【数学で差をつける】最小多項式の定義と完全マスター法

【数学で差をつける】最小多項式の定義と完全マスター法

目次

最小多項式とは?

最小多項式(minimum polynomial)は、線形代数や代数学で用いられる重要な概念です。線形変換や行列に対して定義され、次のように定義されます。

行列 \( A \in \mathbb{F}^{n \times n} \) に対して、係数が体 \( \mathbb{F} \) に属する一変数多項式のうち、以下の条件を同時に満たすもののうち次数が最小のものを最小多項式と呼びます:

  • 多項式 \( m_A(x) \) は \( A \) に代入すると零行列になる(すなわち \( m_A(A) = 0 \))
  • 次数が最小で、首係数が1である(モニック多項式)

このとき、
\[ m_A(x) = \text{最小多項式} \] となります。

なぜ最小多項式が重要なのか?

最小多項式は次のような点で非常に重要です:

  • 行列や線形写像の構造(対角化可能性・ジョルダン標準形など)を調べる手がかりになる
  • 特性多項式と異なり、必要最小限の多項式情報で行列を「無力化」できる
  • ケイリー・ハミルトンの定理と密接に関係している

最小多項式の求め方(一般的な手順)

最小多項式を求めるには以下のステップが一般的です。

  1. 特性多項式を求め、固有値を特定する
  2. それぞれの固有値に対して、最小次数で \( A \) を零にする多項式を構成
  3. 全体の最小多項式は、それぞれの固有値に対応する多項式の最小公倍多項式

実際には、以下のような方法もあります:

  • ケイリー・ハミルトンの定理: 特性多項式 \( \chi_A(x) \) は常に \( A \) を零にする ⇒ 最小多項式は \( \chi_A(x) \) の約数
  • 冪(累乗)を順に計算して、線形関係が出たときに係数を使って最小多項式を作る

具体例で理解する最小多項式

例1:対角行列の場合

\[ A = \begin{pmatrix} 2 & 0 \\ 0 & 3 \end{pmatrix} \] の最小多項式は?

特性多項式: \( (x – 2)(x – 3) \)
\( A \) はすでに対角化されており、各固有値は重複なしなので、最小多項式も \[ m_A(x) = (x – 2)(x – 3) \]

例2:非対角化可能な行列

\[ A = \begin{pmatrix} 2 & 1 \\ 0 & 2 \end{pmatrix} \] の場合。

特性多項式: \( (x – 2)^2 \)
しかし、\( (A – 2I)^1 \neq 0 \), \( (A – 2I)^2 = 0 \)
よって、最小多項式: \[ m_A(x) = (x – 2)^2 \]

例3:3次元の行列

\[ A = \begin{pmatrix} 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 1 \\ 0 & 0 & 0 \end{pmatrix} \] はいわゆるナイーブなジョルダンブロック。

\( A^3 = 0 \) であり、\( A^2 \neq 0 \)
よって、 \[ m_A(x) = x^3 \]

特性多項式との違い

特性多項式(characteristic polynomial)と最小多項式は密接な関係がありますが、異なるものです。

  • 特性多項式は \( \det(xI – A) \) によって定義され、常に次数 \( n \) の多項式(\( n \) は行列のサイズ)
  • 最小多項式は、実際に \( A \) を消す最小の多項式で、特性多項式の約数
  • 両者が一致するとは限らない(特に対角化不可能な場合)

補足事項・注意点

  • 最小多項式は行列の「代数的構造」を理解するのに不可欠
  • 代数閉体(たとえば複素数体)で考えることで、より解析しやすくなる
  • 実際の応用では、最小多項式を用いた行列関数の計算や、行列の対角化可能性の検討に活用される

最小多項式をしっかり理解することは、線形代数を深く使いこなすための第一歩です。例を通して手を動かしながら学んでいくことをおすすめします。

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