ミンコフスキーの不等式とは?高校生向けにわかりやすく例題と応用を徹底解説

ミンコフスキーの不等式とは?高校生向けにわかりやすく例題と応用を徹底解説


ミンコフスキーの不等式とは?基本の理解

ミンコフスキーの不等式は、数学の解析学やベクトル空間論で非常に重要な役割を果たす不等式です。特にベクトルの長さや距離の評価に用いられ、三角不等式を一般化したものとして知られています。

具体的には、実数 $p \geq 1$ に対して、任意のベクトル xy に対し、以下の不等式が成り立ちます。

$$\left( \sum_{i=1}^n |x_i + y_i|^p \right)^{\frac{1}{p}} \leq \left( \sum_{i=1}^n |x_i|^p \right)^{\frac{1}{p}} + \left( \sum_{i=1}^n |y_i|^p \right)^{\frac{1}{p}}$$

この不等式は、$L^p$ノルムの三角不等式とも呼ばれ、$p=2$のときはユークリッド距離の三角不等式になります。

ミンコフスキーの不等式の証明のポイント

証明はホルダーの不等式を利用します。ホルダーの不等式は以下のように書かれます。

$$\sum_{i=1}^n |a_i b_i| \leq \left( \sum_{i=1}^n |a_i|^p \right)^{\frac{1}{p}} \left( \sum_{i=1}^n |b_i|^q \right)^{\frac{1}{q}}$$

ここで、$p$ と $q$ は共役指数と呼ばれ、$\frac{1}{p} + \frac{1}{q} = 1$ を満たします。

ミンコフスキーの不等式の証明は、ホルダーの不等式を上手く使って式を展開し、ベクトルの和のノルムをそれぞれのノルムの和として抑える形で示します。

基本の例題:ベクトルの長さに関する不等式

具体例として、$p=2$ の場合を考えましょう。これはユークリッド空間での三角不等式と同じです。

ベクトル $$ \mathbf{x} = (3, 4), \quad \mathbf{y} = (1, 2) $$ のとき、ミンコフスキーの不等式は以下のようになります。

$$ \|\mathbf{x} + \mathbf{y}\|_2 = \sqrt{(3+1)^2 + (4+2)^2} = \sqrt{4^2 + 6^2} = \sqrt{16 + 36} = \sqrt{52} \approx 7.211 $$

$$ \|\mathbf{x}\|_2 + \|\mathbf{y}\|_2 = \sqrt{3^2 + 4^2} + \sqrt{1^2 + 2^2} = 5 + \sqrt{5} \approx 5 + 2.236 = 7.236 $$

よって、 $$ \|\mathbf{x} + \mathbf{y}\|_2 \leq \|\mathbf{x}\|_2 + \|\mathbf{y}\|_2 $$ が成り立っていることが確認できます。

このようにベクトルの長さ(ノルム)に関して「和の長さはそれぞれの長さの和以下」という性質が成り立つことを示すのがミンコフスキーの不等式です。

応用例題:多次元空間での不等式の活用

次に、$p=1$ の場合(マンハッタン距離)でミンコフスキーの不等式を使う例を見てみましょう。

ベクトル $$ \mathbf{x} = (2, -1, 3), \quad \mathbf{y} = (-1, 4, 2) $$ に対して、$p=1$ では次のようになります。

$$ \|\mathbf{x} + \mathbf{y}\|_1 = |2 + (-1)| + |-1 + 4| + |3 + 2| = |1| + |3| + |5| = 9 $$

$$ \|\mathbf{x}\|_1 + \|\mathbf{y}\|_1 = (|2| + |-1| + |3|) + (|-1| + |4| + |2|) = (2 + 1 + 3) + (1 + 4 + 2) = 6 + 7 = 13 $$

したがって、 $$ \|\mathbf{x} + \mathbf{y}\|_1 \leq \|\mathbf{x}\|_1 + \|\mathbf{y}\|_1 $$ も成り立ちます。

この不等式はデータ解析や機械学習、最適化問題の評価関数などで幅広く使われています。

まとめとよくある質問

  • ミンコフスキーの不等式は、$L^p$ノルムの三角不等式であり、ベクトルの和のノルムが個々のノルムの和を超えないことを示す。
  • 証明はホルダーの不等式を用いて行う。
  • 応用として、$p=1$ や $p=2$ の場合があり、それぞれマンハッタン距離やユークリッド距離に対応。
  • 高校数学でも理解可能で、三角不等式の考え方を発展させたもの。

よくある質問

Q1: ミンコフスキーの不等式は何に使われますか?
A1: ベクトルの距離や長さを比較する際の基本的不等式で、数学だけでなく物理や情報科学、統計学など幅広く使われます。
Q2: $p$の値はどんな意味がありますか?
A2: $p$は距離の種類を示します。例えば、$p=1$はマンハッタン距離、$p=2$はユークリッド距離です。
Q3: どんなときにホルダーの不等式を使うの?
A3: ミンコフスキーの不等式の証明時に、和のべき乗の評価に使われます。
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