広義一様収束(コンパクト一様収束)をゼロから完全理解!徹底解説

広義一様収束(コンパクト一様収束)をゼロから完全理解!徹底解説

目次

広義一様収束とは

広義一様収束(またはコンパクト一様収束)とは、関数列の収束の一種で、「定義域の任意のコンパクト集合上で一様収束する」ことを意味します。 この概念は、定義域全体では一様収束しないが、任意のコンパクト部分集合上では収束するような場合に重要です。

形式的定義

定義域を距離空間 \( X \)、値域を距離空間 \( Y \) とし、関数列 \( \{f_n\} \) を \( f_n: X \to Y \) とします。このとき、

関数列 \( \{f_n\} \) が \( f \) に広義一様収束(コンパクト一様収束)すると言うのは、任意のコンパクト集合 \( K \subset X \) に対して、\( f_n \to f \) が \( K \) 上で一様収束することを意味します。

すなわち、

任意のコンパクト集合 \( K \subset X \) と任意の \( \varepsilon > 0 \) に対して、ある自然数 \( N \) が存在し、すべての \( n \geq N \) およびすべての \( x \in K \) に対して

\[ d(f_n(x), f(x)) < \varepsilon \]

が成り立つことを言います。

一様収束との関係

一様収束は、定義域全体で誤差の上限が一様に小さくなる収束の仕方です。一方、広義一様収束は、全体ではなく任意のコンパクト集合上でその性質を持つ収束です。

したがって、

  • \( f_n \to f \) が \( X \) 上で一様収束する場合、当然ながら任意のコンパクト集合 \( K \subset X \) 上でも一様収束します。したがって、広義一様収束でもあります。
  • しかし逆は成り立ちません。つまり、広義一様収束していても一様収束しているとは限りません。

例として、次節で詳しく見ていきます。

具体例と直感

例1:広義一様収束するが一様収束しない関数列

関数列 \( f_n: \mathbb{R} \to \mathbb{R} \) を次のように定義します:

\[ f_n(x) = \frac{x}{1 + nx^2} \]

この関数列は点ごとには 0 に収束します。実際、

  • 任意の \( x \in \mathbb{R} \) に対して、\( f_n(x) \to 0 \) が成り立ちます。
  • 任意のコンパクト集合(たとえば \( [-R, R] \))に対しては、誤差は一様に小さくなります。よって、広義一様収束します。
  • しかし、\( \sup_{x \in \mathbb{R}} |f_n(x)| \) は 0 に収束しない(最大値は \( \frac{1}{2\sqrt{n}} \) で、無限遠点で達成される)ため、\( \mathbb{R} \) 全体では一様収束しません。

例2:一様収束する関数列

\[ f_n(x) = \frac{1}{n} \sin(x) \] は、どのコンパクト集合でも一様収束するだけでなく、全体でも一様収束します。

位相空間論との関係

広義一様収束は位相空間論的には「コンパクト開位相(compact-open topology)」の収束と深く関係しています。

特に、次のような点で重要です:

  • 写像空間 \( C(X, Y) \) において、広義一様収束はコンパクト開位相での収束に一致します。
  • 関数空間の連続性やコンパクト性を議論する際、この収束概念は不可欠です。

応用と重要性

広義一様収束は実解析・関数解析・微分方程式など、様々な分野で重要です。以下は応用例です:

  • 近似理論:関数列がある関数を「良い近似」としてどの程度再現しているかを測る際に使われます。
  • 偏微分方程式:広義一様収束する解列が、弱解の極限として扱えるかどうかの判定に利用されます。
  • 関数空間の収束判定:Arzelà–Ascoliの定理などで、関数列の収束の一条件として登場します。

まとめ

  • 広義一様収束は、任意のコンパクト集合上で一様収束することを意味します。
  • 一様収束よりも弱いが、点収束よりも強い収束概念です。
  • 数学的厳密性を保ちつつ、現実的な関数の近似や解析にとって有用です。
  • 位相空間論、解析学、数値解析など広範な分野で使われます。
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