【徹底解説】アイゼンシュタインの定理とは?高校生向け例題でわかりやすく理解!
目次
アイゼンシュタインの定理とは
アイゼンシュタインの定理(Eisensteinの定理)は、多項式が既約(因数分解できない)であることを判定する非常に強力な定理です。高校数学ではあまり目立ちませんが、数オリ(数学オリンピック)や大学入試問題、また大学数学で登場します。
定理は一見複雑ですが、「ある素数に注目すれば、因数分解できないことがすぐにわかる」という点で非常に有用です。
なぜ使う?定理の意義
因数分解できないこと、つまり「既約性」を示すには、通常すべての因数分解の可能性を潰す必要があります。しかし、アイゼンシュタインの定理を使えば、素数に関する条件を満たしているだけで既約性を一発で判断できます。
この定理は特に整数係数の多項式に対して有効で、試験でも「この定理を知っているか」で差がつく場面が多いです。
アイゼンシュタインの定理の条件
次のような整数係数の多項式を考えます:
\( f(x) = a_n x^n + a_{n-1} x^{n-1} + \cdots + a_1 x + a_0 \)
このとき、以下の条件をすべて満たす素数 \( p \) が存在すれば、\( f(x) \) は有理数係数で既約です。
- \( p \) は \( a_0, a_1, \ldots, a_{n-1} \) のすべての係数を割り切る(つまり、これらはすべて \( p \) の倍数)
- \( p \) は先頭係数 \( a_n \) を割り切らない(つまり \( p \nmid a_n \))
- \( p^2 \) は定数項 \( a_0 \) を割り切らない(つまり \( p^2 \nmid a_0 \))
この3つをすべて満たせば、\( f(x) \) は有理数係数では既約です。
例題1:素直な適用例
次の多項式を考えましょう:
\( f(x) = x^3 + 6x^2 + 12x + 8 \)
素数 \( p = 2 \) に注目します。
- \( 6, 12, 8 \) はすべて 2 で割り切れる → OK
- 先頭係数 1 は 2 で割り切れない → OK
- 定数項 8 は \( 2^2 = 4 \) では割り切れる → NG!
この場合、条件の3つ目が満たされていないので、アイゼンシュタインの定理は使えません。
では別の例を見ましょう。
\( g(x) = x^3 + 5x^2 + 10x + 15 \)
素数 \( p = 5 \) を考えると:
- \( 5x^2, 10x, 15 \) → すべて 5 で割り切れる → OK
- 先頭係数 1 は 5 で割り切れない → OK
- 定数項 15 は \( 5^2 = 25 \) では割り切れない → OK
3条件すべて満たすので、\( g(x) \) は有理数係数で既約です!
例題2:変形が必要なケース
次の多項式を見てください:
\( h(x) = x^4 + 4x^3 + 6x^2 + 4x + 1 \)
これは見覚えがある形ですね。実はこれは \( (x+1)^4 \) なので因数分解可能です。しかし、もし次のような多項式があったとしましょう:
\( f(x) = x^4 + 10x^3 + 35x^2 + 50x + 24 \)
一見してアイゼンシュタインの定理が使えなさそうですが、変形してみましょう。
変数変換 \( x = y + 1 \) を試してみます:
\( f(y + 1) = (y + 1)^4 + 10(y + 1)^3 + 35(y + 1)^2 + 50(y + 1) + 24 \)
展開して整理すると、係数が変わり、新しい形の多項式になります。それに対してアイゼンシュタインの定理が使える場合があります。このように、変数変換を用いると定理が使えることがあります。
使えない例と注意点
注意すべき点は次の通りです:
- 整数係数でない場合、定理は使えません。
- どんな素数を使っても3条件をすべて満たせないときは、他の方法で既約性を調べる必要があります。
- 既約とわかっても、それが「実数係数」「複素数係数」での既約とは限りません。
つまり、万能ではないものの「うまくハマれば非常に強力」な道具です。
まとめ
アイゼンシュタインの定理は、以下のようにまとめられます。
- 整数係数の多項式の既約性を判定する定理
- ある素数 \( p \) に関する3条件を満たすことで既約とわかる
- 変数変換で定理が使える形にすることも可能
定理を知っているだけで多くの問題が一瞬で解けることもあるので、数学を深く学ぶ高校生にはぜひ覚えておいてほしい内容です。