数ベクトルとは何か?ノルムや内積とは?

数ベクトルとは何か?ノルムや内積とは?

目次

数ベクトルとは?その定義と基本的な性質

数ベクトルとは、数(実数や複素数など)を成分として持つ、有限個の数の並びのことです。 通常、n 次元の数ベクトルとは、次のように表されます:

\[ \mathbf{v} = (v_1, v_2, \ldots, v_n) \]

各成分 \( v_1, v_2, \ldots, v_n \) は実数(または複素数)であり、\(\mathbf{v}\) は \(\mathbb{R}^n\)(または \(\mathbb{C}^n\))の要素です。

数ベクトルは、次のような操作が可能です:

  • 加法: \((a_1, a_2, \ldots, a_n) + (b_1, b_2, \ldots, b_n) = (a_1 + b_1, a_2 + b_2, \ldots, a_n + b_n)\)
  • スカラー倍: \(c \cdot (a_1, a_2, \ldots, a_n) = (c a_1, c a_2, \ldots, c a_n)\)

これらの演算は、ベクトル空間の基本操作です。

ノルム(長さ)とは?

数ベクトルのノルム(英: norm)は、その「大きさ」や「長さ」を表します。 通常はユークリッドノルム(2-ノルム)が使われます。次のように定義されます:

\[ \|\mathbf{v}\| = \sqrt{v_1^2 + v_2^2 + \cdots + v_n^2} \]

これは、ベクトルを原点からの距離として解釈できます。例えば、2次元空間で \(\mathbf{v} = (3, 4)\) の場合:

\[ \|\mathbf{v}\| = \sqrt{3^2 + 4^2} = \sqrt{9 + 16} = 5 \]

その他にも、\(p\)-ノルムと呼ばれる一般化されたノルムもあります:

\[ \|\mathbf{v}\|_p = \left( \sum_{i=1}^{n} |v_i|^p \right)^{1/p} \]

特に \(p = 1\) のときはマンハッタン距離とも呼ばれ、\(p \to \infty\) のときは最大成分の絶対値(\(\max |v_i|\))になります。

内積(ドット積)とは?

2つの数ベクトル \(\mathbf{a} = (a_1, \ldots, a_n)\), \(\mathbf{b} = (b_1, \ldots, b_n)\) の内積(英: inner product)は以下のように定義されます:

\[ \mathbf{a} \cdot \mathbf{b} = a_1 b_1 + a_2 b_2 + \cdots + a_n b_n = \sum_{i=1}^{n} a_i b_i \]

この内積には幾何学的な意味もあります。それは以下の式で表されます:

\[ \mathbf{a} \cdot \mathbf{b} = \|\mathbf{a}\| \|\mathbf{b}\| \cos \theta \]

ここで \(\theta\) は2つのベクトルのなす角です。内積が0のとき、2つのベクトルは直交(垂直)していることになります。

具体例で理解しよう

例1:ノルムの計算

ベクトル \(\mathbf{v} = (6, 8)\) のノルムを求めると:

\[ \|\mathbf{v}\| = \sqrt{6^2 + 8^2} = \sqrt{36 + 64} = \sqrt{100} = 10 \]

例2:内積の計算

ベクトル \(\mathbf{a} = (1, 2, 3)\), \(\mathbf{b} = (4, -5, 6)\) に対して:

\[ \mathbf{a} \cdot \mathbf{b} = 1 \cdot 4 + 2 \cdot (-5) + 3 \cdot 6 = 4 – 10 + 18 = 12 \]

例3:直交するベクトル

ベクトル \(\mathbf{a} = (1, 2)\), \(\mathbf{b} = (2, -1)\) の内積は:

\[ \mathbf{a} \cdot \mathbf{b} = 1 \cdot 2 + 2 \cdot (-1) = 2 – 2 = 0 \]

よって、これらのベクトルは直交しています。

数ベクトルの定義、ノルム、内積は、線形代数の基礎であり、物理学、機械学習、統計学など様々な分野で応用されています。

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