経済学で学ぶ「粗補完財」と「粗代替財」:違いと使い分けを徹底解説!

経済学で学ぶ「粗補完財」と「粗代替財」:違いと使い分けを徹底解説!

目次

粗補完財と粗代替財とは?

経済学では、ある財の価格が変化したときに、他の財の需要がどう変化するかによって財同士の関係性を分類します。 その中でも重要な分類が「補完財」と「代替財」です。ただし、実際の理論分析では「粗補完財(gross complements)」や「粗代替財(gross substitutes)」という概念がよく使われます。

ある財 \( x_1 \) の価格 \( p_1 \) が変化したとき、別の財 \( x_2 \) の需要がどう変化するかを考えます。

  • 粗補完財:\(\frac{\partial x_2}{\partial p_1} < 0\) → 財1の価格が上がると、財2の需要も減る。
  • 粗代替財:\(\frac{\partial x_2}{\partial p_1} > 0\) → 財1の価格が上がると、財2の需要は増える。

これは「価格変化に対する他財の需要の変化」に着目した分類であり、需要関数全体の構造を通じて判断します。

なぜ「粗」なのか?:補完財・代替財との違い

経済学には「純補完財(net complements)」や「純代替財(net substitutes)」という用語もあります。 これらは、所得効果を除いた純粋な価格効果、すなわち「スルツキー分解」で得られる代替効果のみを見て分類します。

たとえば、スルツキー方程式により、次のように需要の変化を分解できます: \[ \frac{\partial x_2}{\partial p_1} = \frac{\partial h_2}{\partial p_1} – \frac{\partial x_2}{\partial I} \cdot x_1 \] ここで、

  • \( h_2 \):補償需要関数(一定効用を維持する消費量)
  • \( x_2 \):通常の需要関数
  • \( I \):所得

粗補完財・粗代替財はこの分解を考慮せず、全体としての需要の変化だけを見るため、より直感的に把握できる一方で、所得効果が混ざるため注意が必要です。

例題で学ぶ粗補完財と粗代替財

例題1:二財モデルにおける粗代替性の判定

財1と財2の需要関数が次のように与えられているとします: \[ x_1(p_1, p_2, I) = \frac{I}{2p_1}, \quad x_2(p_1, p_2, I) = \frac{I}{2p_2} \] ここで、所得 \( I \) が一定とすると、\(\frac{\partial x_2}{\partial p_1} = 0\) なので、 財1と財2は互いに無関係です。

例題2:レオンチェフ型効用関数

\[ u(x_1, x_2) = \min\{x_1, x_2\} \] のとき、最適消費は \( x_1 = x_2 \) となるため、どちらかの価格が上がると両方の需要が減ります。 よって、財1と財2は粗補完財です。

例題3:完全代替財

\[ u(x_1, x_2) = x_1 + x_2 \] の場合、最も安い方の財を選んでそれだけを消費するため、価格の変化によって一方の需要が増え、他方がゼロになることがあります。 このとき財1と財2は粗代替財となります。

応用問題:消費者行動における粗補完性と粗代替性

応用1:交通手段の選択

Aさんは「電車」と「バス」を使って通勤しています。電車の運賃が上がったとき、Aさんがバスの利用を増やすなら、両者は粗代替財です。 一方、電車の値上げで全体の交通費が増えて外出を控えるようになり、バス利用も減った場合は粗補完財になります。

応用2:ゲーム機とソフト

ゲーム機本体(財1)とソフト(財2)の関係を考えます。ゲーム機の価格が上がるとソフトの需要も減るので、両者は粗補完財です。

応用3:コーヒーと紅茶

一般的に、どちらかの価格が上がるともう一方に乗り換えることが多いため、コーヒーと紅茶は粗代替財とみなせます。

まとめと学習のポイント

  • 「粗補完財」「粗代替財」は需要の価格変化に対する反応によって分類される。
  • 所得効果を含むため、スルツキー分解に基づく「純補完財」「純代替財」と区別される。
  • 例題や日常生活の例から直感的に理解を深めることが重要。
  • 大学レベルではスルツキー方程式や補償需要関数にも注目しよう。
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