ピグー型社会的厚生関数を完全解説!応用までわかる経済学の考え方
この記事では、高校生にもわかるように、経済学で重要な「ピグー型社会的厚生関数」について基礎から応用まで徹底解説します。数式も登場しますが、できるだけ直感的に理解できるように工夫しています。
目次
ピグー型社会的厚生関数とは?
ピグー型社会的厚生関数(Pigovian Social Welfare Function)は、社会全体の幸福(厚生)を測るための関数です。経済学では、「どうやって社会全体がどれくらい幸せかを測るか?」という問題に答えるために使われます。
この関数は、個々の人の効用(満足度)を足し合わせることで、社会全体の厚生を定義します。つまり、みんながどれだけ満足しているかを合計して、その合計が大きいほど良い社会と考えるのです。
なぜピグー型厚生関数が重要なのか?
社会全体の幸福を考えるとき、誰か1人だけがすごく幸せでも、他の人が不幸であれば、それは「良い社会」とは言えません。ピグー型厚生関数は、すべての個人の効用を対等に扱うため、公平な視点を提供します。
特に、所得格差の問題や税制、公共サービスの提供など、現実の政策に応用する際に重要です。
数式でみるピグー型厚生関数
ピグー型の社会的厚生関数は、以下のように表されます:
\[ W = U_1 + U_2 + \cdots + U_n = \sum_{i=1}^{n} U_i \]ここで、
- \( W \):社会的厚生(社会全体の幸福)
- \( U_i \):個人 \(i\) の効用(満足度)
- \( n \):社会にいる人数
つまり、社会全体の厚生は、すべての個人の効用の合計として定義されます。
具体例:所得の分配と厚生
例えば、2人の個人 AさんとBさんがいて、それぞれの効用関数が次のように定義されていたとします:
\[ U_i = \sqrt{y_i} \]ここで、\( y_i \) は個人 \(i\) の所得です。このとき、総所得が100であれば、次のように分配したときの厚生を比較してみましょう。
パターン1:Aさんに50、Bさんに50
\[ U_A = \sqrt{50} \approx 7.07,\quad U_B = \sqrt{50} \approx 7.07 \] \[ W = U_A + U_B \approx 14.14 \]パターン2:Aさんに80、Bさんに20
\[ U_A = \sqrt{80} \approx 8.94,\quad U_B = \sqrt{20} \approx 4.47 \] \[ W = U_A + U_B \approx 13.41 \]このように、同じ総所得でも平等に分けたほうが社会的厚生が高くなる場合があります。これは「限界効用逓減(けんげんこうようていげん)」と呼ばれる性質によります。
応用:公共政策にどう使われる?
ピグー型社会的厚生関数は、政府がどのように税金を集めて分配すべきかを考えるときの基礎になります。以下のような場面で活用されます。
- 所得税の設計: 高所得者に多く課税し、低所得者に再分配することで社会全体の厚生を最大化できます。
- 教育・医療への投資: 社会全体の効用を高めるため、公共サービスの提供に力を入れる根拠になります。
- 最低所得保障: すべての人が最低限の生活を送れるようにすることで、社会的厚生が上がると考えられます。
ただし、ピグー型の考え方には、「誰の効用も等しく加える」ことが前提なので、「本当にそれで公平か?」という議論もあります。より現実に近い分析では、異なる個人に異なる重みをつける厚生関数(加重型)も使われます。
まとめ
ピグー型社会的厚生関数は、経済学において「社会全体の幸福」を測るためのシンプルかつ強力なツールです。個々人の満足度を合計することで社会全体の厚生を定義するため、所得分配や公共政策の評価において非常に役立ちます。
高校生にとっても、「限界効用」や「平等」の考え方を直感的に理解するための出発点として最適です。数学や倫理、政治といった他の分野とも深く関わっているテーマなので、ぜひこの機会に理解を深めてみてください。