【群論】ラグランジュの定理:定義・証明・応用例を徹底解説

【群論】ラグランジュの定理:定義・証明・応用例を徹底解説

ラグランジュの定理とは

ラグランジュの定理は、有限群とその部分群の位数に関する基本的な定理です。具体的には、有限群 \( G \) の任意の部分群 \( H \) に対して、次の関係が成り立ちます。

ラグランジュの定理: 有限群 \( G \) の部分群 \( H \) に対して、以下が成り立つ。

  • \( |G| = (G:H) \cdot |H| \)
  • 特に、部分群 \( H \) の位数 \( |H| \) は \( G \) の位数 \( |G| \) の約数である。
  • また、任意の元 \( g \in G \) の位数は \( |G| \) の約数である。

ここで、\( |G| \) は群 \( G \) の位数(要素の個数)、\( (G:H) \) は部分群 \( H \) の指数(左剰余類の個数)を表します。

ラグランジュの定理の証明

ラグランジュの定理の証明には、左剰余類とその性質を利用します。

左剰余類と指数

群 \( G \) の部分群 \( H \) に対して、任意の \( g \in G \) に対し、左剰余類 \( gH = \{ gh \mid h \in H \} \) を定義します。

左剰余類は以下の性質を持ちます。

  • 任意の \( g \in G \) に対して、\( |gH| = |H| \)
  • 任意の \( g_1, g_2 \in G \) に対して、\( g_1H = g_2H \) または \( g_1H \cap g_2H = \emptyset \)

左剰余類全体の集合 \( G/H = \{ gH \mid g \in G \} \) の要素数を部分群 \( H \) の指数 \( (G:H) \) と呼びます。

定理の証明

群 \( G \) は左剰余類の disjoint な和として表されます。各左剰余類の要素数は \( |H| \) であり、左剰余類の個数は \( (G:H) \) です。したがって、

\[ |G| = (G:H) \cdot |H| \]

これにより、\( |H| \) は \( |G| \) の約数であることが示されます。また、任意の元 \( g \in G \) に対して、\( g \) が生成する部分群 \( \langle g \rangle \) の位数は \( g \) の位数であり、これは \( |G| \) の約数となります。

ラグランジュの定理の応用例

例1:位数15の群の部分群

位数15の群 \( G \) は、位数4の部分群を持つことはできません。なぜなら、4は15の約数ではないからです。

例2:素数位数の群は巡回群

位数が素数 \( p \) の群 \( G \) は、任意の \( g \in G \)(ただし \( g \neq e \))に対して、\( \langle g \rangle = G \) となります。したがって、\( G \) は巡回群です。

例3:フェルマーの小定理の証明

フェルマーの小定理は、ラグランジュの定理を用いて証明できます。具体的には、素数 \( p \) に対して、任意の整数 \( a \)(ただし \( p \nmid a \))に対して、\( a^{p-1} \equiv 1 \mod p \) が成り立ちます。

コメントは受け付けていません。