【完全入門】転置行列とは?定義から性質・具体例まで徹底解説!
転置行列の定義
転置行列とは、ある行列の行と列を入れ替えた行列のことです。
行列 \( A \) の転置行列を \( A^{\mathrm{T}} \)(または \( A’ \))と表記します。
行列 \( A \) が \( m \times n \) 行列(つまり、行数が \( m \)、列数が \( n \))であるとき、 \( A^{\mathrm{T}} \) は \( n \times m \) 行列になります。
具体的には、要素 \( a_{ij} \) が行列 \( A \) の \( i \) 行 \( j \) 列にある場合、 転置行列 \( A^{\mathrm{T}} \) においてはその要素は \( j \) 行 \( i \) 列に配置されます。
数式で表すと、次のようになります: \[ (A^{\mathrm{T}})_{ij} = A_{ji} \]
記法と読み方
転置行列は主に以下のように記述されます:
- \( A^{\mathrm{T}} \):一般的な転置の表記
- \( A’ \):一部の文献やソフトウェアではこの記法が使われます
具体例
例1:
行列 \( A \) が次のように与えられているとします: \[ A = \begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 \\ 4 & 5 & 6 \end{pmatrix} \] この転置行列 \( A^{\mathrm{T}} \) は: \[ A^{\mathrm{T}} = \begin{pmatrix} 1 & 4 \\ 2 & 5 \\ 3 & 6 \end{pmatrix} \]
例2:
行列 \( B \) が: \[ B = \begin{pmatrix} 7 & 8 \\ 9 & 10 \\ 11 & 12 \end{pmatrix} \] のとき、転置行列 \( B^{\mathrm{T}} \) は: \[ B^{\mathrm{T}} = \begin{pmatrix} 7 & 9 & 11 \\ 8 & 10 & 12 \end{pmatrix} \]
転置行列の基本的な性質
転置行列にはいくつかの重要な性質があります。
- 再転置の性質: \[ (A^{\mathrm{T}})^{\mathrm{T}} = A \] 転置を二回行うと元の行列に戻ります。
- 和の転置: \[ (A + B)^{\mathrm{T}} = A^{\mathrm{T}} + B^{\mathrm{T}} \] 同じ形の行列の和の転置は、それぞれの転置の和と等しいです。
- スカラー倍の転置: \[ (cA)^{\mathrm{T}} = cA^{\mathrm{T}} \] スカラー \( c \) による乗算は転置と交換可能です。
- 積の転置: \[ (AB)^{\mathrm{T}} = B^{\mathrm{T}} A^{\mathrm{T}} \] 行列の積の転置は、順序を逆にしてそれぞれ転置を取ったものになります。
これらの性質は線形代数における証明の際にも頻繁に用いられます。
応用と利用場面
転置行列は、以下のような多くの数学的・工学的分野で重要な役割を果たします。
- 内積の計算:ベクトル \( \mathbf{x} \) と \( \mathbf{y} \) の内積は、 \[ \mathbf{x}^{\mathrm{T}} \mathbf{y} \] のように転置を使って表現されます。
- 対称行列:転置しても変わらない行列(\( A = A^{\mathrm{T}} \))は対称行列と呼ばれ、 多くの理論や応用で特別な意味を持ちます。
- 最小二乗法:線形回帰などにおいて、正規方程式 \[ X^{\mathrm{T}}X\beta = X^{\mathrm{T}}y \] に転置行列が登場します。
- 機械学習:行列演算がベースのニューラルネットワーク等でも頻繁に転置が使われます。
このように、転置行列の概念は単なる形式的なものではなく、実用的な応用にも直結する重要な知識です。