高校生でもわかる!逆選択とレモン市場の経済学

高校生でもわかる!逆選択とレモン市場の経済学

高校生でもわかる!逆選択とレモン市場の経済学

目次

1. 逆選択とは?

逆選択(Adverse Selection)とは、売り手と買い手の間で情報の量や質に差があるときに、 質の悪い商品やサービスばかりが市場に残ってしまう現象をいいます。

情報の非対称性(Information Asymmetry)が原因です。売り手が商品の質をよく知っていて、 買い手はそれを知らないとき、買い手は「全部同じくらいの質だろう」と予想して平均的な価格しか出しません。 すると、質の高い商品を売る人は「この価格じゃ割に合わない」と市場から撤退してしまい、 結果的に質の悪いものだけが市場に残るのです。

2. レモン市場とは?

レモン市場とは、経済学者ジョージ・アカロフが提唱した概念で、逆選択が発生する典型的な市場です。 「レモン」とは、英語の俗語で「欠陥車」のことを指します。

例えば、中古車市場を考えてみましょう。 中古車の売り手は、その車が「アタリ(良い車)」か「ハズレ(レモン)」かを知っていますが、 買い手はそれを見ただけでは判断できません。

買い手は「この車はアタリかもしれないし、レモンかもしれない」と考えて、平均的な価格を提示します。 ところが、アタリ車の持ち主は「こんな安値では売れない」と市場から撤退し、 結局レモン車ばかりが市場に残るという事態になります。

3. 数式で見る逆選択

仮に市場に「アタリ(良い車)」が半分、「レモン(悪い車)」が半分あるとしましょう。 アタリの価値は100万円、レモンの価値は50万円だとします。

買い手は車の質を見極められないので、平均的な価値である

$$ V = 0.5 \times 100 + 0.5 \times 50 = 75 \, \text{万円} $$

の価格しか出そうとしません。

このとき、アタリ車の所有者は「100万円の価値があるのに、75万円では売れない」と判断し、 市場から撤退します。すると、残るのはレモン車だけになります。

買い手がそれに気づくと「もう全部レモンかもしれない」と考え、さらに価格を引き下げることになり、 最終的に市場が機能しなくなってしまいます。

4. 他の具体例

逆選択は中古車市場に限りません。さまざまな市場や状況で発生します。

  • 医療保険市場: 健康な人は保険に入らなくなり、病気のリスクが高い人ばかりが加入し、保険料が高騰。
  • 雇用市場: 企業が応募者の能力を見極められず、優秀な人材が低評価で埋もれてしまう。
  • オンライン取引: 買い手が出品者を信用できず、良質な商品を買い控える。

5. 逆選択への対策

逆選択を防ぐためには、情報の非対称性を減らす工夫が必要です。

  • 保証制度: 「○ヶ月以内に故障すれば無料修理」のような保証があると、買い手の安心感が高まります。
  • 第三者の評価: 車検証や専門家の鑑定書、消費者レビューなどが役立ちます。
  • ブランド信頼: 有名な販売業者や大手企業による販売では信頼性が高くなります。
  • シグナリング: 売り手が質の高さを「証拠」で示すこと(例:学歴や資格など)も対策の一つです。

6. まとめ

逆選択とレモン市場は、情報の非対称性がもたらす経済的な問題を理解するうえで非常に重要な概念です。 このような状況では、見えない情報が取引の成否を大きく左右します。

経済活動をスムーズに行うためには、情報の透明性を高める努力や制度づくりが不可欠であることがわかります。 現代の社会では、インターネットのレビューや評価システムなど、新たな解決策も登場しています。

このように、経済学は私たちの日常生活とも深く関わっており、知っておくととても役立ちます。

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