メルセンヌ数と完全数の世界:定義・性質・例を徹底解説
メルセンヌ数とは
メルセンヌ数とは、正の整数 \( n \) に対して、次の形で表される数です:
\[ M_n = 2^n – 1 \]
この形式の数は、17世紀のフランスの修道士マラン・メルセンヌにちなんで名付けられました。
メルセンヌ数は、2進法で表すとすべて1の並びになります。例えば、\( n = 3 \) の場合、\( M_3 = 7 \) であり、2進法では 111 となります。
メルセンヌ素数の性質
メルセンヌ数が素数である場合、それをメルセンヌ素数と呼びます。すなわち、\( M_n = 2^n – 1 \) が素数であるとき、\( M_n \) はメルセンヌ素数です。
メルセンヌ素数の性質として、以下の定理が知られています:
定理: \( M_n = 2^n – 1 \) が素数であるならば、\( n \) も素数である。
証明: \( M_n = 2^n – 1 \) が素数であると仮定します。もし \( n \) が合成数であれば、\( n = ab \)(\( a, b \) は 2 以上の整数)と表せます。このとき、 \[ 2^n – 1 = 2^{ab} – 1 = (2^a – 1)(2^{a(b – 1)} + 2^{a(b – 2)} + \dots + 1) \] となり、\( M_n \) は合成数となってしまいます。これは仮定に反するため、\( n \) は素数でなければなりません。
完全数との関係
完全数とは、自分自身を除く正の約数の和が自分自身に等しい数のことです。例えば、6 の約数は 1, 2, 3, 6 であり、1 + 2 + 3 = 6 となるため、6 は完全数です。
メルセンヌ素数と完全数には深い関係があります。具体的には、次の定理が知られています:
定理: \( M_p = 2^p – 1 \) がメルセンヌ素数であるとき、次の式で表される数は完全数である: \[ N = 2^{p – 1} \times (2^p – 1) \]
証明: \( M_p = 2^p – 1 \) が素数であると仮定します。\( N = 2^{p – 1} \times M_p \) の約数の和を考えると、 \[ \sigma(N) = \sigma(2^{p – 1}) \times \sigma(M_p) = (2^p – 1) \times (1 + M_p) = (2^p – 1) \times (1 + 2^p – 1) = (2^p – 1) \times 2^p = 2N \] となり、約数の和が元の数の2倍であるため、\( N \) は完全数です。
具体例と応用
いくつかのメルセンヌ素数と、それに対応する完全数を示します:
- \( p = 2 \): \( M_2 = 3 \), 完全数 \( N = 2^{2 – 1} \times (2^2 – 1) = 2 \times 3 = 6 \)
- \( p = 3 \): \( M_3 = 7 \), 完全数 \( N = 2^{3 – 1} \times (2^3 – 1) = 4 \times 7 = 28 \)
- \( p = 5 \): \( M_5 = 31 \), 完全数 \( N = 2^{5 – 1} \times (2^5 – 1) = 16 \times 31 = 496 \)
- \( p = 7 \): \( M_7 = 127 \), 完全数 \( N = 2^{7 – 1} \times (2^7 – 1) = 64 \times 127 = 8128 \)
現在知られている最大のメルセンヌ素数は \( 2^{82589933} – 1 \) であり、これは2018年に発見されました。このような大きな素数の発見には、リュカ=レーマー判定法と呼ばれるアルゴリズムが用いられます。