高校生でもわかる!サミュエルソンの社会的厚生関数とその応用

高校生でもわかる!サミュエルソンの社会的厚生関数とその応用

目次

社会的厚生関数とは?

社会的厚生関数(Social Welfare Function)とは、複数の人々の「幸福(効用)」をまとめて、社会全体の「厚生(ウェルフェア)」を数式で表す道具です。

たとえば、2人の個人AとBがいて、それぞれの効用を \( U_A \) と \( U_B \) としましょう。このとき、社会全体の厚生を表す関数 \( W \) は次のように書けます。

\[ W = f(U_A, U_B) \]

この関数がどのような形をしているかによって、「社会にとって公平とは何か」「誰を優先するのか」といった価値観が現れます。

サミュエルソンの考え方

ポール・サミュエルソンは、社会的厚生関数の理論を発展させた経済学者です。彼の考え方では、厚生関数を用いて「効率性」と「公平性」を同時に考えることができます。

特に有名なのが「パレート最適」と「無差別曲線」を使った分析です。サミュエルソンは、効用が一定の水準にある点の集合(無差別曲線)を用いて、次のような社会的厚生関数を想定しました:

\[ W = U_A + U_B \]

これは「功利主義的厚生関数」と呼ばれ、社会全体の幸福の合計を最大化しようという考え方です。

一方で、次のような最小値をとる関数もあります:

\[ W = \min(U_A, U_B) \]

これは「ロールズ的厚生関数」と呼ばれ、「最も不幸な人をできるだけ救おう」という価値観を表します。

例題で理解しよう

では、実際に例題で考えてみましょう。

例題:個人AとBの効用が以下のように与えられています。

  • 選択肢1:\( U_A = 5, U_B = 5 \)
  • 選択肢2:\( U_A = 8, U_B = 2 \)
  • 選択肢3:\( U_A = 4, U_B = 7 \)

それぞれの場合について、以下の厚生関数を使って社会的厚生を計算しましょう:

(1) 功利主義的厚生関数: \( W = U_A + U_B \)

  • 選択肢1:\( W = 5 + 5 = 10 \)
  • 選択肢2:\( W = 8 + 2 = 10 \)
  • 選択肢3:\( W = 4 + 7 = 11 \)

→ 最も厚生が高いのは選択肢3です。

(2) ロールズ的厚生関数: \( W = \min(U_A, U_B) \)

  • 選択肢1:\( W = \min(5, 5) = 5 \)
  • 選択肢2:\( W = \min(8, 2) = 2 \)
  • 選択肢3:\( W = \min(4, 7) = 4 \)

→ 最も厚生が高いのは選択肢1です。

このように、どの厚生関数を使うかによって「どの選択肢が社会的に良いか」が変わります。

応用:経済政策にどう役立つ?

社会的厚生関数は、現実の経済政策の判断にも使われます。たとえば、以下のような場面で利用されます:

  • 税制設計: 高所得者から低所得者への再分配は厚生を高めるのか?
  • 公共財の供給: 公共サービス(教育・医療など)をどこまで提供すべきか?
  • 環境政策: 将来世代の効用も厚生関数に入れるべきか?

たとえば、ある政策によって一部の人の効用が下がるが、他の多くの人の効用が大きく上がる場合、功利主義的厚生関数では「良い政策」となります。しかし、ロールズ的厚生関数では「最も効用が低い人がさらに悪化するなら反対」となります。

このように、厚生関数の考え方は、価値判断を数式で表現し、政策判断の理論的基盤を与えてくれるのです。

まとめ

  • 社会的厚生関数は、個人の幸福を集約して社会全体の厚生を数式で表す道具です。
  • サミュエルソンはこの考え方を使って、効率性と公平性を同時に分析しました。
  • 厚生関数にはいろいろな形があり、どれを使うかによって政策判断が変わります。
  • 経済政策を考える上で、厚生関数の考え方はとても重要です。

社会の「幸せ」とは何か。数式を通してそれを考えることができるのが、経済学の面白さでもあります。

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