【高校数学】追い出しの原理を完全理解!定義・証明・活用例を徹底解説
目次
追い出しの原理とは
追い出しの原理(または「はさみうちの原理」「サンドイッチ定理」)は、数学の極限や不等式において用いられる重要な手法です。 ある数列や関数の値が、他の2つの数列や関数の間に挟まれている場合に、その極限を推定・決定するために使われます。
形式的には次のように表現されます。
ある実数列 \( a_n, b_n, c_n \) が存在して、ある定数 \( L \) に対して
- すべての \( n \) に対して \( a_n \leq b_n \leq c_n \) が成り立つ
- \( \lim_{n \to \infty} a_n = \lim_{n \to \infty} c_n = L \)
が成り立つならば、
\[ \lim_{n \to \infty} b_n = L \]
追い出しの原理の証明
追い出しの原理の証明は、\(\varepsilon\)-\(\delta\) 論法を用いて厳密に示されます。
仮定: \(\lim_{n \to \infty} a_n = \lim_{n \to \infty} c_n = L\), かつ \(a_n \leq b_n \leq c_n\) がすべての \(n\) に対して成り立つ。
任意の \(\varepsilon > 0\) に対して、ある \(N_1\), \(N_2\) が存在して、
\[ n \geq N_1 \Rightarrow |a_n – L| < \varepsilon,\quad n \geq N_2 \Rightarrow |c_n - L| < \varepsilon \]このとき、\(n \geq N = \max(N_1, N_2)\) において、
\[ L – \varepsilon < a_n \leq b_n \leq c_n < L + \varepsilon \]つまり、
\[ |b_n – L| < \varepsilon \]よって、\(\lim_{n \to \infty} b_n = L\) が示されました。
基本的な使用例
以下の数列の極限を求めます:
\[ b_n = \frac{\sin n}{n} \]
\(\sin n\) は \([-1, 1]\) の範囲にあるため、
\[ -1 \leq \sin n \leq 1 \Rightarrow -\frac{1}{n} \leq \frac{\sin n}{n} \leq \frac{1}{n} \]ここで、左右の数列 \(\frac{1}{n}\) と \(-\frac{1}{n}\) は共に 0 に収束するので、追い出しの原理により、
\[ \lim_{n \to \infty} \frac{\sin n}{n} = 0 \]数列の極限への応用
次のような数列の極限に追い出しの原理を使ってみましょう:
\[ b_n = n \cdot \sin\left(\frac{1}{n}\right) \]ここで、\(\sin x \leq x\)、かつ \(\sin x \geq x – \frac{x^3}{6}\) という不等式を使うと、
\[ n \left( \frac{1}{n} – \frac{1}{6n^3} \right) \leq n \cdot \sin\left(\frac{1}{n}\right) \leq n \cdot \frac{1}{n} \] \[ 1 – \frac{1}{6n^2} \leq b_n \leq 1 \]左右の数列の極限はともに1に収束するので、追い出しの原理により
\[ \lim_{n \to \infty} n \cdot \sin\left(\frac{1}{n}\right) = 1 \]不等式証明への応用
次に、関数の不等式証明への応用例を見てみます。
例えば、次の極限を考えます:
\[ \lim_{x \to 0} \frac{\sin x}{x} \]この証明には三角形の面積を使う幾何学的証明もありますが、追い出しの原理を使っても証明できます。
単位円を用いて以下の不等式が得られます:
\[ \cos x \leq \frac{\sin x}{x} \leq 1 \quad (0 < x < \frac{\pi}{2}) \]ここで、\(x \to 0\) のとき \(\cos x \to 1\)。したがって、
\[ \lim_{x \to 0} \cos x = \lim_{x \to 0} 1 = 1 \Rightarrow \lim_{x \to 0} \frac{\sin x}{x} = 1 \]まとめ
- 追い出しの原理は、数列や関数が他の関数に挟まれているとき、その極限を決定する強力な道具です。
- 極限の厳密な証明だけでなく、直感的な理解にもつながります。
- 三角関数、数列、不等式など広範囲で応用されます。
数学の論理構成を理解し、追い出しの原理を自在に使えるようになることで、より複雑な証明や問題にも対応できるようになります。