代替効果をスルツキー分解とヒックス分解で徹底理解!高校生にもわかる経済学の応用例

代替効果をスルツキー分解とヒックス分解で徹底理解!高校生にもわかる経済学の応用例

目次

代替効果とは?

代替効果とは、ある財の価格が変化したときに、相対的な価格の変化に応じて消費者の選択が変わる現象のことです。たとえば、おにぎりとパンの2つの財を考えてみましょう。

もしおにぎりの価格が安くなったら、パンよりおにぎりの方がお得に感じられるため、多くの人がパンからおにぎりに乗り換えるかもしれません。この「乗り換え」の部分が代替効果です。

スルツキー分解とは

スルツキー分解(Slutsky decomposition)は、価格変化が消費行動に与える影響を「代替効果」と「所得効果」に分けて分析する方法です。

価格が下がったとき、本来は消費者の購買力(実質所得)が増えるので、より多くの財を買うようになります。これが所得効果です。一方、価格が相対的に変化することによる効果が代替効果です。

スルツキー分解では、次のような式が基本です:

\[ \frac{\partial x_i}{\partial p_j} = \left. \frac{\partial x_i}{\partial p_j} \right|_{u=\text{一定}} – x_j \frac{\partial x_i}{\partial I} \]

ここで、\(x_i\)は財\(i\)の消費量、\(p_j\)は財\(j\)の価格、\(I\)は所得です。左辺は総効果、右辺の1項目は代替効果(効用一定下)、2項目は所得効果です。

ヒックス分解とは

ヒックス分解(Hicksian decomposition)は、効用を一定に保つことを重視するアプローチです。消費者が同じ満足度を維持できるように調整された予算線に基づいて、代替効果と所得効果を分けます。

つまり、価格変化後も「元の効用水準」を保ったままの消費選択を考えるため、より理論的に純粋な代替効果を捉えることができます。

数式では以下のように表現されます:

\[ \Delta x = x(p’, u) – x(p, u) + x(p, u) – x(p, I) \]

このうち、\(x(p’, u) – x(p, u)\)がヒックス的代替効果、\(x(p, u) – x(p, I)\)が所得効果です(\(p’\)は新価格、\(p\)は旧価格)。

スルツキーとヒックスの違い

両者の違いを簡単にまとめると以下のようになります:

  • スルツキー分解:実質所得(購買力)を一定に保つ
  • ヒックス分解:効用(満足度)を一定に保つ

スルツキーの方が現実的(家計的)な視点であり、ヒックスは理論的で効用を分析する際に便利です。

例題と応用

それでは、具体的な数値を使って例題を考えてみましょう。

例題:

財Aと財Bの2財モデル。初期の価格は財Aが100円、財Bが200円。所得は1,000円。効用関数は \[ U(x_A, x_B) = x_A \cdot x_B \] 価格が変わって、財Aが80円になったとき、消費者の選択はどう変わるか?

ステップ1:最適消費点の導出(価格変化前)

予算制約式: \[ 100x_A + 200x_B = 1000 \] 効用最大化のためにラグランジュ法を使うと、 \[ \frac{x_B}{x_A} = \frac{100}{200} = \frac{1}{2} \Rightarrow x_B = \frac{1}{2}x_A \] 代入して解くと、 \[ 100x_A + 200\left(\frac{1}{2}x_A\right) = 1000 \Rightarrow 200x_A = 1000 \Rightarrow x_A = 5, \quad x_B = 2.5 \]

ステップ2:価格変化後の新しい最適点

新しい予算制約式: \[ 80x_A + 200x_B = 1000 \] 同様に \[ x_B = \frac{1}{2}x_A \Rightarrow 80x_A + 200\left(\frac{1}{2}x_A\right) = 1000 \Rightarrow 180x_A = 1000 \Rightarrow x_A \approx 5.56, \quad x_B \approx 2.78 \]

ステップ3:代替効果と所得効果の分離(スルツキー分解)

効用を一定に保つための補償所得を求め、それに基づく消費点を計算します。 \[ U = 5 \cdot 2.5 = 12.5 \] 新価格下で \(x_A \cdot x_B = 12.5\) を満たす点で予算制約が成り立つように調整された消費点を求めます。 最終的な分解結果として、代替効果によって \(x_A\) が5から5.3に増え、所得効果によってさらに5.3から5.56に増加したとします。これで、代替効果と所得効果を分離して理解できます。

まとめ

代替効果は経済学の中心概念の1つであり、スルツキー分解やヒックス分解を使えば、価格変化が消費行動にどのように影響するのかを理論的に分けて理解できます。

スルツキー分解は購買力を固定して分析する方法で、現実的なアプローチです。一方、ヒックス分解は効用を固定して、理論的に純粋な代替効果を捉えることができます。

高校生でも数学的な考え方とともに、代替効果を定量的に理解できるようになれば、大学レベルの経済学にもスムーズに進むことができるでしょう。

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