ファンデルモンド行列式の正体とその完全証明【徹底解説】

ファンデルモンド行列式の正体とその完全証明【徹底解説】

ファンデルモンド行列式は、線形代数や多項式補間などの分野で頻出する基本かつ重要な概念です。本記事では、ファンデルモンド行列の定義から、その行列式の導出方法、証明、具体例、応用までを完全網羅で解説します。

目次

ファンデルモンド行列とは

ファンデルモンド行列(Vandermonde matrix)は、与えられた数列 \( x_1, x_2, \ldots, x_n \) に対して以下のように定義される \( n \times n \) 行列です。

一般形:

\[ V = \begin{bmatrix} 1 & x_1 & x_1^2 & \cdots & x_1^{n-1} \\ 1 & x_2 & x_2^2 & \cdots & x_2^{n-1} \\ \vdots & \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ 1 & x_n & x_n^2 & \cdots & x_n^{n-1} \end{bmatrix} \]

このように、各行はそれぞれの \( x_i \) を 0 乗から順にべき乗して並べたものです。

ファンデルモンド行列式の形

ファンデルモンド行列の行列式(Vandermonde determinant)は、以下のような非常に美しい形をしています。

\[ \det(V) = \prod_{1 \leq i < j \leq n} (x_j - x_i) \]

この式の右辺は、すべての \( x_j – x_i \)(ただし \( j > i \))の積です。つまり、成分間の差の積で表されるため、同じ値の \( x_i \) があると行列式が 0 になる、という性質を直感的に理解できます。

ファンデルモンド行列式の証明

以下では、ファンデルモンド行列式の証明をいくつかの方法で行います。

方法①:数学的帰納法による証明

ベースケース(\( n = 2 \))

\[ V = \begin{bmatrix} 1 & x_1 \\ 1 & x_2 \end{bmatrix}, \quad \det(V) = x_2 – x_1 \] これは、右辺の式と一致します。

帰納法の仮定:\( n = k \) のとき、

\[ \det(V_k) = \prod_{1 \leq i < j \leq k} (x_j - x_i) \]

帰納ステップ:\( n = k + 1 \) の場合、最上行のべき次数に着目して、行基本変形や余因子展開を用いて、1列目を引き算していくと、帰納法の仮定を使って同様の形に持ち込めます。詳細な導出は以下の代数的手法に移ります。

方法②:多項式の対称性と次数に注目する方法

行列式は \( x_1, \ldots, x_n \) の関数であり、交代性(変数を交換すると符号が反転)を持ち、次数は各 \( x_i \) に対して高々 \( n-1 \) です。

このような関数は、明示的に \[ \det(V) = c \cdot \prod_{1 \leq i < j \leq n} (x_j - x_i) \] の形で書けることが知られています。

ここで \( c \) は定数であり、例えばすべての \( x_i = i \) のときに行列式を計算すれば、\( c = 1 \) であることが確認できます。

具体例で理解する

\( n = 3 \) の場合

\[ V = \begin{bmatrix} 1 & x_1 & x_1^2 \\ 1 & x_2 & x_2^2 \\ 1 & x_3 & x_3^2 \end{bmatrix} \]

行列式を余因子展開で計算すると、

\[ \det(V) = (x_2 – x_1)(x_3 – x_1)(x_3 – x_2) \]

たとえば \( x_1 = 1, x_2 = 2, x_3 = 3 \) の場合、

\[ \det(V) = (2-1)(3-1)(3-2) = 1 \cdot 2 \cdot 1 = 2 \]

ファンデルモンド行列の応用

  • ラグランジュ補間:多項式補間法において、ファンデルモンド行列を使うことで係数を求めることができます。
  • 線形独立性の判定:異なる \( x_i \) を使う限り、行列の列ベクトルは線形独立であることが保証されます。
  • シンメトリック多項式との関連:行列式の交代性が対称式との関係で重要な役割を果たします。
  • 数値解析:多項式フィッティングの計算で用いられます。

まとめ

ファンデルモンド行列とその行列式は、数学のさまざまな分野で極めて基本的かつ強力なツールです。 その構造の美しさと、明快な行列式の形は、多項式、行列、代数的構造の深い結びつきを示しています。

この記事では定義、導出、証明、具体例、応用までを丁寧に解説しました。 この理解を通じて、数学的直感と論理力を深めることができるでしょう。

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