1の三乗根オメガで因数分解を極める!計算の裏技を徹底解説
目次
1の三乗根オメガとは?
数学において「1の三乗根(さんじょうこん)」とは、「三乗すると1になる複素数」のことです。具体的には次の3つの数が挙げられます:
\[ 1,\quad \omega,\quad \omega^2 \]
このうち、\(\omega\)(オメガ)は次のように定義されます:
\[ \omega = -\frac{1}{2} + \frac{\sqrt{3}}{2}i \]
これは複素平面上で 120° の回転を意味する数です。図で表すと正三角形の頂点に相当します。
オメガの性質と基本計算
オメガには非常に重要な性質がいくつかあります:
- \(\omega^3 = 1\)
- \(1 + \omega + \omega^2 = 0\)
- \(\omega \cdot \omega^2 = 1\)
これらを使うことで、複雑に見える式をスッキリ計算・因数分解できるようになります。
オメガの共役
\(\omega^2\) は \(\omega\) の複素共役です:
\[ \omega^2 = -\frac{1}{2} – \frac{\sqrt{3}}{2}i \]
基本演算の例
例えば、次の計算はどうでしょう:
\[ (1 + \omega)^2 \]
展開すると:
\[ 1 + 2\omega + \omega^2 \]
ここで \(1 + \omega + \omega^2 = 0\) を使うと:
\[ 1 + 2\omega + \omega^2 = (1 + \omega + \omega^2) + \omega = 0 + \omega = \omega \]
このように、数式が驚くほどシンプルに変形されます。
因数分解への応用:三次式の例
次の三次式を因数分解してみましょう:
\[ x^3 + y^3 + z^3 – 3xyz \]
これは有名な公式を使うと、次のように変形できます:
\[ x^3 + y^3 + z^3 – 3xyz = (x + y + z)(x + \omega y + \omega^2 z)(x + \omega^2 y + \omega z) \]
この因数分解はオメガの性質を知っていないと導けませんが、知っていれば非常に強力です。
具体例
\[ x = 1,\quad y = 2,\quad z = -3 \]
左辺:
\[ 1^3 + 2^3 + (-3)^3 – 3 \cdot 1 \cdot 2 \cdot (-3) = 1 + 8 – 27 + 18 = 0 \]
右辺:
\[ (1 + 2 – 3)(1 + \omega \cdot 2 + \omega^2 \cdot (-3))(1 + \omega^2 \cdot 2 + \omega \cdot (-3)) = 0 \cdot (\cdots) \cdot (\cdots) = 0 \]
このように、確かに成り立っていることが確認できます。
因数分解のパターン練習
練習1
次の式を因数分解してください:
\[ x^3 + y^3 + z^3 \]
条件として:
- \(x + y + z = 0\)
このとき:
\[ x^3 + y^3 + z^3 = 3xyz \]
逆に、\(x^3 + y^3 + z^3 – 3xyz = 0\) なら、\(x + y + z = 0\) も成り立つ可能性が高いです。
練習2
\[ a^3 + b^3 + c^3 – 3abc \]
の因数分解を実際に計算してみましょう。具体的に \[ a = 2,\quad b = 3,\quad c = -5 \] として代入してみると面白いです。
オメガの計算を使う意味と意義
高校ではあまり強調されませんが、オメガのような「複素数の根」を使うことは、代数学の深い理解に繋がります。特にガロア理論や群論では重要な役割を果たします。
高校数学の範囲でも、三次方程式の因数分解を美しく処理するための秘密兵器として役立ちます。
このような高度なテクニックを早い段階で身につけておくことで、将来的な数学力に大きな差がつくことは間違いありません。