\[ x^2 \equiv a \pmod{p} \]を満たすような \( x \) が存在するとき、\( a \) を \( p \) に関する平方剰余といいます。
逆に、そのような \( x \) が存在しない場合、\( a \) を平方非剰余といいます。
例えば、法 \( 7 \) における平方剰余を考えてみましょう。まずは \( 0 \leq x < 7 \) の範囲で \( x^2 \mod 7 \) を計算します:
- \( 0^2 \equiv 0 \pmod{7} \)
- \( 1^2 \equiv 1 \pmod{7} \)
- \( 2^2 \equiv 4 \pmod{7} \)
- \( 3^2 \equiv 2 \pmod{7} \)
- \( 4^2 \equiv 2 \pmod{7} \)
- \( 5^2 \equiv 4 \pmod{7} \)
- \( 6^2 \equiv 1 \pmod{7} \)
よって、平方剰余となる数は \( \{0,1,2,4\} \) です。それ以外の \( \{3,5,6\} \) は平方非剰余です。
基本例題と考え方
例題1
次のうち、法 \( 11 \) における平方剰余をすべて求めよ。
解答:
\[ x^2 \mod 11 \quad \text{for } x = 0,1,…,10 \]- \( 0^2 \equiv 0 \)
- \( 1^2 \equiv 1 \)
- \( 2^2 \equiv 4 \)
- \( 3^2 \equiv 9 \)
- \( 4^2 \equiv 5 \)
- \( 5^2 \equiv 3 \)
- \( 6^2 \equiv 3 \)
- \( 7^2 \equiv 5 \)
- \( 8^2 \equiv 9 \)
- \( 9^2 \equiv 4 \)
- \( 10^2 \equiv 1 \)
したがって、平方剰余は \( \{0,1,3,4,5,9\} \)。
例題2
法 \( 13 \) において \( x^2 \equiv 5 \pmod{13} \) を満たす \( x \) は存在するか?
解答: \( x = 0 \) から \( x = 12 \) まで計算:
- \( x^2 \mod 13 = \{0,1,4,9,3,12,10,10,12,3,9,4,1\} \)
5 は含まれないので、\( x^2 \equiv 5 \pmod{13} \) を満たす整数 \( x \) は存在しない。したがって 5 は平方非剰余。
ルジャンドル記号と平方剰余
素数 \( p \) に対して、整数 \( a \) が \( p \) に関する平方剰余かどうかを判定するために、ルジャンドル記号という記号を使います:
\[ \left( \frac{a}{p} \right) = \begin{cases} 1 & (a \text{ は } p \text{ に関する平方剰余}) \\ -1 & (a \text{ は } p \text{ に関する平方非剰余}) \\ 0 & (p \mid a) \end{cases} \]これは簡潔な表記法として非常に有用です。判定にはオイラーの定理を利用します。
オイラーの基準
奇素数 \( p \) に対して、
\[ \left( \frac{a}{p} \right) \equiv a^{\frac{p-1}{2}} \pmod{p} \]を使って判定可能です。
例題3
ルジャンドル記号 \( \left( \frac{3}{7} \right) \) を計算せよ。
解答:
\[ 3^{(7-1)/2} = 3^3 = 27 \equiv 6 \pmod{7} \]6 は \( -1 \pmod{7} \) なので
\[ \left( \frac{3}{7} \right) = -1 \]よって、3 は 7 に対する平方非剰余である。
平方剰余の相互法則
平方剰余の性質を深く知るうえで欠かせないのが平方剰余の相互法則です。
奇素数 \( p \), \( q \) に対して:
\[ \left( \frac{p}{q} \right)\left( \frac{q}{p} \right) = (-1)^{\frac{(p-1)(q-1)}{4}} \]この法則は、どちらの分子・分母で見ても平方剰余かどうかが対称的に判断できることを意味します。
例題4
\( \left( \frac{3}{11} \right) \) を平方剰余の相互法則で求めよ。
まずは右辺:
\[ (-1)^{\frac{(3-1)(11-1)}{4}} = (-1)^{\frac{2 \cdot 10}{4}} = (-1)^5 = -1 \]よって、
\[ \left( \frac{3}{11} \right) = -\left( \frac{11}{3} \right) \]ここで \( 11 \equiv 2 \pmod{3} \) なので、
\[ \left( \frac{11}{3} \right) = \left( \frac{2}{3} \right) = -1 \]したがって、
\[ \left( \frac{3}{11} \right) = -(-1) = 1 \]つまり 3 は 11 に関する平方剰余。
応用例題と発展的考察
例題5
次の合同方程式を解け:
\[ x^2 \equiv 10 \pmod{13} \]解答:
まず \( x = 0 \) から \( x = 12 \) まで調べる:
\[ x^2 \mod 13 = \{0,1,4,9,3,12,10,10,12,3,9,4,1\} \]10 が含まれているので平方剰余。対応する \( x \) は 6, 7。
よって解は:
\[ x \equiv 6, 7 \pmod{13} \]例題6
平方剰余であることを使って、次の式の解の存在を判定せよ:
\[ x^2 + x + 1 \equiv 0 \pmod{7} \]解答:
判別式 \( D = b^2 – 4ac = 1^2 – 4 \cdot 1 \cdot 1 = -3 \equiv 4 \pmod{7} \)。
法 7 において 4 は平方剰余なので解あり。
対応する平方根は \( x^2 \equiv 4 \Rightarrow x \equiv \pm 2 \pmod{7} \)。
よってこの二次方程式にも解が存在する。
まとめ
- 平方剰余とは \( x^2 \equiv a \pmod{p} \) の解が存在するかを問う概念。
- ルジャンドル記号とオイラーの基準で効率的に判定可能。
- 平方剰余の相互法則により、より複雑な剰余の性質も解析可能。
- 高校数学でも十分に活用できる応用的な知識。
本記事では、平方剰余の基礎から応用、そして理論的背景までを一気に解説しました。数学オリンピックや大学入試問題でも出題される重要なテーマですので、ぜひ自分でも問題を作って試してみましょう!