初心者必見!行ベクトルと列ベクトルの違いを徹底解説

初心者必見!行ベクトルと列ベクトルの違いを徹底解説

ベクトルという言葉を耳にしたとき、あなたはどのようなものを思い浮かべますか? 多くの人は、数学や物理で登場する「向きと大きさを持つ矢印のようなもの」を思い浮かべるかもしれません。しかし、線形代数においては、ベクトルには「行ベクトル」と「列ベクトル」が存在し、その違いが非常に重要になります。

このページでは、行ベクトルと列ベクトルの違いを一から丁寧に解説します。初心者の方でも理解できるよう、具体例や数式を豊富に交えて説明していきます。

目次

行ベクトルと列ベクトルとは?

ベクトルとは、複数の数値をひとまとまりにして扱うための数学的な道具です。特に線形代数では、ベクトルは行(横方向)または列(縦方向)に並んだ数値の集合として定義されます。

  • 行ベクトル:横一列に並んだ数値の集まり
  • 列ベクトル:縦一列に並んだ数値の集まり

例えば、以下のようなものがそれぞれのベクトルの例です。

  • 行ベクトル:\\( \begin{bmatrix} 2 & 5 & 7 \end{bmatrix} \\)
  • 列ベクトル:\\( \begin{bmatrix} 2 \\\\ 5 \\\\ 7 \end{bmatrix} \\)

記法と構造の違い

行ベクトルと列ベクトルの違いは、見た目だけでなく、数学的な性質にも影響を与えます。

  • 行ベクトルは \(1 \times n\) 行列とみなされます。
  • 列ベクトルは \(n \times 1\) 行列とみなされます。

例えば、3要素の行ベクトルと列ベクトルは次のように表されます。

行ベクトル:

\\( \boldsymbol{a} = \begin{bmatrix} a_1 & a_2 & a_3 \end{bmatrix} \\)

列ベクトル:

\\( \boldsymbol{b} = \begin{bmatrix} b_1 \\\\ b_2 \\\\ b_3 \end{bmatrix} \\)

この違いにより、行列との演算の方法が異なります。

演算における違い

行ベクトルと列ベクトルは、加算、内積、行列との積などで異なる振る舞いをします。

ベクトル同士の加算

同じ形状のベクトル同士ならば、成分ごとの加算が可能です。

例:

\\( \begin{bmatrix} 1 & 2 & 3 \end{bmatrix} + \begin{bmatrix} 4 & 5 & 6 \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} 5 & 7 & 9 \end{bmatrix} \\)

ただし、行ベクトルと列ベクトルは直接加算できません。

内積(ドット積)

内積を計算するには、片方を行ベクトル、もう片方を列ベクトルにする必要があります。

\\( \begin{bmatrix} 1 & 2 & 3 \end{bmatrix} \cdot \begin{bmatrix} 4 \\\\ 5 \\\\ 6 \end{bmatrix} = 1 \times 4 + 2 \times 5 + 3 \times 6 = 32 \\)

行列との積

行列とベクトルを掛ける場合、その形状に注意が必要です。

例:2行3列の行列 \\( A \\) と3要素の列ベクトル \\( \boldsymbol{x} \\)

\\[ A = \begin{bmatrix} 1 & 0 & 2 \\\\ -1 & 3 & 1 \end{bmatrix}, \quad \boldsymbol{x} = \begin{bmatrix} 2 \\\\ 1 \\\\ 4 \end{bmatrix} \\]

\\( A \boldsymbol{x} = \begin{bmatrix} 1 \cdot 2 + 0 \cdot 1 + 2 \cdot 4 \\\\ -1 \cdot 2 + 3 \cdot 1 + 1 \cdot 4 \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} 10 \\\\ 5 \end{bmatrix} \\)

転置との関係

転置とは、行と列を入れ替える操作です。行ベクトルを転置すれば列ベクトルになり、その逆も同様です。

\\( \boldsymbol{a} = \begin{bmatrix} 3 & 6 \end{bmatrix} \\) を転置すると:

\\( \boldsymbol{a}^\top = \begin{bmatrix} 3 \\\\ 6 \end{bmatrix} \\)

これは数式処理だけでなく、ベクトル同士の積や行列との積でも多用される操作です。

実際の活用例

行ベクトルと列ベクトルは、様々な分野で活用されています。

1. 機械学習

入力データを列ベクトルとして扱い、重み行列との積により予測値を出すケースが多くあります。

2. コンピュータグラフィックス

3D座標を列ベクトルとして扱い、回転や拡大縮小の行列を掛けることで位置変換を行います。

3. 経済学・統計学

回帰分析では、説明変数を行ベクトル、係数を列ベクトルとして、予測値を内積で計算します。

例:

\\[ \text{予測値} = \begin{bmatrix} x_1 & x_2 & x_3 \end{bmatrix} \cdot \begin{bmatrix} \beta_1 \\\\ \beta_2 \\\\ \beta_3 \end{bmatrix} \\]

このように、ベクトルの向きを正しく理解しておくことは、あらゆる応用において不可欠です。

まとめ

  • 行ベクトルは横向き、列ベクトルは縦向き。
  • 形状によって演算結果が異なる。
  • 転置によって相互に変換できる。
  • 実用上は、どちらの形式で表すかを常に意識する必要がある。

線形代数の基礎を理解する第一歩として、行ベクトルと列ベクトルの違いはとても重要です。今後、行列や多変量データを扱う際にも、この知識が大いに役立つでしょう。

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