グラフでわかる!消費者余剰と生産者余剰の基本と応用
目次
消費者余剰・生産者余剰とは?
経済学では「余剰(surplus)」という概念がとても重要です。特に市場における「取引の得」を表す2つの概念が「消費者余剰」と「生産者余剰」です。
消費者余剰とは?
消費者余剰とは、消費者が「支払ってもよいと思っていた価格」と「実際に支払った価格」の差から得られる満足度の合計です。
たとえば、ある商品に1000円払ってもよいと思っていた人が、実際には700円で購入できたとします。このとき、
\[ \text{消費者余剰} = 1000 – 700 = 300 (\text{円}) \]この300円がその人の「得(満足)」になります。
生産者余剰とは?
一方、生産者余剰は「売ってもよいと思っていた最低価格(限界費用)」と「実際に売った価格」の差です。
たとえば、500円で作った商品を700円で売ったとすると、
\[ \text{生産者余剰} = 700 – 500 = 200 (\text{円}) \]これがその生産者の利益の一部になります(純利益ではありません)。
グラフで理解する余剰
余剰は「需要と供給のグラフ」を使って視覚的に理解できます。
横軸に数量、縦軸に価格を取ると、上向きの供給曲線(右上がり)と下向きの需要曲線(右下がり)が交差します。
均衡価格と余剰の図示
- 消費者余剰:需要曲線と価格線に挟まれた三角形の面積
- 生産者余剰:価格線と供給曲線に挟まれた三角形の面積
均衡価格 \( P^* \) および均衡数量 \( Q^* \) のとき、余剰の式は以下のようになります:
消費者余剰:
\[ CS = \frac{1}{2} \times (最大支払価格 – P^*) \times Q^* \]生産者余剰:
基本例題:価格が変わると余剰はどう変わる?
問題
需要曲線: \( P = 100 – Q \)
供給曲線: \( P = 20 + Q \)
この市場における消費者余剰と生産者余剰を求めましょう。
解答
まず、需要=供給から均衡点を求めます:
\[ 100 – Q = 20 + Q \Rightarrow 2Q = 80 \Rightarrow Q^* = 40 \] \[ P^* = 100 – 40 = 60 \]次に、余剰を計算します。
消費者余剰:
\[ CS = \frac{1}{2} \times (100 – 60) \times 40 = \frac{1}{2} \times 40 \times 40 = 800 \]生産者余剰:
\[ PS = \frac{1}{2} \times (60 – 20) \times 40 = \frac{1}{2} \times 40 \times 40 = 800 \]このとき、社会的余剰(全体の得)は \( 800 + 800 = 1600 \) です。
応用例題:課税・補助金が余剰に与える影響
問題:消費税が導入されたら?
前問と同じ市場で、政府が消費税10円を課したとき、余剰はどう変わるでしょうか?
解答
買い手が払う価格を \( P_b \)、売り手が受け取る価格を \( P_s \) とします。税は \( P_b – P_s = 10 \)。
新しい均衡は以下の式から求めます:
\[ 100 – Q = P_b,\quad P_s = 20 + Q,\quad P_b – P_s = 10 \] 代入して解くと: \[ 100 – Q – (20 + Q) = 10 \Rightarrow 80 – 2Q = 10 \Rightarrow Q = 35 \] \[ P_b = 100 – 35 = 65,\quad P_s = 20 + 35 = 55 \]余剰の再計算:
消費者余剰:
\[ CS = \frac{1}{2} \times (100 – 65) \times 35 = \frac{1}{2} \times 35 \times 35 = 612.5 \]生産者余剰:
\[ PS = \frac{1}{2} \times (55 – 20) \times 35 = \frac{1}{2} \times 35 \times 35 = 612.5 \]税収:
\[ T = 10 \times 35 = 350 \]社会的余剰:
\[ 612.5 + 612.5 + 350 = 1575 \]元の1600に比べて損失(死荷重)は \( 1600 – 1575 = 25 \) です。
まとめ
- 消費者余剰:買い手の得。需要曲線と価格の差の面積。
- 生産者余剰:売り手の得。価格と供給曲線の差の面積。
- 余剰の合計=社会的余剰。
- 税や補助金は、余剰に影響し、効率性の損失(死荷重)を生む可能性がある。
このように「余剰」という考え方は、経済の効率や制度の影響を測る上で非常に大切です。グラフと数式をセットで覚えることで、経済学の問題に強くなれます。