意外と違う?一様収束と各点収束を完全マスター
目次
一様収束と各点収束の定義
まずは関数列 \( \{f_n\} \) の収束について、2つの異なる収束概念を定義します。
各点収束(Pointwise convergence)
関数列 \( \{f_n\} \) が関数 \( f \) に各点収束するとは、任意の \( x \in D \) に対して、
$$ \lim_{n \to \infty} f_n(x) = f(x) $$
が成り立つことを言います。 このとき、点ごとに収束を確認していく必要があります。
一様収束(Uniform convergence)
関数列 \( \{f_n\} \) が関数 \( f \) に一様収束するとは、任意の \( \varepsilon > 0 \) に対して、ある自然数 \( N \) が存在し、
$$ \forall n \geq N, \ \forall x \in D, \ |f_n(x) – f(x)| < \varepsilon $$
が成り立つことを言います。つまり、「どの点でも同じ速さで」収束します。
一様収束と各点収束の違い
両者の最大の違いは、収束の速さが点によって異なるか否かです。
- 各点収束では、点によって収束の速さが違ってよい。
- 一様収束では、すべての点で一様な速さで収束しなければならない。
数学的な意味だけでなく、解析学での応用にも大きな違いをもたらします。 例えば、
- 連続関数列の極限が連続関数になるためには、一様収束が必要。
- 積分や微分との交換可能性にも関係する。
具体例による比較
例1:各点収束するが一様収束しない例
定義域 \( D = [0,1] \) 上で、関数列を次のように定義します:
$$ f_n(x) = x^n $$
このとき、関数列 \( \{f_n\} \) は次のように収束します:
- \( x \in [0,1) \) のとき、\( \lim_{n \to \infty} x^n = 0 \)
- \( x = 1 \) のとき、\( x^n = 1 \)
したがって、
$$ f(x) = \begin{cases} 0 & (0 \leq x < 1) \\ 1 & (x = 1) \end{cases} $$
これは各点収束しますが、一様収束しません。 なぜなら、どんなに \( n \) を大きくしても、1 に近い点では \( f_n(x) \) が 1 に近づき、0 との誤差が一定以上あるからです。
例2:一様収束する関数列
次のような関数列を考えます:
$$ f_n(x) = \frac{x}{n}, \quad x \in [0,1] $$
このとき、
$$ \lim_{n \to \infty} f_n(x) = 0 $$
であり、しかも
$$ |f_n(x) – 0| = \left| \frac{x}{n} \right| \leq \frac{1}{n} $$
よって、どの \( x \in [0,1] \) に対しても、誤差は \( \frac{1}{n} \) 以下で、一様収束します。
応用と重要性
連続性の保存
各点収束では、関数列 \( \{f_n\} \) が連続であっても、極限関数 \( f \) が連続になるとは限りません。 しかし一様収束であれば、連続関数の列の極限も連続になります。
積分と微分との交換
- 一様収束が成り立つ場合、積分と極限操作を交換できます。
- 微分との交換には、さらに条件が必要ですが、一様収束は基本的な前提の1つです。
解析学的応用
フーリエ級数やテイラー展開の収束性解析、数値解析における近似理論など、多くの場面で一様収束が重要になります。
まとめ
- 各点収束は、点ごとに収束を確認する。
- 一様収束は、全体で「一様に」収束する。
- 一様収束の方が強い概念であり、関数の性質の保存に優れる。
- 数学の厳密な議論や応用において、一様収束は重要な役割を果たす。