有理数解の見つけ方を徹底解説|高校数学の例題でマスター
高校数学において、「方程式の有理数解」を見つける力は、数Ⅱや数学B以降の学習においても非常に役立ちます。特に因数分解や解の公式では対応できない場合、「有理数解の定理」を使って手がかりを得ることができます。
目次
有理数解とは?
まず、「有理数」とは分数で表せる数、つまり \( \frac{p}{q} \)(ただし \( p, q \) は整数、\( q \neq 0 \))の形で書ける数です。
「有理数解」とは、方程式の解のうち有理数で表されるものを指します。
有理数解の定理
次数が高い多項式方程式の解をすべて見つけるのは難しいですが、有理数解の定理(Rational Root Theorem)を使うと、候補を絞って試すことができます。
定理の内容:
次の形の多項式を考えます:
\[ f(x) = a_n x^n + a_{n-1} x^{n-1} + \dots + a_1 x + a_0 \]
このとき、\( f(x) = 0 \) の有理数解が存在するならば、それは
\[ x = \frac{p}{q} \]
という形であり、以下の条件を満たします:
- 分子 \( p \) は定数項 \( a_0 \) の約数
- 分母 \( q \) は最高次の係数 \( a_n \) の約数
これにより、試すべき有理数の候補が有限個に絞られます。
因数定理とその関係
因数定理とは、次のような定理です:
\[ f(r) = 0 \quad \Leftrightarrow \quad (x – r) \text{ は } f(x) \text{ の因数} \]
つまり、ある数 \( r \) を代入して \( f(r) = 0 \) になるならば、\( f(x) \) は \( (x – r) \) で割り切れるということです。
したがって、有理数解の定理で得た候補を代入し、\( f(r) = 0 \) になるかを調べれば、実際に因数であるかどうか確認できます。
例題1:簡単な3次方程式
次の方程式を解いてみましょう:
\[ x^3 – 4x^2 + x + 6 = 0 \]
まず定数項は 6、最高次の係数は 1 なので、有理数解の候補は ±1, ±2, ±3, ±6 です。
順に代入してみましょう:
- \( f(1) = 1 – 4 + 1 + 6 = 4 \) → ×
- \( f(2) = 8 – 16 + 2 + 6 = 0 \) → ◯
よって、\( x = 2 \) は解です。
次に、割り算で因数分解します:
\[ x^3 – 4x^2 + x + 6 = (x – 2)(x^2 – 2x – 3) \]
後半の2次式も因数分解できます:
\[ x^2 – 2x – 3 = (x – 3)(x + 1) \]
したがって、解は
\[ x = -1, 2, 3 \]
例題2:有理数解を試して絞り込む
\[ 2x^3 + 3x^2 – 2x – 3 = 0 \]
定数項:-3、最高次の係数:2
分子候補:±1, ±3 分母候補:±1, ±2
したがって、有理数解の候補は:
\[ \pm1, \pm3, \pm\frac{1}{2}, \pm\frac{3}{2} \]
順に代入して調べます:
- \( f(1) = 2 + 3 – 2 – 3 = 0 \) → ◯
因数定理より、\( (x – 1) \) は因数:
\[ 2x^3 + 3x^2 – 2x – 3 = (x – 1)(2x^2 + 5x + 3) \]
さらに因数分解:
\[ 2x^2 + 5x + 3 = (2x + 3)(x + 1) \]
よって、解は
\[ x = -1, -\frac{3}{2}, 1 \]
例題3:有理数解が存在しないケース
\[ x^2 – 2 = 0 \]
この方程式の解は:
\[ x = \pm\sqrt{2} \]
これは無理数であり、有理数解は存在しません。有理数解の定理で候補を挙げても、すべて代入しても 0 にならない場合、無理数または虚数の解しかないことが分かります。
まとめ
- 有理数解の定理は、候補を絞るための強力な道具です。
- 候補を代入して因数定理を使えば、多項式の因数分解にもつながります。
- すべての方程式に有理数解があるとは限りません。候補を試して解がなければ無理数の可能性も。
高校数学では、機械的に公式を使うだけでなく、こうした定理を使って解を見つける力をつけることが重要です。