高校生でもわかる!クールノー均衡の完全ガイド
目次
クールノー均衡とは?
クールノー均衡(Cournot Equilibrium)は、ミクロ経済学における「寡占市場(企業が少数しか存在しない市場)」で用いられる理論モデルです。特に、生産量で競争する企業が互いの戦略を意識して行動する際の均衡点を示します。1838年にフランスの経済学者アントワーヌ・クールノーによって提案されました。
背景:市場と企業の行動
完全競争市場では、無数の企業が存在し、1社の行動が市場価格に影響を与えることはありません。しかし、寡占市場では企業の数が限られており、各企業の意思決定が市場全体に大きな影響を与えます。
クールノー・モデルでは、企業が自社の生産量を決めるときに、相手企業の生産量を所与と考えて行動します。これは「戦略的相互依存」と呼ばれます。
クールノー・モデルの基本構造
クールノー・モデルの典型的な前提は次のとおりです:
- 企業は同質な製品を販売する。
- 価格は市場全体の供給量に応じて決まる(下向きの需要曲線)。
- 各企業は相手の生産量を所与と仮定して、自社の利潤を最大化する生産量を選ぶ。
- 同時に意思決定が行われ、均衡に達する。
このとき、各企業が他社の行動を予測して最善の戦略を選んでいるため、ナッシュ均衡の一種と考えられます。
数式で理解するクールノー均衡
2社(企業Aと企業B)が市場で競争しているとします。それぞれの生産量を \( q_1 \)、\( q_2 \) とします。市場価格は総供給量 \( Q = q_1 + q_2 \) によって決まり、価格関数は以下のように表されます:
\( P(Q) = a – bQ = a – b(q_1 + q_2) \)
企業i(i=1,2)の利潤関数は次のようになります(費用関数は簡単のため定数 \( c \) のみと仮定):
\( \pi_i = (P – c)q_i = (a – b(q_1 + q_2) – c)q_i \)
企業1の利潤を最大化するため、\( q_1 \) について微分します:
\( \frac{d\pi_1}{dq_1} = a – bq_2 – 2bq_1 – c = 0 \)
これを整理して企業1の「反応関数」を求めます:
\( q_1 = \frac{a – c – bq_2}{2b} \)
同様に、企業2の反応関数は:
\( q_2 = \frac{a – c – bq_1}{2b} \)
この2式を連立して解くと、クールノー均衡における生産量が求まります:
\( q_1^* = q_2^* = \frac{a – c}{3b} \)
均衡価格は:
\( P^* = a – b(q_1^* + q_2^*) = a – b\left(\frac{2(a – c)}{3b}\right) = \frac{a + 2c}{3} \)
具体例:2社の市場での競争
例えば、需要関数が \( P = 100 – Q \)(つまり \( a = 100 \), \( b = 1 \))、限界費用 \( c = 10 \) とします。
このとき、均衡生産量は:
\( q_1^* = q_2^* = \frac{100 – 10}{3 \cdot 1} = \frac{90}{3} = 30 \)
市場全体の供給量は \( Q = 60 \)、価格は:
\( P = 100 – 60 = 40 \)
1社あたりの利潤は:
\( \pi = (40 – 10) \cdot 30 = 900 \)
このようにして、具体的な値を使うと、モデルの仕組みがより明確に理解できます。
クールノー均衡の意味と限界
クールノー均衡は、企業が互いの行動を考慮して生産量を調整する現実的なモデルです。しかし、次のような限界もあります:
- 価格ではなく「数量」で競争する点は、すべての業界に適用できるわけではない。
- 企業が同時に行動するという仮定は、実際には順番に意思決定が行われる場合がある(スタッケルベルクモデルなど)。
- 情報が完全であると仮定しているため、実際の不確実性には対応できない。
それでも、クールノー均衡は経済学の基礎を学ぶ上で非常に有用な出発点です。
まとめ
クールノー均衡は、企業が「数量」で競争する寡占市場のモデルです。相手企業の行動を予測しつつ、自社の利潤最大化を目指す戦略的な意思決定がポイントです。高校生でも、基本的な数式と具体例を通じて、その構造を理解することができます。
将来、経済学や経営学を深く学びたいと考えている人にとって、クールノー均衡は重要な概念の1つです。ぜひこの機会にしっかりと理解しておきましょう。