包絡線とは何か?定義と求め方を徹底解説

包絡線とは何か?定義と求め方を徹底解説

目次

包絡線とは

包絡線(ほうらくせん、envelope)とは、曲線の族(family of curves)に対して、それらの曲線が「接する」ように形成される曲線のことです。

もう少し具体的に言えば、曲線の族 \( f(x, t) = 0 \)(ここで \( t \) はパラメータ)に対して、すべての曲線に接する曲線が存在する場合、それを包絡線と呼びます。

つまり、包絡線は「ある曲線族のすべてのメンバーに対して接線として振る舞う」曲線です。

包絡線の具体例①:直線族の包絡線

まずは簡単な例から考えてみましょう。次のような直線の族を考えます:

\[ y = tx + \frac{1}{t} \]

これは \( t \) をパラメータとする無限個の直線からなる族です。異なる \( t \) に対して異なる直線が得られます。

この直線族の包絡線を求めるためには、次の2つの条件式を解きます:

  1. 曲線族の式: \( F(x, y, t) = y – tx – \frac{1}{t} = 0 \)
  2. パラメータ微分条件: \( \frac{\partial F}{\partial t} = -x + \frac{1}{t^2} = 0 \)

2番目の式から、接点となる \( x \) の条件が得られます: \[ x = \frac{1}{t^2} \]

これを元の曲線族の式に代入すると: \[ y = t \cdot \frac{1}{t^2} + \frac{1}{t} = \frac{1}{t} + \frac{1}{t} = \frac{2}{t} \]

したがって、包絡線は \[ x = \frac{1}{t^2},\quad y = \frac{2}{t} \] という媒介変数表示になります。これを \( t \) で消去すれば、 \[ t = \frac{2}{y} \Rightarrow x = \frac{1}{t^2} = \frac{y^2}{4} \] すなわち、包絡線は放物線: \[ x = \frac{y^2}{4} \] であることがわかります。

包絡線の具体例②:放物線族の包絡線

次に、もう少し複雑な例として、放物線族 \[ y = x^2 + 2ax + a^2 \] を考えます。この式は、すべての放物線が点 \(( -a, 0 )\) を通ることを示しています。

この族の包絡線を求めるために、まず次のように整理します:

\[ F(x, y, a) = y – x^2 – 2ax – a^2 = 0 \]

次に偏微分条件を加えます: \[ \frac{\partial F}{\partial a} = -2x – 2a = 0 \Rightarrow x = -a \]

これを元の式に代入して: \[ y = (-a)^2 + 2a(-a) + a^2 = a^2 – 2a^2 + a^2 = 0 \]

したがって、包絡線は \( y = 0 \) という直線、すなわち x軸そのものです。

包絡線の求め方(一般的な手順)

包絡線を求める標準的な手順は以下の通りです:

  1. 曲線族の方程式を \( F(x, y, t) = 0 \) の形にする
  2. パラメータ \( t \) で偏微分して \( \frac{\partial F}{\partial t} = 0 \) を作る
  3. この2つの方程式を連立して \( t \) を消去する

この方法は、解析幾何や最適化問題で頻繁に使われます。

包絡線の応用分野

包絡線は多くの数学的・応用的分野で登場します。以下はその代表例です:

  • 最適化理論:ラグランジュ未定乗数法などで現れる制約条件の解析に。
  • 経済学:効用関数や費用関数の「下からの包絡」や「上からの包絡」など。
  • 光学:反射や屈折で形成されるカスタロープ(波面の包絡)。
  • 制御理論:可制御領域の境界解析。
  • グラフィックデザイン:曲線や輪郭をなめらかにつなぐ補間。

まとめ

包絡線とは、ある曲線族に接するような新しい曲線であり、数学的に明確な定義と手順によって求めることができます。

微分や最適化、さらには経済学や光学といった応用分野においても非常に重要な役割を果たしており、理解しておく価値のある概念です。

ぜひ、自分で様々な曲線族の包絡線を手を動かして計算し、直感を深めてみてください。

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