正弦定理とは?意味・証明・応用まで徹底解説【高校数学】
目次
正弦定理の意味と式
正弦定理は、任意の三角形において辺の長さと角度の関係を表す非常に重要な定理です。特に斜辺がない三角形(直角三角形以外)でも角度と辺の関係が扱えるため、実用性が高いです。
三角形 \(ABC\) において、各辺と対角を次のようにおきます:
- 辺 \(a = BC\)
- 辺 \(b = CA\)
- 辺 \(c = AB\)
- 角 \(A, B, C\) はそれぞれ辺 \(a, b, c\) に対応する角
このとき、正弦定理は次のように表されます:
\[ \frac{a}{\sin A} = \frac{b}{\sin B} = \frac{c}{\sin C} = 2R \]
ここで \(R\) は三角形ABCの外接円の半径です。
正弦定理の証明(3通り)
証明①:高さを使う方法(初学者向け)
△ABCで、点Aから辺BCに垂線を下ろし、その足をDとします。このとき高さを \(h\)、BCを \(a\)、角Bを \(\angle B\)、角Cを \(\angle C\) とすると、
- 高さ \(h = b\sin C\)
- 高さ \(h = c\sin B\)
よって、 \[ b\sin C = c\sin B \Rightarrow \frac{b}{\sin B} = \frac{c}{\sin C} \] 同様の操作で、残りの式も導出でき、全体として \[ \frac{a}{\sin A} = \frac{b}{\sin B} = \frac{c}{\sin C} \] となります。
証明②:外接円と中心角の性質を使う
三角形ABCを外接円に内接させ、角Aに対する弧を考えます。円周角の定理により、
\[ \sin A = \frac{a}{2R} \Rightarrow \frac{a}{\sin A} = 2R \] 同様に他の辺も成り立つため、 \[ \frac{a}{\sin A} = \frac{b}{\sin B} = \frac{c}{\sin C} = 2R \]
証明③:ベクトルを用いた方法(発展)
座標平面上で三角形をベクトルで表し、ベクトルの外積の大きさから三角形の面積を考えます。 \[ S = \frac{1}{2}| \vec{b} \times \vec{c} | = \frac{1}{2}bc\sin A \] 同様に \[ S = \frac{1}{2}ac\sin B = \frac{1}{2}ab\sin C \] よって \[ \frac{a}{\sin A} = \frac{b}{\sin B} = \frac{c}{\sin C} \]
正弦定理の応用例
例1:角度と1辺から他の辺を求める
三角形ABCで、\(A = 30^\circ\)、\(B = 45^\circ\)、\(a = 10\) のとき、辺 \(b\) を求めたい。 \[ \frac{a}{\sin A} = \frac{b}{\sin B} \Rightarrow \frac{10}{\sin 30^\circ} = \frac{b}{\sin 45^\circ} \Rightarrow \frac{10}{0.5} = \frac{b}{\frac{\sqrt{2}}{2}} \Rightarrow 20 = \frac{b}{\frac{\sqrt{2}}{2}} \] \[ b = 20 \cdot \frac{\sqrt{2}}{2} = 10\sqrt{2} \]
例2:測量などでの応用
ある地点から見える2つの山の角度とその間の距離が分かっているときに、山までの距離を測定する場面などで使用されます。
例3:外接円の半径を求める
三角形ABCで、辺 \(a = 12\)、角 \(A = 60^\circ\) のとき、外接円の半径 \(R\) を求める。 \[ \frac{a}{\sin A} = 2R \Rightarrow \frac{12}{\sin 60^\circ} = 2R \Rightarrow \frac{12}{\frac{\sqrt{3}}{2}} = 2R \Rightarrow R = \frac{12}{\frac{\sqrt{3}}{2}} \cdot \frac{1}{2} = \frac{12}{\sqrt{3}} = 4\sqrt{3} \]
まとめ
正弦定理は、どの三角形にも適用でき、角と辺の比を通して三角形を解く強力なツールです。特に、測量、天文学、ナビゲーションなど様々な分野で実用されます。この記事では、3通りの証明と具体的な応用例を紹介しました。しっかりと理解しておくことで、数学の応用力が大きく高まります。